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石油についての基礎知識

昨今のイラン情勢で石油製品への関心が非常に高まっている状況にありますが、「石油とは何か?」の問いに答えられる人はそう多くはないと思います。
この「石油とは何か?」について今回は深掘りをして、基礎的な理解を深めてもらえる内容を書いていきたいと思います。

石油と原油の定義について

まずは石油と言う言葉の定義について、調べてみましょう。
インターネット上で調べると真っ先にヒットするのはwikipediaで下記の様に記載されています。

「石油(英: Petroleum)とは、炭化水素を主成分として、ほかに少量の硫黄・酸素・窒素などさまざまな物質を含む液状の油で、鉱物資源の一種である。地下の油田から採掘後、ガス、水分、異物などを大まかに除去した精製前のものを特に原油(げんゆ)と呼ぶ。」

https://ja.wikipedia.org/wiki/石油

wikipedia

石油と原油はなかなかその定義を明確に分けて話す事は少ないのですが、石油は油井から取られた資源そのもの、原油は石油製品を作るための装置にかけられる状態の原料となったものと分けても良いかもしれません。

日本の原油(石油)輸入を取り巻く状況について

ご存知の通り、日本では原油がほとんど採掘できないため、その大半を輸入に頼っている状況です。
とりわけ中東産の原油が輸入量の90%近くを占めている事から、ホルムズ海峡が封鎖された事により輸入量が激減してしまった状況にあります。

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原油の輸入状況

https://www.enecho.meti.go.jp/about/energytrends/202506/html/s-1-3.html

資源エネルギー庁 エネルギーの動向より

一方で世界の原油の生産量を国別で見てみると、中東の湾岸諸国で生産される原油の量は世界で流通している量の約3割程となっています。(日量3000万バレルほど)
そのうちの約7〜8割がホルムズ海峡を通して輸出されるため、現状世界に供給される量が約2割強ほど減ってしまっている計算となります。

原油の種類について

最近SNSなどでも良く話題になっていますが、原油はその産地によって大きく性質が異なります。
その性質を分ける要素として良く挙げられるものが、API度と硫黄分になります。

API度とは

API度と言う言葉は理系でも石油に関わる仕事をしていなければあまり聞き馴染みのない単位かと思いますが、これは簡単に言うと比重(密度)の事を指します。
細かい計算式は割愛しますが、API度とは、水を10とし、密度が低いほど大きな値になる指標になります。(API度35がおよそ比重で0.85となります)

このAPI度を用いて原油を性質でわけると
•超軽質原油:API 39以上
•軽質原油 :API 34 ~ 39
•中質原油    :API 30 ~ 34
•重質原油    :API 26 ~ 30
•超重質原油:API 26未満
の五種類に分けられます。

硫黄分について

硫黄分はその名の通り、原油に含まれる硫黄化合物の量を示しています。
硫黄分が多い原油をサワー原油、硫黄分が少ない原油をスイート原油と表現し、区分けすることがあり、サワー原油の場合は脱硫プロセスで処理をする工程が重要となります。

日本の輸入している原油について

日本が通常輸入している原油はその大半が中東からの輸入となっています。
最近SNSでは中東産の中質原油から米国産の超軽質原油に切り替えは困難と強く発信される方も多いですが、中東産原油の性状も一様ではなく様々な原油があります。
Xで松尾 豪(@gomatso)氏がまとめてくださった原油種毎の輸入量とそのAPIの比較を見てみると意外な事実がわかります。

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油種別輸入量

https://x.com/gomatsuo/status/2045787473167675897?s=46&t=_WXV4muKCnMH-7uKadH27w

松尾 豪氏のポストより

実際に輸入している原油の構成を確認すると、確かに中東産原油が大半ですが、その中でも突出して多い油種の3つがDAS,Marban,Arab Extra Lightであることがわかります、これらのAPI度は38~40付近であり軽質~超軽質油であることがわかります。
WTIのAPI度も40以上と超軽質ではありますが、日本の製油所で全く受け入れられないわけではないと判断できると思います。
基本的には軽質であるほど硫黄分も下がるため、脱硫装置への懸念はメタルや窒素分などの被毒物質になりますが、これは実際に通油して評価するほかない状況です。

現在の輸入動向

現在ホルムズ海峡が封鎖されてしまっていることで、本来日本が調達していたルートからの輸送が困難な状況となっています。
そのため様々なルートから日本政府、商社、石油元売り等が死力を尽くして原油をかき集めている状況です。
その中でも報道やXの専門家などの情報からわかっている調達された原油・ルートをいくつか紹介します。

北米産原油

北米産原油は最も有名なものはWTIですが、それ以外にもMars原油といわれるメキシコ湾で採掘される中質サワー原油(API:29程度)もあります。
メキシコ湾から喜望峰ルートでVLCCが8隻ほど日本に向かっているという報道もありましたが、その中身すべてがWTIということはないかと思います。
また、北米産原油は運べる量は少なくなりますが、パナマ運河経由でも運べ、こちらのルートのほうが短期間で運べるため、こちらからも数隻パナマックスが日本に向かっているという報道もありました。

中東産原油

中東産原油も大きく2か所ホルムズ海峡を通らずに獲得できるルートがあります。
1つ目はUAEの東岸にあるフジャイラ港、2つめがサウジアラビア西岸の紅海の中にあるヤンブー港になります。
ヤンブー港のある紅海もフーシ派によるテロの危険性から、日本の船籍はあまり利用ができていない状況ですが、STS(Ship To Ship)といわれる、海上引き渡しなどを活用し原油を獲得している例もあります。
またフジャイラ港からの輸入については、Xにて渡邉英徳(@hwtnv)氏が船舶の航路分析をされており今現在で4隻(うちVLCC3隻)が日本に向かっていることをポストされています。

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フジャイラ港からのタンカー

https://x.com/hwtnv/status/2046409836775309581?s=46&t=_WXV4muKCnMH-7uKadH27w

渡邉英徳(@hwtnv)氏のポストより

このようにホルムズ海峡を通らないルートからの中東産原油の獲得も進んでいる状況です。

その他

直近の報道では、政府がメキシコ産の原油の調達を進めていることや、少し前にはINPEX保有の中央アジア産原油などの日本向け輸出などが報道されていました。
私が書くことはできないですが、報道にない範囲でもいくつか通常日本には来ない原油を調達していることも知っていますので、報道されている内容以上に原油は日本に向かってきていると考えます。

終わりに

今、報道や様々な解析からオープンになっているだけでもこれから1か月の間に2500万~3000万バレル以上が日本に到着すると思います。
なぜか報道は一部のタンカーだけを報道したりするので、これだけなのかと感じてしまう部分はあるとおもいますが、日本の政府、商社、石油業界は想像以上に屈強だと感じています。
危機に備えていたからこその猶予期間もありますので、過度に悲観せず、パニックにならずに、落ち着いた行動が重要となりますので、そのための基礎知識としてこのnoteが役に立っていればうれしく思います。

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