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「親不孝者と言われても」…親の希望「家で家族だけで介護して」はどこまで尊重すべきか? 男女でずれる介護観の現実

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介護される男性
入浴や食事、排泄など家族が自宅で介護する負担は大きく、介護者が心身を病むケースも(写真:Ushico / PIXTA)
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今回紹介する真一さんの父親(80代)もそんな1人です。

<真一さんの父親(80代)のケース>
実家で両親2人暮らし(両親とも80代/真一さんの自宅からは電車を乗り継ぎ片道2時間超。真一さんには妹がいるが、結婚しアメリカ在住)

真一さんの父親は足を骨折して手術をして以来、起き上がる際や入浴などには介助が必要となりました。しかし、父親は身体が大きく、小柄な母親がサポートするのは大変なのです。

特に、入浴介助の負担は大きく、「私1人では無理」と母親は根をあげました。そして懇願されるような両親の視線に負けて、真一さんは毎週末、実家へ行き、父親の入浴介助をしていました。

「僕だって、負担です。父には『介護保険を使って、ヘルパーさんに来てもらおう。訪問入浴のサービスもあるらしい。デイサービスで風呂に入ってもいい』と何度も提案しましたが、聞く耳を持ちません」と真一さん。

いつものように、父親に介護保険の利用を勧めていたある日、父親は機嫌が悪かったのか、するどい目つきで真一さんをにらみ、こう叫んだのです。

「私ができないことを、母さんや真一が手伝うのは当たり前だろう。おまえは誰のおかげでおとなになったと思っているんだ。この親不孝者! 嫌なら、おまえは来なくていい」(父親)

母親が頬を打撲、部屋は散らかり放題

「『親不孝者』呼ばわりされて、2時間以上かけて風呂を入れるために実家へ行きますか。正直、うんざりしました。冷たい息子と思われるかもしれませんが、1カ月半ほど、行かなかった時期があるんですよ」(真一さん)

真一さんが45日ほどして実家へ行くと、母親の頬に大きな絆創膏が貼られていました。「父が殴ったのかと思い、背中がぞくっとしました」と真一さん。聞くと、母親は父親を立たせようとした際によろけて、柱に顔を打ちつけたようです。

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【デイサービスへ行きたがらず…】

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父親は45日間、一度も風呂に入っていませんでした。母親が清拭していたようです。母親は疲れ果てているようで、居間も寝室も、新聞紙やお菓子の空き袋、タオルなどがここそこに置かれています。ゴミ箱からは、弁当の空き箱があふれていました。居間の空気はよどみ、母親の顔色も良くありません。

「もう限界だと思いました。これ以上放置はできない。『介護サービスを入れる』と宣言しました」(真一さん)

地域包括支援センターへ行き、現状を話したところ、スタッフが実家を訪問し、父親にサービス利用を説得してくれました。そして、要介護認定のための申請を行うことができました。

サービス利用を開始したが母親は“うつ”に

何とか、介護保険のサービスを入れることはできましたが、ハッピーエンドとはいきません。

介護保険を利用して、父親はデイサービスに通うようになりましたが、「あんなところへは、行きたくない」「今日は体調が悪いから休む」など、いつもごねます。実際、休むこともありました。

母親の心はストレスに対応しきれなくなったのでしょう。ふさぎ込むようになり、病院で「うつ状態」との診断を受け、薬を服用。母親の状態が悪化しないように、真一さんは週末、実家に泊まりこむようになりました。「平日は仕事で、週末実家で過ごすのは、相当キツイ」と嘆きます。

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【「家族に介護してもらいたい」男性が多い】

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母親も介護保険で「要支援2」と認定を受けました。母親は自ら、ケアマネジャーにお願いして、週に2回、父親とは別のデイサービスに通います。

「デイサービスに行っている間は、父親と離れられるからほっとするようです。スタッフの方に親切にしていただき、居心地がよいらしく、『回数を増やせないかしら』と言っています」(真一さん)

真一さんは、父親を高齢者施設に入れることを検討しています。

家族だけでの介護は困難

真一さんの父親のようなケースは、レアではありません。「親から介護サービスの利用を拒否された」との声はよく聞きます。

全国の60歳以上の人を対象に、健康や老いについての意識を調べた調査報告があります。そこでは、「実際にどうなるかは別にして、もし、寝たきりのような状態が長く続いたとき、どのようにしたいか」とたずねています。

2024年の調査では、男女とも「特別養護老人ホームに入りたい」という意見が多く、次いで「家で家事や介護などのサービスを利用しながら世話をしてもらいたい」が多くなっています。

男女差も見られます。

施設入所や介護サービスの利用を希望する意見は特に女性で多いのに対し、男性は「家で家族だけで世話をしてもらいたい」という意見が、女性の2倍以上も。

東京都健康長寿医療センター研究所「長寿社会における暮らし方の調査」(2024年)より

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【家族だけでの介護は困難】

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介護保険制度が始まる前年の1999年の調査では、男女とも「病院に入院したい」という意見が最も多く、特別養護老人ホームを希望する人は少なかったのですが、25年間で高齢者の療養場所の希望は大きく変わったようです。ただし、男性は女性よりも、変化は、やや鈍重……。

家族であっても断る勇気が必要

今後も、高齢者だけで暮らす世帯、ひとり暮らしは増加を続けるでしょう。老いた家族を老いた家族が世話をするのは、過酷です。子どものいない人も増えており、いたとしても真一さんの妹にように海外で暮らしているなどさまざまな事情があります。

長寿が進む中、親が90歳以上で、子が60~70代で先に健康を害したり、亡くなったりするケースもみられます。

家族だけで介護を行うことは困難であることを、誰もが理解を深める必要があるでしょう。もし、親から「家族だけで」との要請があっても、断る勇気を持つことが、結果として本人のためになると思います。

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