「タワマン内で違法営業」「明かりがつかない部屋だらけ」…晴海フラッグ「チャイナタウン化」の実態
中国人投資家の買い占めにより「チャイナタウン化」した晴海フラッグ。違法民泊や管理不全といったリスクが噴出し、政府の対策も、国防や居住環境を守るにはいまだ実効性に欠けるのが現状だ。こうした状況に日本がとるべき防衛策はあるのか。不動産事業プロデューサーの牧野知弘が、動画「湾岸タワマンに起きている大異変」で解説した。 地獄を見る…銀行があえて言わない住宅ローンの「やってはいけない」
不動産規制はシンガポールに倣え
──外国人やインバウンドの非居住者による日本の不動産購入について、現状をどう分析されていますか。 牧野 購入制限を設けるべき段階にあると考えます。「お土産マンション」と称し、1戸単位で不動産を購入する外国人は現実に存在します。特定のリスクファクターが表面化すれば投資マーケットは調整局面に入りますが、現在の湾岸エリアも同様に、投資家たちが様子見の状態にあります。 ──中国マネーや海外資本がタワーマンションに集中している背景には、どのような論理が働いているのでしょうか。 牧野 東京のマンションを購入したある中国人投資家によれば、物件そのものの質よりも「そこに中国人がどの程度買っているか」が、なにより重要な指標になっているといいます。彼らには独特の「群れる」傾向があるようです。 晴海フラッグはその典型的な事例といえるでしょう。新築時に中国人が大量に購入し、その環境を嫌った日本人が手放すと、空いた住戸をさらに別の中国人が取得していく。こうしてコミュニティ内での勢力が拡大した結果、待っているのは違法民泊などの「やりたい放題」の状況です。晴海フラッグ内には、特定の住戸で営業する「中華食堂」が存在するという噂まで浮上しています。 ──マンションの専有部内で営業が行われている。 牧野 たとえば「303号室」のような特定の住戸の扉をノックすれば、その室内で食事が取れるという話です。日本では完全に違法な営業形態ですが、民泊を利用する中国人旅行客にとって、同じ棟内に食堂があるのは非常に利便性が高く、「便利であれば問題ない」と受け入れられている。これは晴海フラッグが、既存のルールが通用しない「チャイナタウン化」していく象徴的な兆候といえます。 こういったコミュニティが形成される流れは、もはや避けられないでしょう。これは晴海フラッグに限定された話ではありません。湾岸エリアを含め、昨今は各地で新たな外国人街がではじめています。われわれ日本人も海外では日本人同士で集まるのと同様に、こうした人間の習性とも言える副作用が日本の各地で増えています。 ──政策的な規制が不十分という指摘もあります。 牧野 日本の不動産市場は現在、完全に「フリーマーケット」の状態にありますが、これは必ずしも負の側面ばかりではありません。しかし一方で、自衛隊基地や防衛省の周辺地といった、いわゆる重要土地を外国人が取得する際には国防上の懸念が生じます。これを受けて「重要土地等調査法」が施行されましたが、この法律は周辺を取得した外国人について「調査が可能である」という権限に留まっています。 ──「調査」のみでは実効性に欠けると。 牧野 実害が生じてから調査を開始しても手遅れです。諸外国の事例を見れば、基地周辺や国境離島、原子力発電所といった重要施設については、国家が厳格に管理すべき対象となっています。こうした特定地点については全面的に購入を禁止すべきです。明確な網掛けをおこない、すでにそういった土地を外国人が所有していた場合は国が買い取る、あるいは日本人の所有者が売却を希望する際に買い手が不在であれば国が引き取る。こういった措置をすべきです。 ──GATSなどの国際協定との兼ね合いから、規制は困難との見方もあります。 牧野 外務省や一部の政治家は、1994年の協定違反に抵触するため不可能と主張しますが、それは的外れです。国防上、あるいは安全保障上の重要土地については、規制の留保が可能なので、農地における食料安全保障や森林における国土保全の観点からも、国が厳格なルールを定めて、断固として執行すべきです。 ──民間ベースの一般不動産については、どのような規制が検討されるべきでしょうか。 牧野 私は、外国人を「居住外国人」と「非居住者」というふたつの基準で厳格に分けるべきだと考えます。現在、日本における在留外国人は約395万人に達しており、これは横浜市の人口をもはるかに超える規模です。彼らはいまの日本にとって欠かせない貴重な労働力であると同時に、マンション市場を支える有力な買い手でもあります。 たとえば、IT企業などに勤務する高年収な中国人やインド人の若年層のように、日本に根をおろし、生活基盤を築いている人々は、むしろ尊重しなくてはならない存在です。日本という国を選んで暮らしている彼らを、一括りの「外資」として排除するのではなく、共生していく道を探るべきでしょう。 ──問題の核心は、実需を伴わない「非居住者」による購入にあると。 牧野 問題は、インバウンドツアーで来日し、野菜を購入するかのような感覚で目的もなく「お土産マンション」を購入する外国人です。 彼らは世界各地に何件も不動産を持っており、手に入れた不動産を使用することはありません。メディアで「夜間に明かりが灯らない部屋」と報じられるのは、こうした層の所有物件です。私が視察した物件でも、取得から2年が経っても一度も使用されず、ソファーとベッドが置かれたまま放置されていました。管理人も「オーナーは1度も来ていない」と話しています。 ──物件が放置されることで、どのような実害が生じますか。 牧野 所有の事実そのものを忘れてしまうため、管理費や修繕積立金、固定資産税、さらには不動産取得税までもが未払いとなるケースです。日本の法律上、差し押さえや売却の手続きは可能ですが、現実的には所有者の所在が不明な場合も多い。だからこそ非居住者の購入には一定の制限が必要不可欠です。 ──具体的な制限の手法について事例はありますか。 牧野 国際的な協定に反することなく、たとえば取得税をあらかじめ徴収したり、販売価格のなかで調整したりといった「現実的なやり方」はいくらでもあリます。参考にすべきはシンガポールの事例で、外国人が住むための不動産を購入する際、物件価格の「60%」という極めて高い印紙税を課しています。もともとは30%でしたが、2023年に一気に引きあげられました。 その背景にあったのは、コロナ政策に嫌気がさし、資産の逃避先としてシンガポールの不動産を買いあさった中国富裕層の存在です。シンガポール政府の対応は素早く、増税を宣言した翌日からこの税率を適用しました。これで彼らが転売して利益を出すことはできません。 ──日本においても、同様のすみ分けや規制は導入可能でしょうか。 牧野 シンガポールでは、一般国民が居住する公営住宅「フラット」には外国人を一切関与させない一方で、高級な「コンドミニアム」については海外資本との自由な競争を認めるという明確なすみ分けを徹底しています。 もちろん、外資を呼び込んで特定のエリアを活性化させること自体は、経済政策として否定すべきものではありません。しかし、一般の居住マーケットと投資のマーケットが混ざり合ってしまうと、最終的にもっとも不利益をこうむるのは、そこで日々の生活を営む一般市民です。 不動産価格が上昇している間は、その恩恵を受けているように思えるので、問題は表面化しません。しかし、いざ価格が下落局面に転じたとき、投資家はすぐに資本を引きあげて逃げられますが、生活の拠点としている一般居住者は、簡単にその場所を離れることができません。バブルを未然にふせぎつつ市民の生活を守り抜く、シンガポールの合理的かつ思い切った規制の手法は、いまの日本が真剣に見習うべきモデルといえるでしょう。(つづく) … 聞き手:藤岡 雅(『週刊現代』記者)
COURRiER Japon