【社説】衆院の定数 比例のみ大幅削減は民意の多様性を失う

この社説のポイント

自民党日本維新の会が衆院議員の定数を1割削減する法案の再提出へ動き出した
比例区のみ45削減する案が検討されているが、小選挙区の弊害を拡大し、民意の多様性を損なうものだ
●国会の形骸化にもつながりかねない定数削減の強行は許されない

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 1月の衆院解散で中断していた選挙制度をめぐる与野党協議が再開し、自民党と日本維新の会が衆院議員定数の1割削減を改めて主張した。

 維新の強い求めで、連立政権合意に盛り込まれたが、自民が企業・団体献金の廃止をのめないための論点のすり替えが明らかだった。

 国際的に見て、日本の議員定数は多いとは言えず、社説はやみくもな削減は国政に民意を届けるパイプを細らせるだけだと批判してきた。あるべき選挙制度の議論抜きに、巨大与党が「数の力」で押し通すことは許されない。

 与党は昨年の臨時国会に定数削減法案を提出した。与野党の話し合いが1年たってもまとまらなかったら、小選挙区25、比例区20を自動的に削減するという乱暴なものだった。衆院解散で廃案になったが、今度は比例区のみでの45削減が検討されている。

 与党の実務者協議で維新が提案。前回、小選挙区との組み合わせを求めた自民内にも、衆院選の大勝で小選挙区選出の現職議員が増えたことから、比例削減の方がやりやすいとの声があるという。

 今回の衆院選で如実に示されたのが、「民意の集約」を旨とする小選挙区では、議席が極端に偏ることがあるということだ。自民は49.2%の得票率で、86.2%の議席を獲得した。棄権した人を含む全有権者に占める割合は26.9%でしかない。

 比例代表との並立制を採用したのは、小選挙区で生じる大量の死票をカバーし、多様な国民の声を反映するためだ。比例のみ45も削減するのは、制度の趣旨に逆行する。

 与党の議席は、衆院で4分の3を占めるが、もし先の衆院選で比例が45削減されていたら、8割を超えたとの試算もある。国会の行政監視機能をさらに弱めたに違いない。

30以上の地方議会が意見書

 地方から異議申し立ての動きも出ている。与党がめざす定数削減に反対したり、慎重な議論を求めたりする意見書を可決した地方議会は、少なくとも30以上にのぼる。

 「地域の実情を国に届ける国会議員の数が減る」(秋田県議会)。「比例定数の削減をすれば、より大政党が有利になる一方で、多様な民意が国会に届きにくくなる」(北海道網走市議会)。

 高市早苗首相と維新の藤田文武共同代表は会談し、今の特別国会の会期中に実現させる方針を確認した。民主主義の土俵をつくる選挙制度の見直しは、党派を超えた合意が欠かせない。民意の反映をゆがめ、国会の形骸化につながりかねない定数削減の強行は認められない。

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