P「へぇ、ビアガーデンですか」
約1年ぶりに成人組たちの飲酒SSを書きました。
今作は話の構成上、283プロの成人組より『はづき、千雪、ルカ』を抜粋してます。
【あらすじ】近場で期間限定開催のビアガーデンへPとはづきが向かう…というお話です。
章タイトルの名前の記載通り、それぞれの一人称視点で展開します。
昨夏に投稿した成人組(美琴・夏葉・千雪)の飲酒パリピSSを未読の方は↓
(※話自体は今作と繋がってません)
novel/17963680
【余談】
もともとのプロットの中盤部分が間延びした為、本稿版でカットしました。
実際にPはもっとアルハラやセクハラも受けてると脳内解釈してください←
日頃からすき!、いいね!、ブクマをありがとうございます!
作品へのコメント等もいただけると、創作のモチベがグーンと上がります。
Twitterやマシュマロも宜しければどうぞ。
投稿頻度は不定期ですが、引き続きお付き合いの程を。
㊗️2023/07/28の[小説] 男子に人気ランキング14位
- 468
- 572
- 11,370
はづき
「プロデューサーさん。これ知ってます~?」
「えっと……『昨年に引き続き今年も"ビアガーデン"期間限定OPEN!』ですか。へぇ、この近くなんですね」
「しかも、OPEN記念で生ビールのジョッキ1杯が"100円"らしいですよ~」
「ははっ、お手頃ですね」
「ですよね~」
「……」
「……」
「……ん?」
「……」
「あー……えっと」
「……はい~?」
「もし、はづきさんがよければ……」
「ふふっ。しょうがないですね~……プロデューサーさんにお付き合いします~」
「……え? あ、どうも」
「いえいえ~。来週末の夜なんてどうでしょう? "偶然"にもパートは無いですし、"偶々"ですが翌日もお休みなので……」
「じゃあ、その日を……」
「了解です~。予約可能なので……早速、二人分で取っておきますね~」
「あ、ありがとうございます」と一礼する彼に、こくりと私は頷く。そそくさと自席に戻り、机の引き出しを開けると、中からは『ビアガーデン予約券』と印字された2枚の紙が顔を覗かせる。
「ふふっ……っと」
ふと、笑みが漏れ出しかけ、唇を引き締める。これ程までにパート先の人間関係を良好に保ち続けてきたことが功を奏することがあっただろうか。プロデューサーさんには『取っておく』と伝えたものの、実際に当日の席は既に予約済み……正しくは懇意にしているパートさんから譲り受けていた。この筋書きに至るまで私の想定内……万が一、都合が悪かったり誘いに乗らなかった場合には、その日お休みの千雪と行くことも可能な二段構えだ。
「その日は、とことんお酒を飲ませて~……ふふっ」
千雪……ごめんなさい。私が先に"既成事実"を作って、限定ブライダル衣装の格好でトゥルーエンドを迎えちゃうかも。でも……今まで通り、親友なのは変わらない。一足先に行くだけ……必ず待ってるから、ね?
ーーーーー
『……くしゅん!』
『わ、千雪さん……だ、大丈夫?』
『冷房の風、強すぎたかな? 甜花ちゃん、リモコン取ってくれる?』
ーーーーー
~~~~~
指折り数える間もなく、決戦の日がやってきた。唯一、心配だった天気は前日までの天気予報を覆す快晴っぷり。せっせと、てるてる坊主をにちかと一緒に作った甲斐があった。雲一つない空を照らす日は傾いていたものの、蒸したアスファルトから立ち上るじめじめとした湿度に辟易としてしまう。シャツの袖を捲り上げ、片手を仰ぐプロデューサーさんの隣を、私は日傘を差しながら歩く。
「ふぅ、今日も暑いですね~」
「ははっ。これだけ暑いと……喉が渇きますね」
事務所から一緒に会場へ向かう道中、額から滲む汗をハンカチで拭きとりながら、微笑む彼の横顔を、なんとなく見つめてしまう。
「ふふっ。もうすぐ”給水所"ですよ~」
「そういえば、はづきさんはお酒って……」
チラリと向けられた視線に、私は目をサッと逸らしてしまう。
「あ~……好きですけど、そこまで強くなくて~」
「そうなんですね。なら無理せずにソフトドリンクとかも……」
……嘘です、真っ赤っかな。というか、私より『アルコールを高速で分解出来る』日本の男性に出会ったことがない。自分が先に酔って潰れたことは人生で皆無だった。大体、相手が先に潰れてしまい……その場で置き去りにするか、そのまま放置するか、さっさと先に帰ることしか無くて……なんて言えやしない。
