ナフサ不足「このままでは6月に詰む」と公言した識者が真意を明かす 政権が反論や対策アピールしても現状は

2026年4月25日 06時00分 有料会員限定記事
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 中東情勢の悪化で、建築資材や日用品など幅広い製品に使われるナフサの供給が不安視されている。そんな中、資源エネルギー庁の有識者委員を務める「コネクトエネルギー合同会社」の境野春彦氏(57)が、テレビ番組で「このままでは6月に詰む」と発言すると、高市早苗首相がX(旧ツイッター)で「事実誤認」と反論した。政府は国内の必要量が「足りている」とするが、依然として不安の解消までは至っていない。境野氏に発言の真意や政府の対応に対する考えを聞いた。(山田雄之、福岡範行)

◆「石油化学のコメ」とも呼ばれる基礎原料

 「統計の数字に基づく想定を話した。エネルギー資源に対する危機意識を多くの人に持ってほしかった」。「こちら特報部」の取材に境野氏は21日、こう思いを述べた。「原油もナフサも他の地域からの代替調達では賄いきれる量ではない。相当にタイトだ」と現状を語る。

イラン攻撃を受けての日本のエネルギー環境について話す境野春彦氏=東京都千代田区で(松崎浩一撮影)

 世界が消費する約2割の原油がホルムズ海峡を通る。多くのエネルギー資源を輸入に頼る日本は、中東からの原油が輸入量の9割以上を占める。中東情勢が緊迫化する中、米国とイランの協議は難航している。
 ナフサは、原油から精製される石油製品の一つ。「石油化学のコメ」とも呼ばれる基礎原料でペットボトルや衣料、医療器具など身の回りの多くの製品に姿を変え、暮らしを支える。
 境野氏は大学卒業後、石油元売り大手に20年以上勤務し、石油精製の現場を学び、国内の燃料販売の業務などに携わった。2025年に独立し、現在は液化石油ガス(LPG)の取引適正化を推進するための資源エネルギー庁の有識者グループの委員も務める。

◆「燃料」だけでなく「原料」も不足する危機感

 政府統計などによると、国内消費量の約4割を中東から輸入し、国内生産が約4割あるが、原料となる原油の大半が中東からの輸入。計約8割のナフサが中東由来とされる。
 3月以降、ナフサの供給状況を懸念する発信をXで始めた。境野氏は「イランへの攻撃が始まった当初の報道は、ガソリンや軽油など燃料が足りなくなる恐れを伝える内容が多く、原料として『物づくりができなくなる』との危機感が世間に伝わっていないように感じた」と振り返る。
 4月4日放送のTBSテレビの「報道特集」に専門家として出演。経済産業省が示した中東以外からの輸入を倍増させる見通しでは国内需要を賄うことが難しいとして、「間違いなく今の状況が続いたら6月には詰むんですよ、日本。もうホルムズ海峡を通る一択しかない」とコメントした。

◆「いまでは『詰む』という表現では甘かったと思っている」

 これに対し、高市首相は翌5日にXで、番組名は出さなかったが「少なくとも国内需要4カ月分を確保している」などとして、境野氏の発言を「指摘は事実誤認」と断じた。

境野氏の発言を「事実誤認」と批判した高市首相のXの投稿

 その直後から、境野氏のXには「デマをまくな」「詰まなかったらどうするんだ」との意見が100件以上寄せられたという。番組側もXなどで「『需要に供給が追いつかなくなり、日本にとって深刻な影響が出る恐れがある』という趣旨での発言でした。趣旨を適切にお伝えすることができなかった」などと補足する事態となった。
 境野氏は、3月公表の政府統計の国内需要や輸入量、在庫などの数値から「3カ月後に供給が需要を賄えなくなる」と想定し、危機感を訴えるために「6月に詰む」という発言に至ったと説明する。高市氏の「国内需要4カ月分」との発信について「ナフサから分解された基礎化学品以降の『川中製品』の在庫2カ月分をナフサ自体の2カ月分に単純に加えており、正確な表現ではない」と指摘。その上で「いまでは『詰む』という表現では甘かったと思っている。既に現実として現場に不足が生じている」と強調する。

◆政府の説明に反する事態が現場で起きている

 政府は「年明けまで石油の供給を確保できるめどがついた」「(ナフサは)必要な量は確保」と不安を打ち消す発信を続ける。ただ、ナフサを使う現場の企業では製品の新規受注の停止や値上げの動きが広がる。日本塗装工業会は14日、シンナーなど塗装資材の急激な品薄と価格高騰が起きているとして、国土交通省に供給確保を要望。「政府発表と現場のサプライチェーン(供給網)には大きな乖離(かいり)が生じている」とした。

赤沢亮正経済産業相

 だが、赤沢亮正経産相は会見などで供給が不安定な理由を「流通の目詰まり」「供給の偏り」と表現し、「連絡があればただちに解消する」と強調する。
 境野氏は、有機溶剤の不足でユ...

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