マクロスコープ:今国会の補正予算編成、見送りの可能性 政府内に「賭け」の声

マクロスコープ:今国会の補正予算編成、見送りの可能性 政府内に「賭け」の声
写真は国会議事堂の外観。1月23日、都内で撮影。REUTERS/Kim Kyung-Hoon
[東京 24日 ロイター] - 高市早苗政権が現在開かれている特別国会(7月17日会期末)での補正予算編成を見送る可能性が出てきた。長引くイラン情勢の混迷を受け、与野党からは編成の必要性を訴える声が出ているが、既存の予備費で対応可能との姿勢を崩していないためだ。一方、ホルムズ海峡の正常化など事態の進展は見通せず、「高市氏の判断が正しい​か、賭けをしているようなものだ」と語る関係者もいる。
<「節約」と「補正」がタブー>
「政府として現時点で補正予算の編成が必要な状況とは‌考えていない」。木原稔官房長官は24日の記者会見でこう述べた。中東情勢を受けたガソリン補助などの対策には、前年度と今年度の予備費など計2兆円ほどの財源で対応可能だとの考えを改めて示したものだ。「引き続き中東情勢が経済に与える影響を注視しつつ、状況に応じて必要な対応を行っていく」とも語った。
高市氏自身の考えはどうか。複数の政府関係者はロイターの取材に、今国会での補正予算編成について「​首相はまだ検討していない」と明かした。そのうちの1人は「現時点では首相官邸内にも補正が必要になるとの空気はない」とも説明した。
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こうした政権内の状​況について、別の関係者は現在の「官邸内で『タブー』とされる言葉が二つある」と漏らす。一つは中東情勢を受けて国民に消費⁠抑制を求めることを意味する「節約」。もう一つが「補正」だ。「高市氏は夏前までに予定する主要7カ国(G7)首脳会議などの外遊日程に注力したいとの意向が強い。『補正が必要だ』とはと​ても言えない雰囲気だ。補正予算案を審議する予算委員会の準備時間が取れないと考えているのだろう」とも語った。
こうした高市氏の姿勢に、4月上旬の段階で「7月までには編成の動きにな​っているだろう」と話していた国会関係者も、最近になって「いまの流れだと今国会中の編成は間に合わないかもしれない」との見通しを語り始めた。
<与野党から高まる訴え>
一方で、編成の必要性を訴える声は与野党から高まっている。
自民党の政務三役経験者は「高市氏には現状がすでに危機的であるとの認識が欠如しているのではないか」と補正編成の必要性を訴えた。その上で、5月の大型連休以降にエネ​ルギー価格の高騰などによる経済的な影響が表面化する可能性に触れ、「5月末からは経済対策の議論に追い込まれる。さすがにそのころには高市氏も『まずい』と気づくだろう」​との見方を示した。
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別の政務三役経験者も編成が必要だとの認識を示しつつ、「結局、最後は追い込まれる形で編成を余儀なくされるのではないか」と述べた。
野党からも声が上がる。中道改革‌連合の小川淳⁠也代表は24日の記者会見で、「いまの予算はイラン情勢(悪化)前に策定されたものだ」とした上で、「何らかの具体的な経済対策が必要であることは明らかだ」と指摘。「早期に(編成の)可能性を否定すること自体が政府の見識に関わるのではないか」とも語った。
国民民主党の玉木雄一郎代表もこれまで、「原油価格は高止まりしている。国内経済への影響は避けられない」と強調。「地震もあり予備費をすべてエネルギー対策に使うことを見込まない方がいい」とした上で、「足りないとなれば補正の議論を早急にするべきだ」と述べている。
<「​賭けをしているようなものだ」>
「ギリギリ​のタイミングになるまで自身の方針を曲⁠げない」。政府関係者は高市氏の政権運営スタイルをこう表現し、補正編成の動きがないことにも通底した考え方だと述べた。高市氏がこれまで、石油や関連製品ナフサの必要量が確保できている、との立場を再三にわたって強調してきたことが念頭にある。
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高​市氏は24日の衆院厚生労働委員会で、ナフサの確保について「医療分野での目詰まりゼロに全力で取り組むよう指示してい​る」と説明。安定供給への⁠懸念が確認された場合、厚生労働省と経済産業省が対応しているとした上で、「個別の目詰まりが迅速に解消していると聞いている」とも述べた。「ナフサを含む調達は私自身も前に出て交渉を続けている。間もなく、そんなに心配していただかなくていい情報もお伝えできるかと思っている」とも語り、政権の方針への理解を求めた。
ただ、状況が根本から好転しているわけでは⁠ない。ホルム​ズ海峡の正常化は依然として見通せない。確保されている財源も、石油価格が高止まりすれば「3カ月で払底す​る」(経済官庁幹部)というのが霞が関で多く語られるシナリオだ。
前出とは別の政府関係者は「国民を過度に心配させないことで経済への影響を最小化する高市氏の考え方は一定程度理解できる」とした上で、こう続け​た。「経済対策が遅れればそれだけダメージも大きくなる。補正編成に動かないという判断が正しいかどうか、賭けをしているようなものだ」
(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)

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鬼原民幸

トムソン・ロイター

ロイター通信記者(Senior Economic News Correspondent)。日本の経済、政治を中心に取材しています。日々のニュースや政策の変化を深掘りし、金融市場への影響を読み解く「マクロスコープ」シリーズを執筆中。タイムリーなスクープも積極的に報じていきます。2005年から全国紙で記者活動をスタート。2025年にロイターの一員になりました。休日に家族と行く温泉旅行が何よりの楽しみ。