だから、今夜は適当に酔ったフリをしつつ……プロデューサーさんの強固な『貞操観念』を銀河の彼方に吹き飛ばして、他の部分が"機能"する程度に飲ませるつもりだ。首筋を伝う汗、隣から漂ってくる異性の香りが、私の嗅覚を伝って脳を刺激していく。
「我慢、我慢よ……私」
「ん、なにか言いました?」
「いえ~、なんでもないです~」
「?……あ、あそこですかね」
彼が指さした先、道路脇の広場からは無数のテーブルが立ち並び、机の上にはLED付きのパラソルが日傘の様に広がる様が見えた。入口の看板の辺りに混雑した人たちの様子から、既に入場は始まっているらしく、複数人の『乾杯』の掛け声や乾いた笑い声が遠巻きに聞こえる。私は鞄からチケットを取り出し、彼と共に待機列へ向かう。並び出してから然程待たずに、順番に応対する男性スタッフから声を掛けられた。
「はーい、予約券を確認しま……あ、はづきさん! いつも職場で母がお世話になってます」
「ふふっ。いえ、こちらこそ……去年よりも賑わってますね~」
「えぇ。本当は時間制なんですけど……お二人は特別に無制限で」
「え、いいんですか~?」
「勿論です! 盗難防止も兼ねて、貴重品以外のお荷物は隣のライブハウス内のロッカーを……彼氏さんと一緒のロッカーで宜しかったです?」
スタッフが鍵を、隣に立つプロデューサーさんへ手渡す。
「あ、いや……えと、俺は」
「……一緒で大丈夫です、ありがとうございます~」
「……あの、さっきは彼氏って勘違いさせちゃって……」
私がロッカーに荷物を放り込もうとした際、彼からそっと耳打ちされる。
「後ろで待ってる方もいましたし、そんなに荷物も多くないですから~」
「な、なるほど」
納得したのか、彼は宙に視線を彷徨わせながら腕を組む。
「……そ・れ・に」
私は目尻を下げて、ちょっぴり悪戯っぽく呟いた。
「勘違いされたって……いいじゃないですか~?」
~~~~~
手ぶらで身軽になった私たちはロッカー横の案内表示に従い、外へ通じる扉に向かう。ライブハウス内の冷房を上書きする程の熱気が吹き込む先――広場内に無数のパラソルと、それをぐるっと取り囲むような出店の数々が目に飛び込んでくる。普段は市民が利用する野球のグラウンドを、今年は『期間限定』で使うんだったっけ。奥には特設のステージが用意され、別のスタッフたちがせっせと準備を進めているようだ。
「おっ、結構賑わってますね」
「ふふっ。去年よりも規模が大きくなったらしいですよ~」
予約券に書かれた番号を確認しながら座席を探すと、ステージから程近くの場所に無人のテーブル席を見つける。机に貼られたステッカーの番号を確認し、彼を手招きする。
「ここみたいですよ~」
「へぇ、良い席ですね」
「ふふっ。そうですね~」
「あれ……四人掛けの席だったんですね」
言われてみれば……確かに。辺りを見回すと二人掛けの席なんかも、ちらほらある。
「……二人掛けの席がいっぱいだったんですね~」
「ははっ。これなら夏葉とか千雪も誘えましたね」
「有栖川さんはご実家に帰られていて~、千雪は急用があるって言ってましたよ~」
「あれ、そうでしたか……」
前者は正しい……けど、後者は咄嗟の出まかせだった。
「あ、プロデューサーさん。アプリ入れました~?」
「アプリ?」
「このステッカーに印字されたQRコードを読み込むと……ここの席まで運んでくれるんです~」
「へぇ……わざわざ出店を回らなくて済むんですね」
「勿論、出向いて気になったものを直接購入しても良いそうです」
「さすがですね、ビアガーデンも進化してるとは」
「先に飲物だけ頼みませんか?」
「あ、はい。じゃあ自分は生で……」
「私も生に……あ、お互い2杯分、先に頼んじゃいますね~」
「……へ? あ、ありがとうございます」
あ、マズい。千雪との癖で……でも、もう頼んじゃったし、いいか。彼の記憶を飛ばしてしまえば、こんな些細なことは気にならないだろう。幸い、携帯の画面でおつまみを探す彼の顔はいつも通りだ。
「お待たせしました、生大4杯でーす」
「……わぁ! ありがとうございます~」
「え?……あ、どうも」
プロデューサーさんはテーブルに運ばれてきたジョッキの大きさに目を白黒して……もしかして普段は大ジョッキとか頼まないのかな。
「それじゃ乾杯しましょうか~。お疲れ様です~」
「そ、そうですね。お疲れ様です」
ぐいっとジョッキを傾けると、弾ける炭酸が麦の香りと共に乾いた喉を通り、一気に胃に流れ込んでいく。ふわっとアルコールが身体の隅々を駆け巡って……まるで形容しがたい高揚感が私を包む。
「ん~~~……美味しい~!」
「おっ……いい飲みっぷりですね」
