紅麹サプリの健康被害、見えぬ全体像 小林製薬の公表から2年

 小林製薬の紅麹(べにこうじ)サプリメントによる健康被害を同社が公表してから2年が過ぎた。補償交渉が続いており、いまも不調に悩む人は少なくない。補償の主な対象とされる腎関連疾患以外の深刻な体調異変に苦しむ人もいる。

 ■腎臓以外への影響や、未解明の成分の毒性は?

 小林製薬のウェブサイトによると、3月末時点で900人から被害補償の申請を受け付け、510人が補償対象となり、これまでに310人に対して慰謝料などの支払いが完了した。200人が治療を続けているか、または補償内容を協議中だという。

 同社は、診断書や検査データなどを提出してもらったうえで相応の関連性があると判断すれば他の症状も「広く補償対象にしている」という立場をとるが、補償対象の内訳として公表されているのは「腎関連疾患」のみ。基準も非公表。「腎関連疾患のみ」でない事例は「詳細については回答を差し控える」とする。

 国主導の調査で、紅麹サプリに混入した青カビ由来のプベルル酸が腎障害を引き起こすことが確認され、同社は原因究明に「全面協力」したとするが、「腎関連疾患のみ」として開示している数が、「腎疾患とそれに伴う各症状を含むもの」であること以外の詳細も明らかにしていない。

 小林製薬の公表データによると、受診者数(のべ数)の3割以上が、「腎関連疾患のみ」以外の症状を訴えている。

 紅麹サプリをのんだ人で、医療機関を受診した事例は、4月26日時点で3402件。うち、「腎関連疾患のみ」が2240件。「それ以外」が1162件ある。

 通院(検査入院含む)でみると、2788件中「それ以外」は901件、入院は614件中261件だった。

 プベルル酸が腎臓に障害を引き起こすことが確認されたが、さらなる解明に向けた積極的な動きは、国や小林製薬からは見えてこない。

 小林製薬の姿勢に対して、サプリメントの薬理に詳しい立命館大学の畝山智香子客員研究員は「他の臓器への影響も、未解明の成分の毒性や、ほかのサプリや薬との相互作用なども分析されていない。健康被害の全体像はすべて解明されたわけではない」と指摘する。

 紅麹サプリ被害救済弁護団の菅聡一郎弁護士も腎疾患のみに焦点があたることに懸念を示し、「小林製薬は腎関連疾患以外の情報を公表し、患者の治療に資するために動くべきだ」と話す。

 ■心臓にも不調 会社辞め、晴れぬ日々 50代女性

 50代の女性は、腎機能低下だけではない、深刻な症状を訴える一人だ。

 健康診断を前に2023年12月から紅麹サプリをのみ始めた。前年の健診結果は「すべてA」だが、血液中のLDLコレステロールの値が少し高めなのが気になっていた。

 2カ月分をのみきった頃から、動悸(どうき)や息切れなどに見舞われた。

 マラソンが趣味で、健康には自信があったが、健診結果は「要再検査」。慢性腎臓病に加え、心臓の収縮機能が低くなっていた。主治医の診断は薬物性心筋症の疑い。「サプリ以外に原因が考えられない」と女性に説明したという。

 定期通院し、心臓保護や脂質異常症の薬を服用。抗不安薬や睡眠導入剤も手放せない。小林製薬からは経過を確認する資料をしょっちゅう求められる。

 女性の体調は良くならず、時折、ふっと意識が遠のく。24年の年末、道路で転び頭を打った。昨夏も家の階段から落ちて肩などの骨を折る大けが。けがや体調不良が続き、長く勤めた会社を辞めた。

 小林製薬側は、女性の体調不良について「補償対象になる」と方針を示したが、肩の骨折は「対象外」という。

 家族の弁当を作りたくても朝起きられない。パートの仕事を見つけたが、体力的にぎりぎりだ。ささやかでいい、穏やかな生活が望みだったのに。それなのに。似た症状の人はいないのか。「早く解放されたい。気持ちが晴れやかになりたい」。事件の記憶が風化するなかで、むなしさが募る。(竹石涼子)

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