インタビュー

新聞社も推される時代は来る? 人気声優起用し入り口を広げてみては

聞き手・岩本修弥
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 朝日新聞阪神支局で記者2人が殺傷された事件から、5月3日で39年になります。朝日新聞労働組合では毎年、言論の自由を考える「5・3集会」を開いています。

 39回目の今年のテーマは「ジャーナリストは推せる?~『推し活』時代のメディア~」です。

 アイドルやインフルエンサーらを応援する「推し活」は今、政治の世界にも広がりを見せています。

 「オールドメディア」と呼ばれる新聞社やジャーナリストも推される時代は来るのか。

 集会の登壇者の一人、東京大学大学院の田中東子教授(メディア文化論)に聞きました。

今年の「5・3集会」の申し込みはこちら

朝日新聞労働組合は、事件の翌年から「言論の自由を考える5・3集会」を続けてきました。今年も5月3日午後1~3時にライブ配信します。参加無料。視聴には事前の申し込みが必要です。

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ゆがんだSNS 対峙する気概を

 推し活という言葉は、コロナ禍前後の2019~20年から使われ始めました。

 アイドルや音楽などのポップカルチャーがグローバル化し、自身が押し上げないと、推しの対象が他との競争に勝てない。

 X(旧ツイッター)などのSNSを使って自分主体で発信する「自己愛」が、今の推し活文化に合流しました。

 SNSを通じて自分主体で発信するこうした実践は、個人がメディアとして機能する時代の、新しい表現文化の形とも言えるでしょう。

 「オールドメディア」と呼ばれる新聞やテレビは今、どんどんデジタル空間での発信に力を入れています。

 でも、5~10年遅かった。

 取り込めたはずのファン層は、時事系ユーチューバーやインフルエンサーらにすがり、きちんとした取材を経ていない情報に振り回されています。

 逃がした層を、どう取り返すのか。

 相当の工夫が求められますが、例えば重要な日々のニュースを、人気声優に読んでもらうのはどうでしょうか。

 記事のレベルを下げないことや取材を尽くすことは前提ですが、新聞は若者たちにとって分かりにくくて難しい。

 ニュースに触れてもらうために、入り口を広げる工夫をする必要があります。

 炎上を過度に恐れ、差し障りのないテーマしか書かないのは、メディアが滅びる前兆です。ディフェンスに回っている姿は、読者に見透かされています。

 社会課題に対して情熱のほとばしりが見えてくる、そんなメディアでなければ、誰にも推してもらえません。

 最近は記者の見える化も進み、推しの対象になり得る土台は築かれつつあります。

 既存のプラットフォームから一度、完全に撤退し、まともな議論が成立する新たなデジタル空間を構築したり、ゆがんだ現代のSNSと真っ向から対峙(たいじ)したり。

 そんな気概を見せられれば、きっと推されるメディアやジャーナリストになれる。

 今のこのタイミングが、最後のチャンスだと思います。

東京大大学院教授・田中東子さん

 1972年生まれ。東京大学大学院情報学環教授。専門はメディア文化論。今年3月の朝日新聞朝刊文化面に「推し活」と政治についての分析を語ったインタビューが掲載された。著書に「オタク文化とフェミニズム」など。

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未解決のまま時効に

 1987年の憲法記念日の夜、朝日新聞阪神支局(兵庫県西宮市)に目出し帽姿の男が侵入し、散弾銃を発砲した。小尻知博記者(当時29)が左脇腹を撃たれて死亡。犬飼兵衛記者(同42)は右手の薬指と小指を失った。

 報道機関に届いた「赤報隊」を名乗る犯行声明文には「すべての朝日社員に死刑を言いわたす」「反日分子には極刑あるのみ」と記されていた。

 警察庁は、のちに判明した東京本社銃撃など一連の事件を「広域重要指定116号事件」として捜査を続けたが、2003年までに全8事件が未解決のまま時効となった。

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この記事を書いた人
岩本修弥
文化部|大阪駐在、放送・芸能担当
専門・関心分野
防災・減災、コミュニティー、放送・芸能(お笑い)

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