[社説]男性基準の開発から脱却を
市場で提供されている商品やサービスのあり方が、実は女性にとって使いにくいケースは意外に多い。男性目線の設計・開発から抜け出せていない点に問題がある。ダイバーシティー推進のため身近なところから見直しが必要だ。
その典型的な例が公共のトイレだろう。駅や空港では、女性用トイレの長い行列が目につく。男性用に比べて数が少ないことが主因だ。使い方も男女で異なる。
かつて女性は家庭にいることが前提とされ、外出先でのトイレ利用は男性が中心だと考えられてきた。トイレの現状は、女性活躍という時代と社会の変化から取り残されていると言わざるを得ない。
政府は昨年、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に「女性用トイレの利用環境の改善」を盛り込んだ。国土交通省の有識者協議会がまとめた指針案では、公共施設のトイレについて待ち時間が均等になるよう求めた。
不利益はほかにもある。自動車のシートベルトは成人男性を基準に開発されてきた。サイズが合わない女性は事故の際に重傷を負う可能性が高くなる。医薬品も性別で影響が異なるケースがある。
企業などの採用試験では人工知能(AI)の導入が進んでいる。性別に関して偏見が含まれた情報をAIが機械学習すれば、格差が再生産されてしまう。
課題解決のために求められているのが、研究や設計・開発の段階で性差分析を導入する「ジェンダード・イノベーション」だ。米スタンフォード大のロンダ・シービンガー教授が提唱した。弊害を排除するだけでなく、新たな発見や技術革新が期待できる。
男性基準からの脱却は、企業や大学にとってより多くの人に商品やサービスを提供するチャンスでもある。見過ごされてきた性差に着目し、新たな市場の創出につなげてもらいたい。
研究者の多様性も欠かせない。性別に限らず年齢や人種などにも考慮することで、誰にとっても安心で快適な社会を目指すべきだ。