法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『機動戦艦ナデシコ』は、キャラクターが物事に本気に向きあわずに話を進めるところが苦手で嫌いだった思い出

 アニメライターの前田久氏と、ストーリーエディターをつとめた會川昇氏が当時をふりかえっていた。


放送時からそうで、「これを作っているやつらは俺たちの好きなモノを小馬鹿にしている」みたいな反発が起こりがちなのが『ナデシコ』という作品の不幸なところよな。ちゃんと見れば作品そのものからも愛は伝わるけど、そんなに引っかかるならスタッフインタビューとか探して読んでみたらいいと思う。


まぁこれについては確か打ち上げに向かう途中か何かでハバラさんに突然「そういうつもり(昔の作品をバカにしている)じゃないよね?」と聞かれたりして驚いたことがあったので、逃れ難い問題です。「最終回直前にネッシーかよ!」とか「かるたプロット!」とかの発言も、批判ととる人はとるので

 初回等の本編演出や作中作をOVA化した『ゲキ・ガンガー3 熱血大決戦!!』を監督した羽原信義氏からも疑われたと思うくらいだったので*1、視聴者の反発も自然な反応ではあったはずだ。

 一応、『宇宙戦艦ヤマト』的な生真面目も『戦国魔神ゴーショーグン』的な脱力感も全肯定も全否定もしないというスタッフの意図は知ってはいた。たまたま同時代に作品を特集した『アニメージュ』1996年12月号を購入して読んでいたからだ*2

 しかし同時代にシリアスとギャグを混交したアニメとしては、座談会でも言及されている大地丙太郎氏の作品を好ましく見ていた記憶がある。過去作品の要素を濃密につめこみながら現代で成立するロボットアニメをつくろうとする挑戦としては、『勇者王ガオガイガー』が好きだった。


 私自身の記憶をふりかえって、はっきり『機動戦艦ナデシコ』で嫌だと思ったのが、「究極の選択」をキャラクターがせまられる第6話。念のため、どのような選択をしても救いがないというシチュエーションドラマ自体は嫌いではなかった。しかし組み立てが良くないというか、そのシチュエーションにもっていくためにコメディ的な演出で艦長ミスマル・ユリカに個人の恋愛感情から独断で戦艦を動かさせるという無茶が納得できなかった。「悲劇」の後に艦長の責任が問われるわけでもない。
 現実の軍艦ほどではなくても、多人数で動かす戦艦ならば、それなりに判断の妥当性が問われるべきだろう。究極の選択を描く時はシチュエーションの人工性がばれないよう気を配らないと、そもそもその選択にいたる以前の行動に疑問を感じやすい。それ以前の行動でそう選択せざるをえなかったキャラクターの本気を感じさせてほしい。
 同じようにストレスが溜まる嫌な恋愛描写でも、第17話は悪くなかった。整備班長のウリバタケ・セイヤが模型趣味で意気投合した年下の女性パイロットのアマノ・ヒカルに、妻帯者でありながらアプローチをかけて、そういうのは望んでいないと断られる。あくまでプライベートの個人間のキャラクターの愚行として描かれていたし、本気になることがダメなことだと直感的にわかりやすいシチュエーションだった。
 第6話にしても、今回の前田氏と會川氏のやりとりを見て、サブタイトルで「究極の選択」に二重カギカッコがつけられていることもあり、そうした究極の選択を描くシチュエーションの人工性をあえて表現したかったのだろうか、とは思えたのだが。


 後年に思ったのが、重大な出来事に登場人物がそっけなく対応する佐藤竜雄監督の作風が事故を起こしていたのではないかということ。
 一例として、数年後に監督し、シリーズ構成も手がけた『学園戦記ムリョウ』も同じように背景設定で『ウルトラマン』をパロディしたような部分がありつつ、作品全体が大きな出来事を何でもないことのようにやりすごすという対応で一貫していた。それが独特の清々しさを生んでいた。

 しかしパロディにとどまらず虚構に影響されて人生が変わるキャラクターを葛藤的に描いた物語と、大きな危機や異変にも自然体で接するキャラクターを描く演出を合体させると、何かに本気になるキャラクターを真面目にとりあわないキャラクターという対比に見えるのではないか。
 だから同じコンセプトでも、たとえば虚構に影響された木星蜥蜴側の視点で描かれた作品であれば好きになれたかもしれない。過酷な環境で古臭いアニメひとつしか楽しめる文化を持ちこめず、くりかえし視聴をつづける内にそのアニメを『蝿の王』*3に出てくる蠅の王のように信仰していく過程を切実かつ滑稽に描く……みたいな物語であれば地球側のアニメ受容と対比するコンセプトも伝わりやすく楽しめたかもしれない。

*1:なお、羽原氏自身の記憶では疑問形ではなく、本気で1970年代を再現するのかという確認のつもりだったという。

*2:購入目的は藤子・F・不二雄の追悼記事だったが。

*3:『蝿の王』 - 法華狼の日記