京大が「建て替え」発表の吉田寮 専門家「国の重要文化財級の価値」
現存する国内最古の学生寮・京都大学吉田寮。大学との和解で耐震工事の実施が決まり、3月末に寮生が一時退去しました。しかしその後、大学が寮を建て替えるとする方針を発表。寮側は「唐突で一方的」と抗議し、大学へ対話を求めています。(朝日新聞withnews・川村さくら)
1913年建築の「現棟」と2015年建築の「新棟」がある吉田寮では、約100人の学生が自治のもとで暮らしてきました。
老朽化した現棟の耐震工事については、寮自治会と大学側が協議を続け、15年には「補修を継続して行う」「吉田寮自治会と話し合い、合意の上決定する」とする確約書を交わしていました。
しかし、大学側は寮との交渉を打ち切って寮生の退去を通告。19年には退去しなかった一部寮生へ明け渡しを求めて京都地裁に提訴しました。25年に大阪高裁で和解が成立し、被告寮生たちは26年3月末に一時退去し、耐震工事後に現棟に戻ることになりました。
3月末に退去、4月14日に方針発表
寮生は3月末、新棟や大学が用意した代替宿舎に移りました。
退去の期限となった3月31日夜。「たまり部屋」と呼ばれる共用部屋で鍋を囲みました。午後11時50分ごろには玄関に集まり、「10、9、8……」と声をそろえて期限を迎えました。
この時点で大学は具体的にどのような耐震工事を行うのか明らかにしておらず、4月14日、「その建築物としての歴史的経緯に配慮しつつ建て替える」とする方針を発表しました。
大学は取材に対し、建て替えを決定した理由は「方針に記載の通り」で「14日に部局長が参加する会議で審議のうえ役員会で決定した」とし、歴史的経緯に配慮する具体策は「まだ決まっていない」と回答しました。
「建て替える必要はない」診断
現棟は建築として高く評価されています。建築史学会は15年に保存活用に関する要望書を出しました。
当時会長だった中川理・京都工芸繊維大名誉教授(70)は「大正初期の木造の西洋建築というだけで、国の重要文化財級の価値がある」と指摘。
文化財修復構造技術支援機構(NPO)の見立てでも、補強工事は必要だが、建て替える必要はないと診断されたといいます。
そうした経緯にもかかわらず発表された大学の方針に、寮側は「唐突で一方的」「一切の話し合いに応じない大学当局に不信感が募る」と抗議声明を出しました。
自治はどうなる
そして、吉田寮の今後に関して寮生たちが懸念しているのは、建物のことだけではありません。自治による運営を続けていけるのか、危機感があります。
かつては大学と寮自治会が、団体交渉などを経て、補修などにまつわる合意形成をはかってきました。
しかし、大学側が協議を打ち切ってからは、和解後も一切話し合いができていないといいます。大学が寮生と認めているのは、退去通告前から居住し、和解時に被告だった6人だけなのです。
寮生の小林律輝さん(19)は「なるべく現棟の今の形を残す補修工事をしてほしい。そして早急に僕たちを寮生と認め、対話に応じてほしい」と願っています。
「対話による吉田寮問題解決を求める教員有志の会」を立ち上げ、集会や署名などを行ってきた京大大学院教育学研究科の駒込武教授は指摘します。
「寮側は19年には自ら退去を提案していたのに、大学はそれを拒否して提訴しました。大学の本当の目的は、耐震上の安全確保でなく、自治の慣行をなくすことではないでしょうか」
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