米国で核や宇宙関連の機密研究に関わる科学者10人以上が死亡・行方不明、FBIが調査開始
(CNN) 米マサチューセッツ工科大学(MIT)の原子核物理学者が、自宅前で撃たれ死亡した。元空軍少将は家を出たまま行方不明になり、航空宇宙エンジニアはハイキング中に姿を消した。
米国で核、航空宇宙分野の機密研究にかかわった科学者ら少なくとも10人の死亡、失踪が相次ぎ、相互の関連性や犯罪に巻き込まれた可能性をめぐる臆測が飛び交っている。
米連邦捜査局(FBI)はこのほど、科学者の失踪と死亡について、エネルギー省や国防総省、連邦・地方レベルの捜査機関と共同で関連性を調べていると発表した。
これとは別に、与党・共和党が主導する下院監視委員会は先週、科学的な機密情報を知り得る立場にあった人物らの死亡、行方不明の報告について調査するとの声明を発表。
さらに、相互の関連が疑われるとしてFBIや国防総省、エネルギー省、米航空宇宙局(NASA)に説明を求めた。
NASAはX(旧ツイッター)に「関係機関との調整、連携を図っている」と投稿した。
NASAの報道担当者はそのうえで、「今のところNASA関連で国家安全保障への脅威は一切みられない」と述べた。
ホワイトハウスも先週、連邦機関と協力して関連性の有無を調べていることを明らかにした。トランプ大統領は「かなり深刻な話」だと発言している。
下院監督委員会のコーマー委員長(共和党)は19日、米FOXニュースに「単なる偶然の可能性は極めて低い」と語った。「議会はこの件に重大な関心を持っている。当委員会はこれを国家安全保障上の脅威とみなし、優先課題のひとつと位置づけている」
監視委員会のメンバー、ウォーキンショー議員(民主党)も捜査の必要性を認める一方、背後に共通の動機があるという確信はないと述べた。
同議員は21日、CNNにこう語った。「米国には核分野の科学者、専門家が何千人もいる」「外国の敵対勢力が米国の核プログラムを狙ったとしても、10人を襲って大きな打撃を与えられるようなプログラムではない」
一件ごとに異なる事情
議員らによれば、一連の不審な死や失踪が始まったのは2023年7月30日。NASAのジェット推進研究所(JPL)に25年近く勤めた科学者、マイケル・デービッド・ヒックスさん(59)が亡くなった。
米天文学会(AAS)によると、ヒックスさんはJPLで彗星(すいせい)と小惑星の研究に携わっていた。死因は公表されていない。
娘のジュリア・ヒックスさんがCNNに語ったところによると、父ヒックスさんは持病に苦しんでいたという。ジュリアさんは「私の知る限り、父が連邦当局の捜査に関係するような事情は考えられない。父の死と行方不明になった科学者たちの間に、つながりがあるとは思えない」と話す。
JPL関係者ではその後も、24年に宇宙研究分野の専門家だったフランク・マイバルドさん(61)がロサンゼルスで死亡。昨年6月には、材料加工グループの責任者だった航空宇宙エンジニアのモニカ・レザさん(60)が同市内の森林でハイキング中に姿を消した。
そして今年2月27日には、元空軍少将のウィリアム・ニール・: マッキャスランドさん(68)がニューメキシコ州アルバカーキの自宅を出たまま行方不明になった。自宅には携帯電話と度つき眼鏡、ウェアラブル端末が残されていた。捜索にはFBIも参加している。
マッキャスランドさんは国防総省による最先端の航空宇宙研究を主導し、ライト・パターソン空軍基地内の空軍研究所を率いた経歴を持つ。
同基地は、1947年の「ロズウェル事件」に関連する地球外由来の残骸を保管していると噂(うわさ)されてきたが、空軍は否定している。マッキャスランドさんの妻スーザン・マッキャスランド・ウィルカーソンさんは当時、基地での仕事が失踪に関係しているとの臆測を否定し、フェイスブックに「だれかが夫を連れ去る理由にはならない」「夫には地球外生命体(ET)の死体や残骸について、何も特別な知識はない」と書き込んだ。
行方不明者のうちメリッサ・カシアスさん(53)とアンソニー・チャベスさん(78)は、ニューメキシコ州にある第一線の核研究施設、ロスアラモス国立研究所に勤務していた。
ニューメキシコ州警察によると、カシアスさんは昨年6月、同州タルパ付近で幹線道路上を歩いていたのを最後に行方が分からなくなった。米NBCニュースによれば、持ち物を自宅に置いたままで、携帯電話は初期化されていた。
同州公安局はCNNに、行方不明者として捜索を続けていると述べる一方、事件性はないとの見方を示した。
ロスアラモス警察によると、建設工事の現場監督を務めていたチャベスさんは、昨年5月に姿を消した。捜査担当者の一人はCNNに、事件性を示す手がかりはないと語った。