体の自由と声を失っても「生きればいいじゃん」 ALS患者の「ニャンちゅう」声優・津久井教生さん 視線でパソコン操作し書き上げた闘病記 妻の言葉に背中押され
NHK・Eテレの「ニャンちゅう!宇宙!放送チュー!」の人気キャラクター「ニャンちゅう」の声を30年務めるなど、声優・俳優として活躍してきた津久井教生さん。2019年9月に筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断され、体が徐々に動かせなくなる中で闘病の様子を発信してきた。今年4月、『ALSと笑顔で生きる。声を失った声優の「工夫ファクトリー」』(講談社)を刊行した。口で割り箸をくわえてキーボードをたたく「割り箸入力」に始まり、それもできなくなると「視線入力」で執筆を続け、60万字に上る原稿をぎゅっと縮めた一冊だ。装丁には、津久井さんの背中を押した妻の「生きればいいじゃん」という言葉が、まるで笑顔の口元のように配置されている。声も、体の自由も失った。それでも笑顔は絶やさない。ベッドの上の津久井さんは、何を語るのだろう。(共同通信=高坂真喜子) 【動画】「ニャンちゅう」声優・津久井教生さん。視線による文字入力で書き上げたALS闘病記
▽声はなくても表情は豊かに 3月、自宅リビングのベッドの上で、取材に応じた津久井さん。隣の部屋には「ニャンちゅう」のぬいぐるみもいた。人工呼吸器を付け、自力で動くことができないため、24時間体制でヘルパーや妻が介護している。取材の途中で妻がたんの吸引をする場面も。少し苦しかったのか、涙をにじませた。 津久井さんが意思を伝える手段が、パソコンによる「視線入力」だ。視線だけで文字を入力し、合成音声で読み上げる。時間をかけてパソコンの位置を細かく調整してもらい、いざ取材が始まると、モニター上のキーボードで、すらすらと文字を入力していく。 津久井さんは気管切開をしており、声を出すことはできないが、表情を動かすことはできる。読み上げている音声に合わせて、自分で声を出しているかのように表情をくるくると変えた。 「今回、私のALSについて書いた文章が本になり、1人の人が書いた本は、たくさんの人の協力で成り立っていることを知りました。装丁が笑顔のようで、私たち夫婦らしいです。すてきな本が出来上がったと思います。今、多くの人に手に取っていただきたいと思っています」と笑顔を見せた。