「ガンダム」富野由悠季さんが語る新作への思い 旭日中綬章を受章
春の叙勲で、アニメーション映画監督の富野由悠季さん(84)が旭日中綬章を受章した。「機動戦士ガンダム」シリーズなどを手がけてきたことで知られる富野さん。報道陣に、受章の喜びや現在準備中の新作などについて語った。
自分は裏方 その仕事を評価して下さる方がいる
「アニメーションは、絵を描くアニメーターをはじめ背景、彩色、音響など多くの手仕事で成り立っています。そういう人たちの手仕事のたまものが自分の作品。自分はあくまで裏方で、でもそういう仕事を評価して下さる方が世間にいる。その多様性を全否定も全肯定もしちゃいけないなと思い、お受けすることにしました」
「絵は描けなくてもこうしてアニメの仕事は出来るよ、監督が出来るよと、後に続く若者に示すという意味もあります。絵が描ける人がアニメを作ると、物語より絵が先行しがちで、ドラマラインを追いかけるという意識が薄くなる。絵は描けないけど演出やってるよ、俺らの方がドラマが見えているよ、と“上から目線”の発言もしたくなります」
「今はデジタルの発展で技術先行という弊害も感じている。CGで何でも出来るといってただ観客を驚かすだけの映像を作るから、センス・オブ・ワンダーが映像から失われている。映像を演出するとはどういうことか、ドラマ論を忘れている演出家がいることが気がかりです」
新作準備中 「もしできたら絶対傑作になる」
1964年に「鉄腕アトム」で演出デビュー。その後、代表作「機動戦士ガンダム」などを手がけ、約60年にわたりアニメ界を引っ張ってきた。
2014~15年に放送された「ガンダム Gのレコンギスタ」と19~22年に順次公開された映画版5部作以降、新作が途切れている。
「今、コンテの第1稿がかき上がった作品があって、(機動戦士ガンダムのシリーズなどを作ってきた制作会社サンライズから社名を変更した)バンダイナムコフィルムワークスが『制作をしてもいいよ』というところまで来たんですが、バンダイナムコフィルムワークスの思惑と僕の思惑の間でどうも予算の食い違いがあるらしくて『さて?!』ということになっています」
「本当にやっていいのかいけないのか、だけどスタッフは集まり始めているしどうしようか……というレベルで、かなり“地獄”です。(新作を)やっているとは言えません。だって制作ができて発表できない限り『制作をした』とは言えないわけですから。フリー(フリーランス)の立場からすると、(自分で新作の)企画・制作をやることで時間をふさいでいかないと、80歳にもなると寂しくて怖くてしょうがないから、この3年半コンテ作業をやっていました」
「もし出来るなら絶対傑作になる。でもこれ、アニメじゃねえかも知れないよ。物語ラインとか、こういう舞台を使っているという意味では」
話は自身の健康面や、社会情勢にも及んだ。
「スタジオには通っていません。この体になると通える体力がない。2年ほど前から2本足で歩けなくなったんです。原因は13年ほど前に発症した脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)です。うかつに手術すると死ぬまで車いすになるかも知れないっていうんで、手術をしないまま現在に至っています。今は基本的に自宅作業です。それができるのがアニメのありがたいところです」
地球はもう「持たない」 希望のある物語つくっていいのか
「この1カ月くらいの新聞記事で気になっているのは温暖化の問題です。アニメごときが、将来的な希望のある物語を作っていいのか。今それは出来ないような気がしている。そうはいっても作品は作らないといけない。とするとそれは、ファンタジーというジャンルなら出来てもリアリズムでは――。つまり分かりやすく言うと、実写でもう戦争映画は撮れないでしょう。どっちが勝っても地球が持たない」
「このまま中東から石油が来ないと、日本列島で1億超える人間が暮らしていけるのか。現在までの日本の環境というのは“天国”だったと感じている。ナフサの供給も心配しないで、医療機関で使い捨てのあれこれを使えて。大規模な爆撃とかなくても日本列島で人が暮らしていけなくなるんじゃないか? 自給自足なんて我々は今できるのか?」
「僕の今やっている仕事がスタジオワークに入れるようになったら次の新作を考えたいと思っていて、そのタイトルは『天国は終わった』です。リアリズムで考えるとそういう風にしかものは考えられない。今の環境を見ると、そういうところまで来ています」
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