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東日本大震災

2011年3月11日に発生した東日本大震災。復興の様子や課題、人々の移ろいを取り上げます。

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処理水放出の反対理由は風評被害だけではない 苦しい立場の漁業者

浜田武士・北海学園大教授(本人提供)
浜田武士・北海学園大教授(本人提供)

 東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出には、福島県の漁業者らが一貫して反対している。必ずしも世間で考えられている「風評被害」だけが理由ではないと、北海学園大の浜田武士教授(漁業経済)は指摘する。どのような事情があるのだろうか。【聞き手・尾崎修二】

 処理水の海洋放出を巡る問題は、どう解決すればいいのか。有識者に聞いた。
上=処理水放出、科学的根拠だけでいいのか 二極化する原子力の賛否 青山学院大・岸田一隆教授
中=北海学園大・浜田武士教授
下=復興は福島だけの問題なのか 処理水放出めぐる政府の姿勢に疑問 千葉悦子・福島大名誉教授

 福島の漁業にとって、海洋放出は水揚げ増や販路回復のマイナス材料にしかなりえず、復興の途上で次のパンチを食らうことになる。政府は海洋放出の安全性のアピールに注力しているが、「なぜ今放出するのか」の説明も足りないように感じる。

 さかのぼれば事故直後、東電は地元漁業者らに事前連絡せず低濃度の汚染水を放出し、国内外からの信頼を失った。2013年、多核種除去設備「ALPS(アルプス)」による処理を始めた際も、東電の担当者が放出を前提にしたような発言を国の検討会で口走り、再び漁業者らの反感を買った。

 その後、福島県漁業協同組合連合会(福島県漁連)は、汚染前の水(原子炉建屋に流れ込む前にくみ上げた地下水)と、汚染水(建屋に入り燃料デブリに触れた地下水)で対応を分けることにした。国や東電との「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」という約束は、15年に前者の海洋放出に同意した際に交わされたものだ。いま放出すれば約束はほごになる。「何を言っても時期が来れば海に流されてしまう」という諦めの声が聞かれる。

 つまり、福島県の水産関係者が反発する背景には、東電への不信感や、自分たちの意見が反映されないことへの不満があるのだ。放出の方針は政府が決めるが、海洋放出は東電が実行するというのも責任の所在がどこかあいまいだ。放出期間は30年以上と長丁場であり、東電が途中でトラブルを起こさないかも懸念材料だ。

安全性周知が不安を刺激

 「風評被害」は便利な言葉だが、その対策にも問題がある。消費者の理解醸成を促せば済むという単純な話ではないからだ。

 福島の漁業は原発事故から1年以上の操業自粛を経て、ごくわずかな魚種や海域から水揚げを慎重に拡大してきた。消費者の信頼を取り戻そうと、行政と別枠で独自検査を続け、過剰供給で価格が落ち込むリスクを避けなが…

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