体の自由と声を失っても「生きればいいじゃん」 ALS患者の「ニャンちゅう」声優・津久井教生さん 視線でパソコン操作し書き上げた闘病記 妻の言葉に背中押され
▽突然の転倒 2019年3月、津久井さんは、突然道端で大きく転倒した。それまで舞台を走り回るなど元気に活躍していたのに、少しずつ歩きにくくなっていく。声優を育成する学校で講師もしていたが、生徒から心配されるように。 さまざまな検査を経て、半年後の9月下旬にALSと告知される。医師からは「現在において確たる治療法がありません。進行を遅らせると言われている薬が、わずかに認定されているだけです。ALSとはそういう難病です」と言われ、「ある程度覚悟していたとはいえショックでした。いえ、大ショックでした」と振り返る。 10月にALSに罹患したことをブログで公表。車いすでレギュラー番組の収録や、講師の仕事を続けた。 検査で発見された肝臓と膵臓の間にある腫瘍摘出手術を受けたが、手術後もリハビリに励み、「ニャンちゅう」の声を出し続けることができた。 しかし、病気の進行は速く、脚だけでなく、腕も動かなくなっていった。11月にはピアノが弾けなくなり、2020年1月には要介護1に。指が動かなくなった2021年1月には「秘技」と呼ぶ、割り箸をくわえてのキーボード入力を始めた。8月には重度訪問介護が始まり「身支度・移乗介助・食事・入浴・排泄介助・自主リハビリ介助・外出同行・夜間見守り」まで、24時間体制で介助を受けることになった。
2022年4月には、「ニャンちゅう」誕生30周年を迎えた。だが、6月には要介護5になった。11月には、ニャンちゅうの声を羽多野渉さんにバトンタッチすると公表した。 ▽生きればいいじゃん ALSは病気の進行に伴い、呼吸機能や嚥下(えんげ)機能が低下する。生きるためには気管切開をして人工呼吸器を装着する必要があるが、それを選ばない患者もいるという。津久井さんも「気管切開はしない」つもりだった。気管切開をしたら、動けない体で最大の楽しみである「しゃべること」ができなくなってしまう。 2022年12月5日、呼吸困難で意識を失った。「妻をはじめとして、ずっと呼びかけてくれていたのに反応して、戻ってきたことに、何か意味があるんじゃないかと思いました」 その時、妻から「生きればいいじゃん」と言われ、気管切開の手術を受けることを決心した。決断を伝えたすぐ後に、また呼吸困難に。「あの短い時間で決めていなければ本当に旅立っていたかもしれなかった」。その後、栄養摂取のための胃ろうも造設した。