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kyotonp 京都新聞 2026春割
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 研究への信頼を損ないかねない不正が後を絶たない。

 京都大では、医学や生命科学に関する9本の論文で画像データの捏造(ねつぞう)や改ざんがあった。佛教大では、保健医療技術学部で歩き方と筋肉の活動の関連などを調べた6本の論文について、二重投稿などに当たると認定した。

 論文不正は当事者の責任にとどまらず、所属大学や学会、引用した第三者の研究成果の信用性を揺るがすなど後々にも多大な影響を及ぼす。

 当該大学は当然として、学術界全体の問題とも捉え、背景の検証と再発防止策を講じてもらいたい。

 近年、代表的な不正行為である捏造、改ざん、盗用に次いで目立っているのが、佛大のケースのような二重投稿だ。文部科学省によると、国内では2015年度から23年度にかけて計19件が報告されている。

 二重投稿は、ほぼ同じ研究内容と結論であるのに複数の異なる論文として発表することで、業績のかさ増しになる。自らのキャリアアップのために、学術界のルールを破り、公正な評価や競争を阻害する悪質な行為である。

 研究不正を巡っては、14年に新たな万能細胞として発表された「STAP細胞」の論文に疑義が相次ぎ、捏造と改ざんが認定されて撤回に追い込まれた。

 降圧剤ディオバンの効果を調べる京都府立医科大などの臨床試験の論文でもデータ操作が発覚し、同年には刑事事件に発展した。

 こうした不祥事が社会の耳目を集め、大きな非難にさらされた。にもかかわらず、論文不正が相次ぐ背景には、研究資金の獲得競争が激しさを増していることや、研究者の有期雇用の増加があると指摘されている。

 今年2月、大阪大微生物研究所の元助教の論文に図表計107点の捏造や改ざんが見つかったケースでは、元助教は大半について不正を認めた上で「任期付き教員だったため、次の職探しのためにも望ましいデータを出したかった」と動機を語っている。

 基盤的な経費が削られ、限られた研究資金やポストを奪い合う熾烈(かれつ)な研究環境が不正を誘発していないか。改めて検証することが必要だろう。

 研究者個人に高い倫理観やコンプライアンス順守の精神が求められるのは言うまでもない。大学は学生も含めた研修の強化をはじめ、論文作成に用いたデータやノートの保存管理の指導を徹底せねばなるまい。

 最近では、質の低い論文の学術誌への掲載を手助けし、利益を得ている業者の存在も問題になっている。

 大学や学会は連携し、人工知能(AI)などの技術活用も含め、捏造や二重投稿を防ぐ体制を整えるといった自律的な取り組みを考えるべきだ。