「ふふっ……プロデューサーさん、口元に付いてますよ~?」
あるあるなビールの泡による口元の白い髭、慌てて手の甲で拭う彼の姿が微笑ましかった。
「ははっ、はづきさんも……付いてますよ」
「え~、どこですか~?」
「上唇の少し上に……あっ」
ふと、浮かんだ悪戯心。彼へ上目遣いのまま舌を伸ばし、ペロリと唇を舐める。同時に髪を耳に掻き上げて"うなじ"を見せれば効果は倍増だと、いつかの雑誌で読んだっけ。実際に効果があるかわからないが、ぼうっと目が合ったまま息を"のむ"様子から、何かしら感じているかもしれない。
「ん……取れました~?」
「……ん」
「……プロデューサーさん?」
「……え?」
考え込んでいるのか、ただ呆けているのか……彼は急にジョッキをテーブルに置いたやいなや、明後日の方向を向いてしまい、私の呼び掛けに反応しない。
「お待たせしました~! ご注文の枝豆と唐揚げ、ポテト……以上になりまーす」
スタッフの人が注文したフードの皿を置いて去っていくと、はっと我に返った様子で彼は眉を顰める。
「は、はづきさんも……見ましたか?」
「え?」
「さっき、見覚えのある人影が通って……」
「お知り合いの方ですか~?」
「はい、それが……」
不意に、私の背中をちょんと指で突くような感触がした。
「……奇遇ですね~。プロデューサーさん……と、はづき?」
振り返らなくてもわかる声……頭から生えた触角を揺らしつつ、ニコニコと笑みを浮かべているのが容易に想像出来る。
「……千雪も来てたの~? 驚いた~」
「私も驚いた……休日に"事務所以外"で"二人"と会えるなんて"夢"にも思わなくて」
笑顔を作っているものの、瞳の奥は笑ってない。お互いに長い付き合いで、今はアイコンタクトで会話が成り立ってしまう程だ。
「あれ……千雪、急用は大丈夫なのか……?」
「……急用?」
「……予定の打ち間違えかもしれないです~。『急用』じゃなくて『休養』ですね~」
「ははっ。そうだったんですね」
「もう……はづきったら~」
「ふふっ、ごめんね~」
『どういうこと? 抜け駆け?』と言わんばかりに千雪は笑顔を崩さず、私に目を光らせる。
「でも、千雪の折角の"休養日"に、私たちが邪魔しちゃ悪いんじゃない~?」
(早く自分の席に戻ったほうが良いんじゃない~?)
「あら、はづきが邪魔だなんて……思ったことないわよ?」
(こんな状況ではづきを野放しにする訳……ないでしょ?)
「そう? ならよかった~」
(さっさと帰れ)
「うふっ、気にしないでいいのに」
(絶対、嫌)
アイコンタクトと瞬きを駆使して会話を繰り広げるも、一向に埒が明かない。そっぽを向いたままの彼へ話を振る。
「あ、プロデューサーさんが見かけたの……千雪だったんですね~」
「え、そうだったんですか? プロデューサーさん」
「あ、いや……千雪じゃなくて」
そっと、彼が指差した先……両手にジョッキを持つ人が立っていた。
「……ハァ? んで……オメェが居んだよ」
~~~~~
千雪
久々の休日、趣味に使う買い物のついでとばかり、ぶらぶらと私は駅前を散策してた。その時、目を引く看板を偶然見つけてしまったんだ。
「……ビアガーデンかぁ」
『期間限定OPEN』の謳い文句と、貼り付けられた『生ビール』のジョッキの写真は、ジリジリと照り付ける日差しで乾いた私の喉を直撃する。そうだ、はづきを誘って……あ、今日は業後に『急用』があるって言ってたっけ。
「う~ん……ちょ、ちょっとだけ……近くに行ってみるだけ」
そうやって自分に言い聞かせながら、記載された会場を携帯で調べると、歩いて行ける程の近場との表示。開場時間にも余裕があって、正に好都合……そして口の中は麦の風味が広がって仕方ない。そのせいか、自然と早足になっていく。
「わぁ……人がいっぱい」
広場の入口付近には、既にビアガーデン目当ての人たちが列を作って、いまかいまかと首を長くしていた。おずおずと私も最後尾に並ぶと、すぐ後ろにも人が並びだす。しばらくして、列が前に進みだすと入口にどんどん人が吸い込まれていった。
「はい……次の方、どうぞー」
「あ、はい」
「お一人ですか?」
「えっと、そうです」
「予約券は……お持ちですか?」
「……え? あ、いえ……」
「そうですか。すいません、只今の時間は予約券を持っている方のみでして。フリー入場はもう少し遅い時間から……」
「あ、そうだったんですね……すいません」
丁寧に説明してくれたスタッフさんへ頭を下げて、私は列からさっと抜ける。事前に確認しておけばよかった……けどフリー入場を待つぐらいなら、どこかで缶ビールを見繕い、寮で飲んだほうが手っ取り早いな……なんて考えながら、来た道を引き返そうと踵を返す。
