「中国より止められないモンスターがいる」小泉悠×辻愛沙子対談(前編)日本の安全保障の現実について激論
ロシアによるウクライナ侵攻、中東情勢の悪化、そして台湾有事への懸念など、世界情勢が混迷を極めている。日本国内でも、2026年度の防衛予算案が史上初めて9兆円を突破するなど、防衛力強化に関する議論がかつてないほど活発化している。 そんな折に出版されたのが、伊藤忠商事元社長で元駐中国大使の丹羽宇一郎氏による最後の著書、『Z世代は戦後初めて銃をとる世代になるかもしれない』だ。戦中・戦後を生き抜いた財界の重鎮からの最後のメッセージは、現代を生きる若い世代の目にはどう映るのか。 【この記事の他の画像を見る】
今回は、ロシアの安全保障政策に精通する東京大学先端科学技術研究センター准教授の小泉悠氏と、クリエイティブディレクターとして若い世代に向けて社会課題の発信を続ける辻愛沙子氏による特別対談をお届けする。 前編では、丹羽氏の著書を起点に、世代間で異なる「戦争へのリアリティ」と、日本が直面する安全保障の現実について二人が語り合った。 ■戦争を知る世代との「越えられない断絶」 辻愛沙子(以下、辻):私は1995年生まれで、ミレニアル世代とZ世代のちょうど狭間のような世代です。『Z世代は戦後初めて銃をとる世代になるかもしれない』を読んでまず感じたのは、世代の話というより「時代」のお話だなということでした。今の日本が置かれた世界情勢の中で、ニュースでは「シェルター」といった耳慣れない言葉が飛び交い、それだけで不安を煽られる人も多いと思います。
小泉悠(以下、小泉):若い世代からすると、急に物騒な言葉が日常に入ってきた感覚があるでしょうね。 辻:そうなんです。集団的自衛権だけでなく、憲法9条や非核三原則といった、戦後80年平和国家として日本が守り続けてきたものを変えようという声を、時の総理が実際に言葉にするような時代です。そうした今の時代背景に対する危機意識という意味で、世代も立場もだいぶ違う丹羽さんの問題意識には、イチZ世代として強くシンクロする部分がありました。