法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『変態王子と笑わない猫。』雑多な感想

 さがら総のライトノベルを原作とする2013年のTVアニメ。制作はJ.C.STAFFで、そこの撮影出身の鈴木洋平初監督作品。

 カントクによる原作挿絵のアニメデザインへのニュアンス置換がうまくて、映像全体も高度に安定している。素材を最終的に映像として完成させる部署出身の監督ゆえに、全体のコントロールの大切さと方法論がわかっているということだろうか。
 OPEDは十年以上たった現在で見てもクオリティが高め。下着をギリギリ見せるセクシャルな描写の線引き。本編でも手描き作画でスカートの細かいチェック模様を動かしつづけていることには驚く。


 内容は平凡なラノベらしいラブコメだが、性欲を丸出しにするノンデリ主人公少年と星野ルリ系の無表情冷淡ヒロインを成立させる発端として超常現象をつかっている。同時代で考えても少し古い感じのエロコメだし、冒頭でスクワットするふりで水泳女子を覗き見する主人公に閉口するが、意識的に作っていることが第1話の範囲で理解できるので以降は安心して見ていられる。序盤から示唆されていた記憶の齟齬をめぐる終盤の謎解きも、学園ドラマでよくある家族描写の省略のための両親の不在を、きちんと物語の根幹に組みこんでいるといえる。
 そうして前半までは願いをかなえる現象が偶然や思い込みでもありうる範囲だが、後半ではっきり超常現象が発生する局面からは一転して学校全体の情景から生徒の常識まで改変する派手さが楽しい。面白くなるよう設定を活用しつつ、その規模の大きさから謎めいた少女の正体探しを難しくしている。その謎めいた少女の正体は肩透かしだったが、その説明を台詞で説明しすぎていないことは良かった。全体的にも、ライトノベル原作なのに説明台詞が少なく、饒舌な描写はそうするだけの意味をもたせている。
 ツッコミキャラクターになってドラマの主軸にならなくなったメインヒロインをめぐって、先述したように終盤になって謎解きがおこなわれたところは意外。回想される過去の人間関係に意外性があり、それが失われた悲しみもある。この作品が原作者のデビュー作と思うと、原作で5巻も書けて謎を解いた構成をどのようにつくったのかと不思議な気持ちにもなる。


 ただ気になるところもいくつかある。たとえば前半でひとりの少女が偽りの自分を演じる原因となった過去の「友人」の贖罪は甘すぎる。いや甘くてもいいが、それを許すことは甘いのだというエクスキューズは欲しい。
 いわゆる「クレイジー」なところはありつつ同性婚を視野に入れて行動するレズビアンキャラクターが主人公を当初は敵視しながら、騙されたのをきっかけにあっさりハーレム要員になってしまう定番展開も残念……そのレズビアンキャラクターに思慕をいだく別のレズビアンキャラクターが入れかわるように主人公を敵視する存在として前面に出てくるところは苦笑したが。