「おい……ちょっと、アンタ」
「え……?」
ふと、隣の列から声を掛けられる。振り向くと、黒髪に金髪のメッシュが入った色白で細身の女の子が立っていた。
「アンタ、283プロだろ?」
「えっと……はい」
「あー……私もそうなんだけどさ」
「?……あ、もしかして……」
「…………斑鳩……ルカだ」
「わぁ、偶然! 私、桑山千雪です。初めまして」
「知ってる……アンタ、一人で来たのか?」
「そうです……けど、予約券が必要って知らなくて」
「そうか。これ……良かったら、アンタに」
彼女がバッグから取り出したのは『ビアガーデン予約券』と印字された紙だった。
「知り合いの女社長から貰ったけど……暑いし、私は帰るから……アンタにやるよ」
「え、いいの? でも……」
「……別にいい。その社長も所属タレントと二人で来るつもりだったらしいけど……成人済なのに年齢詐称してるとかで色々ややこしいから、結局タダで貰っただけさ」
「そうなんだ。でも……」
「?」
「えっと……もし、良かったら二人で」
「いや……だから私は暑くて……」
「……お願い! 三杯……ううん、二杯だけ……一緒に飲みましょ?」
「……ハァ? そういうお願いって普通『一杯』だろ?」
私の提案に、彼女は苦笑し肩を竦めるものの、列から離れようとする足を止めた。
「駄目……かな?」
「……少しなら……まぁ」
「ふふ、ありがとう。私のこと"千雪"って呼んでくれたら嬉しいな」
「ん……私も名前でいいよ」
「ルカちゃん……とか?」
「ハッ……ちゃん付けかよ……別にいいけど」
―
――
―――
「ふーん……アプリで注文ねぇ」
「こういうのって結構繋がりにくかったりしない?」
「まぁ……外だし、大丈夫だろ」
彼女が手に持った携帯画面を私に向け、端を指差す。確かに、電波の強度は高く表示されているが、別の部分に注目してしまう。
「あ、画面が割れて……」
「え……あぁ、うん」
「修理とか……いいの?」
「……別に」
彼女は言い淀みつつ、目を逸らす。なにか事情でもあるのだろうか。
「ね……今度、一緒に携帯ショップ行かない?」
「ハァ……?」
「新しい機種に変えたいなーって……丁度、思ってたの」
「……」
「ルカちゃんの携帯、まだ新しいみたいだし、もし良かったら色々教えてくれると嬉しいな」
「……ん……まぁ」
「ふふっ」
視線を合わさず、髪の毛先を弄る彼女が、なんだか微笑ましくて頬が緩んでしまう。「んだよ……ったく」と席から立ち上がった彼女は「トイレ」と言い残して、テーブルから離れていった。
「えっと……私が”大”で……ルカちゃんは”中”でいいかな?」
最悪、ビールが苦手でも……私が飲めばいいよね。ドリンクをオーダーし終えて、ついでにフードメニューをチラリと眺めたものの、こればっかりは実際の出店で確認したほうがいいかもしれない。まだ、帰ってこなさそうだし……近くの出店辺りを覗いてくると私はチェインで連絡を入れる。パラソルの海、席の間を縫うように歩くと、偶然にも見知った背中を見つけた。
へぇ……そういうことだったんだ、はづきの”急用”って。
「……奇遇ですね~。プロデューサーさん……と、はづき?」
―――
――
―
~~~~~
ルカ
「ルカ……千雪と来てたのか?」
「チッ……だったら……なんだよ」
「ルカちゃん、わざわざジョッキ持って……追いかけてきてくれたの?」
「違っ……泡が無くなって……入れ直そうと……」
「ははっ。そうか……偉いな、ルカは」
「あァ……? テメェには関係ねぇだろ」
ドン、とテーブルに大きさの異なるジョッキを私は置く。持ち運んで痺れた手首を擦っていると……『アイツ』の姉がくすくすと笑っていた。……何がおかしいんだよ。
「もし良かったら~、斑鳩さんも私たちと相席しませんか~?」
「……ハァ?」
「千雪も、それでどう~?」
「えっと……どうかな、ルカちゃん?」
"七草姉"も千雪も、私を見つめてコクコクと同意を求めるように頷く。なんだか二人とも全く違う思惑がありそうで、そして『絶対に断るなよ』と懇願するような目だった。
「ん……千雪がいいなら……私は別に」
「わぁ……じゃ、私はプロデューサーさんの隣へ……」
「え~? 千雪は私の隣でしょ~?」
「……いつも隣同士なんだから、たまには対面でもいいじゃない」
「え~。私は千雪が隣で、プロデューサーさんの隣は斑鳩さんがいいかな~」
この二人……仲が良いのか悪いのかわからない。笑顔で牽制し合ってないか?
「ははっ、なら千雪たちがいた席に俺が移動して……ほら、女性同士の方が」
「……何を言ってるんですか?」
「……プロデューサーさんって面白いですね~」
ほんの一瞬、『それはない』と言わんばかりに二人の笑顔が消え失せる。"コイツ"自身も空気を察知したのか、黙って座り直してしまう。七草姉も千雪も……じゃれあってるように見えて、ほのかな殺気を滲ませながらお互いを邪魔しているようで、このままでは埒が明かなそうだ。
「ルカ……隣に座ってくれないか」
「……」
「頼む。わりと本気のお願いだ」
「……貸し一つ」
「わかった、助かるよ」
私はわざと乱暴に椅子を引き、距離を空ける。私が座ることで目の前の二人も"一応"は腑に落ちたようだ。
「千雪も斑鳩さんも交えたことですし、乾杯し直しましょうか~」
「それもそうですね。お、千雪も大ジョッキなのか」
「ふふっ、あまり強くないですけど……」
机上にあるジョッキ、私以外は全員『大』って……おいおい、あまり強くない"やつ"が頼むサイズじゃねぇだろ。
「あっ、そうだ……折角だから『乾杯ゲーム』しませんか?」
千雪が説明するところ、『乾杯ゲーム』とは『乾杯』の発声を合図に全員が『ジョッキの中身を一気に飲み干し』一番遅い人が『おかわり分を同様に一気に飲み干す』とか……笑顔で大学生みたいなノリを嬉々として提案し始めた。隣に座る七草姉も妙に乗り気な素振りで頷く。
「えっと……ルカは無理しなくてもいいぞ」
「……あァ? 別に……やれるっての」
「ルカちゃんは中ジョッキで……プロデューサーさんと私たちは大ジョッキで良いですよね?」
「お、おう。はづきさんもそれで」
「大丈夫ですよ~。ふふっ、頑張らなきゃ~」
4杯のジョッキが『乾杯』の掛け声と共にカランと鳴る。すぐさま喉へ流し込むものの、正直私はあまり炭酸系は得意じゃない。半分程飲んだ辺りで、目の前の様子を伺うと、テーブルに2杯のジョッキがほぼ同時に置かれる。
「ふふっ。一番~」
「わぁ……はづき本気じゃない?」
「今日は体調が良いみたい。千雪だって、そう変わらないでしょ~?」
「もう、私も今日は体調良いんだけどなー」
おいおい、大ジョッキでその速さって……中身が麦茶でも無理だろ。隣の男も少し引いてるぞ。ジョッキは違えど、私が残り半分……コイツの残りは1/3ぐらいだった。
「頑張れ~、ルカちゃん!」
「斑鳩さん、もうちょっとですよ~!」
けろっとした表情の二人から声援を受けるものの、これ以上速く飲めそうにない。チラリと隣に視線を向けた際に、目が合う。まるで、お互いに相手のジョッキの残量を確認するように。
一瞬、奴がジョッキを傾ける手を止めたのを私は見逃さなかった。あとちょっと……もうとにかく口に含めてしまえば――
「わぁ、ルカちゃんの勝ち!」
「斑鳩さん、凄いです~!」
「…………っぷ」
「……ははっ、駄目だったか」
わざとらしく悔しがるような素振りで、頭を掻いて奴は笑う。
「プロデューサーさんの追加分、一緒に頼んでおきますね~」
「はづき、私も一緒に……ルカちゃんはどうする?」
「……烏龍ハイ」
「……千雪、シャンディガフの大ジョッキあるみたいよ~?」
「わぁ、珍しい……プロデューサーさんも他にどうです?」
「出来れば……ビール系以外で」
結局、運ばれてきた追加の大ジョッキを隣の男は一気に流し込み、赤ら顔で首をもたげだした。それに比べて目の前の二人は赤くなるどころか、事務所にいる時と様子が1ミリも変わってない……本当に同じやつを飲んでるのか疑問符がつく。
「二人とも、もう一回『乾杯ゲーム』やります~?」
「「……もういい(です)」」
~~~~~
プロデューサー
駄目だ……頭がクラクラしてきた。もともとそこまで弱くはないが、かといって強い方でもなく、世間的に普通の部類だと思っていた。仕事柄、取引先との接待で多少飲むことはあっても『一気飲み』の連荘なんて学生以来で……そして体調が万全じゃないかもしれない。空っぽな胃に大ジョッキ三杯……ビールを2.5リットル近く短時間で流し込めば、誰しもこうなってしかるべきだろう。目の前でケロッとした様子でジョッキを空にし続ける二人を除いて。あれ、ついさっき烏龍茶……頼んだよな。一応、合間に挟んでおくか。
「……っ! おい!」
「え?」
「それ、私の烏龍ハイだろが」
「あ……道理でアルコールの味がするのか」
「は? なに冷静にぬかしてんだ」
「えと……悪い。ルカのは新しく注文しておくから」
「な・ん・で……続きを飲もうとしてんだ? グラス置けよ」
「へ?」
あぁ、飲みかけ……『間接キス』か……マズい、少し冷静にならないと。
「すまん。注文を……あ」
携帯の充電が切れたのか、画面が暗転したままで自分の顔しか映らない。
「ふふっ。代わりに注文しておきましょうか~?」
「あ、ありがとうございます。まずはルカの分に……あとソフトドリ……」
「『芹沢さん』で宜しいですか~?」
「はづき……『渋谷の次』がいいんじゃない?」
二人の言葉が属座に理解出来ず、少し間を空けてから、ビールの銘柄を指していることに気付く。注文をお願いする手前、なんとなくノンアルを頼みづらい雰囲気を醸し出されてしまっていることも。
「あの、ビールじゃなく……せめて、ルカと同じ烏龍ハイとかに」
「ふふっ。この『MEGA』サイズとか……」
想像しただけで、胃が締め付けられるのを感じ、俺は慌てて立ち上がる。
「っぷ……『ノーマル』でお願いします。すいません、ちょっとトイレに……」
俺は一目散に近場のトイレへと駆け込んだものの、運悪く個室は全て埋まっていた。ギリギリこみ上げてきた"ナニカ"を飲みこめたのは不幸中の幸いかもしれない。仕方なく、洗面台の水で顔を洗っていると、ぽんぽんと肩を叩かれた。
「……大丈夫ですか? あれ、はづきさんのお連れの方……ですよね?」
「あぁ……入口の時の」
鏡越しに、ロッカーの鍵を渡してくれたスタッフさんと視線が合う。
「その様子じゃ、結構飲まれたんですね」
「……恥ずかしながら」
「いやー、はづきさん強いでしょ。酔っぱらった姿なんて見たことないですよ」
「え、そうなんですか?」
「はい。去年とかも結構な量を飲んでまして。いっそのことビールサーバーを隣に設置したほうが早いって……スタッフの間では伝説になってたり」
「……ははっ」
「一応、今年は専用の樽を用意してるので、じゃんじゃん飲んでもらって大丈夫ですよ」
「……」
「……ははは。冗談ですよ、ほんの冗談」
「すごく……笑えます」
冗談でも笑える気がしない。そして、あながち本当ではないかと勘繰ってしまう。
「あ、そうそう。最近、283プロに移籍した斑鳩ルカってご存知ですか?」
「……多少は」
「会場に来てるみたいで、はづきさんとよく飲みに来られるアイドルの子と」
「……はぁ」
「いやね、ここだけの話なんですが……あそこのステージで一曲披露してもらえないか、はづきさんに交渉したいなと思いまして」
「……え?」
「彼氏さんからも、それとなく伝えてもらえたら嬉しいんですよね。あ、勿論、只ではなく……」
「出演料は飲食代として」「勿論、強制ではなく」「曲は何でもいいので」
トイレから出て、ふらつく足取りの中、俺の頭ではスタッフの男性の言葉がぐるぐると駆け巡っていく。非公式ながら急な仕事依頼だけれども……良し悪しを判断する前に確認することが多そうだなと。
「ルカと千雪の、二人で……か」
伝えるべきか否か、一体どうしたものか。
―
――
―――
「あ、お帰りなさい。プロデューサーさん……大丈夫ですか~?」
「気持ち悪いなら、無理なさらずに……」
戻ってきた俺の表情が暗かったせいか、対面の二人は心配そうに声を掛けてくる。
「あ、大丈夫です……ちょっと、ルカと千雪に話があって」
「……あァ?」
「私ですか?」
二人は怪訝そうな表情で俺へ視線を向けた。深呼吸を一つ、適切な表現を選んで、先程のスタッフのお願い事を伝えていく。
「……ということなんだが……勿論、強制ではないよ」
「…………ふーん」
「えっと…………」
二人共に考えこむのも理解出来る。急遽なオファーに事前準備無しのぶっつけ本番はリスクが大きいことは俺自身も承知の上だ。もし、本人たちがやりたくないのであれば、無理に押し付ける必要は一切無いということも。
「すいません……プロデューサーさん。私が誘ったばかりに」
はづきさんが申し訳なさそうな表情で俯いてしまう。
「あ、そんな……というか俺から誘ったような……?」
「プロデューサーさん……そういうところですよ~」
「……そういうところ?」
「ふふっ」
はづきさんがくすっと笑みを浮かべる中、俺の隣に座った彼女が口を開く。
「まぁ……私は別に構わないけど」
「ルカ……本当にいいのか?」
「そこまで飲んでなけりゃ……他に仕事も無ぇし……本音はステージに立たせたいんだろ?」
「それは……」
「チッ……どっちでもいいよ。やらせてぇなら……やったってさ」
「……うん。私もやれます、プロデューサーさん」
「千雪も……大丈夫か?」
「ふふっ、まだまだ序の口です。それに『ルカちゃんと二人』で出てほしいオファーなんですよね?」
「それは……そうだが」
「アルストロメリアではなく、桑山千雪としてなら断る理由なんて特に無いです。一緒に頑張りましょ、ルカちゃん」
「ハッ……だとよ」
二人は揃ってグラスを持ち上げ、笑みを浮かべる。さっきまでモヤモヤしていた俺の心境は、ただの杞憂に過ぎなかったようだ。
「千雪と私の二人で……歌える曲っつーと……」
「そうね。アルストロメリアだと三人だから……やっぱり」
ジョッキを持たない空いた手で、二人は同時に口元に人差し指を立てる。
「「シーズ」」
~~~~~
俺はこめかみを響かせる痛みを感じて、咄嗟に手で押さえる。ルカと千雪は準備すべく、ステージ裏に向かっていた。飛び入り参加というイレギュラーで急な依頼にも関わらず、快諾した二人の意思を尊重したものの、本当にこれで良かったのか、自信は無い。
「プロデューサーさん。これ……どうぞ~」
はづきさんが、俺の目の前にジョッキを差し出してくる。
「烏龍ハイ……普通のサイズで頼んでくれたんですか」
「ふふっ。"私"が頼んだんじゃないですよ~」
「え?」
「あと……にちかには私から上手く伝えておきますので~。緋田さんにはプロデューサーさんの方からお願いしますね~?」
差し出されたジョッキを、ほんの少し口に含むと……アルコールの味はしない。普通の烏龍茶だった。
「優しいんですよ~? あぁ見えて……斑鳩さん」
「ははっ……そうですね」
「ほら、これ……『代わりに曲を使うから』って。もう同じ事務所なのに、わざわざ気を使ってくれたみたいです」
はづきさんの携帯の画面には、ルカからのチェインが映し出されていた。
「やっぱり、アイドル……好きなんですよね。二人とも」
「ふふっ。私たちが、ちゃんと……見守ってあげなくちゃですね~」
「そう……ですね」
「あ、千雪からも……『緋田さんのパートを歌うことになりました』だそうですよ~」
「ということは、ルカが……にちかを?」
はづきさんの携帯画面を覗き込んでいると、前方のステージ照明が七色に光り出す。ステージに立つ司会が『本日限定で特別なゲストを招いている』とマイク越しに叫ぶと、周りのパラソルから続々と人が出てきて、あっという間にステージ前には多くの人波が出来上がっていた。
『皆さん、盛り上がってますかー? 本日のスペシャルゲストは283プロ所属の……この二人だー!』
『こんばんわー、皆さーん! ビール……沢山飲んでますかー?』
『ハッ……オメェら……まだまだ飲めるだろ?』
さすが千雪だ。空のジョッキを持って登場してくるとは。こういう場のニーズをしっかり押さえているというか……観客を盛り上げる感じが上手い。ルカも千雪に合わせてジョッキを持ったまま登場してくるとは、普段の様子からは想像もつかなかった。
『本日お越しになられた皆様だけに、私たちから特別なステージを……』
『一曲だけ披露する……まぁ、アレだ……聴いてくれ』
ステージの端にジョッキを置いた二人は背中合わせに立ち竦む。
スピーカーから、イントロが流れ始めた瞬間。
突如として、二人のアイドルが――ステージに現れた。
輝くスポットライトに照らされながら、キレのある踊りに綺麗な歌声を響かせて。
手を振り上げて盛り上がる観客……会場全体を揺るがしながら、懸命に届かせるように。
『君に酔ってないわ』と歌うルカ、『ふたりでMake it』と歌う千雪を眺めていたら。
「ははっ。素敵ですね……この仕事……」
「……プロデューサーさん? ……あっ」
こめかみを押さえる俺の手の位置は徐々に変わっていく。
まさか、口からではなく……瞳からアルコールが流れ出るとは。
やっぱり飲み過ぎだな。
きっと――そうだ。
~~~~~
はづき
「二人とも……お疲れ様です~」
「ふふっ。ありがとう……あれ、プロデューサーさんは?」
「ちょっとお手洗いに籠ってしまって~」
「ハッ! あんだけ飲んでりゃ……当然だな」
「そうね、少し飲ませすぎちゃったかな……」
本当の理由は……『二人には内緒に』って釘を刺されてるし……私からは体調不良的なニュアンスで伝える外ない。
「……プロデューサーさんが戻ったら、お開きにしましょうか~?」
先程のパフォーマンスの余波で席の近くに、わらわらと人が集まってきていた。複数人のスタッフさんが立ち止まらないように注意を呼び掛けてくれているが、さっさとこの場から退席したほうが無用なトラブルを避けられそうだ。
「はづき、二次会はどうするの?」
「うーん……そうね~」
「……まだ飲むのかよ?」
「ルカちゃんも一緒に飲みましょ! ステージの打ち上げみたいな」
「……ん、まぁ……少しなら」
「でも……千雪も斑鳩さんも明日は大丈夫~?」
「夜からお仕事の打ち合わせだけだから、私は平気かな」
「……夕方にレッスンぐらい」
朝から平常運転のプロデューサーさん以外、スケジュールは問題無さそうだけど……あるとしたら場所だろうか。これから店舗を探すのは手間だし、手っ取り早いのは宅飲みだけども。ただ、私は実家で千雪は寮、斑鳩さんは……独り暮らしだったっけ。
「それなら場所は……どうします~?」
「……私の家はNG」
「わぁ……ルカちゃんの家行きたかったな」
「アンタら二人はまだいいけど……コイツだけは"NG"」
斑鳩さんは無人の席を指差し、頬杖をつく。見知っていても、酔った男性を自宅に招くのに抵抗があるのは、なんとなく理解出来る。
「……まぁ、そうですよね~。となると私と千雪も駄目で……残るは」
私と千雪は、ほぼ同時に無人の席へ視線を送る。でも、はたして首を縦に頷かせられるだろうか。
「は……コイツの家とか……マジで言ってんのか?」
「ルカちゃん……いえ、カミサマ」
「斑鳩さん……いえ、斑鳩様」
「…………?」
「プロデューサーさんにお願い……してもらえないかな?」
「プロデューサーさんのお家で……宅飲みしましょうって~」
「……ハァ!?……なんで私が」
あの性格からして、ステージ直後のアイドルのお願いをプロデューサーさんは、無下に断れないはず……そして最高の『切り札』を斑鳩さんは持っている。
ーーーーー
『ルカ……隣に座ってくれないか』
『……』
『頼む。わりと本気のお願いだ』
『……貸し一つ』
『わかった、助かるよ』
ーーーーー
「……っと、遅くなってすまない。二人とも、お疲れ様」
「いえ、プロデューサーさんもお疲れ様です。ね、"ルカちゃん"?」
「千雪も、"斑鳩さん"も頑張りましたよね~、プロデューサーさん?」
「……っ」
心の中で舌打ちされてそう……だけど、この場でお開きの状況だけは避けたい。その気持ちは私も千雪も同じだ。
「そうだな。千雪は流石だったな! それにルカのパフォーマンスも……最高だったよ!」
「……そうかよ……その」
もじもじと俯きがちの斑鳩さん可愛い……じゃなくて『頑張れ~』って心の中で念じなくちゃ。
「……この後……だけど」
「お、おう」
「……う、打ち上げ……場所……家……その」
「え?」
「……~~~っ家! 貸せよ、オメェのとこ!」
「……え゛?」
「席の"貸し"があったろ? 三人でお前の家に……タクシー呼ぶから、さっさと住所教えろよ」
困惑した表情のプロデューサーさんが、助けを求めて私へ視線を送る。
「は、はづきさん……」
「はい~?」
「いや、自分の家は遠いし……ほら、ここからなら事務所の方が」
「事務所は『緊急メンテナンス』中でして~」
「……は?」
「明日の朝8時頃には終わるかと~」
「すいません。言ってる意味が……」
「ふふっ、大丈夫ですよ~。少しだけ飲んだら"皆で寝ちゃえば"いいですし~」
「いや、ウチは狭いし四人が寝るスペースなんて……」
「はづき……プロデューサーさん固定で、私たちは交代制でいい?」
「ちょっと待ってくれ、千雪……交代制ってどういう状況?」
~~~~~
プロデューサー
やばい、とてつもなく眠い。二日酔いと睡眠不足と過度の疲労で……今朝から起きてるのか寝てるのか分からないギリギリの状態だ。溜まった事務処理を黙々とこなす作業は余計に睡魔を誘う。もう、喉からじゃなく皮膚にカフェインを直接注射してもらいたい程に。だが、事務所内の時計の針は定時まであと少しを指して……どうにか、目の前の仕事を出来る限り終わらせなくては。
「…………おい」
「うわ! ってルカか……驚いたよ」
「チッ……生きてたのかよ」
「ははっ……殆ど死んでるのと大差ないが……ルカは充分休めたか?」
「私は……まぁ。鍵借りるついでに……これ」
彼女は『修理予約券』と印字された紙の控えと『領収書』の2枚を俺の机に置く。
「ん、これは?」
「今朝、千雪と携帯ショップに……画面の修理」
「お、おう。でも、この領収書……俺の名前が書いてあるけど」
その時になって、ふと、あの時のグラスの味を思い出す。
あぁ……そういうことか。
「"借り"は……返すだろ?」
素晴らしい