2023年4月、投球後によく帽子を飛ばして長髪をなびかせていた今井。同年6月の株主総会で「食事がまずくなる」と批判された(写真:日刊スポーツ)
2023年4月、投球後によく帽子を飛ばして長髪をなびかせていた今井。同年6月の株主総会で「食事がまずくなる」と批判された(写真:日刊スポーツ)

背番号11から希望して48に変更

 今井は決して優等生タイプではない。入団2年目の1月に未成年であるにもかかわらず、所沢市内で喫煙していたことが判明し、5月までユニフォーム着用禁止と対外試合出場停止の処分を科せられた。高橋光成と共に長髪をなびかせて投げる姿が、西武ホールディングスの株主総会で議題に上がり、株主の一人が「見苦しいというか、食事がまずくなる。スポーツ選手としてどうかなと思う」と苦言を呈したことが報じられて大きな反響を呼んだこともあった。

 西武でかつて指導した球団OBが振り返る。

「コーチの助言でも納得しないことには絶対に首を縦に振らない。ただ、わがままかというと違う。野球をうまくなることにどん欲で、向上心の強さが他の投手と違いました。今井を見ていると昭和のプロ野球選手の雰囲気がするんですよね。不器用で誤解されることが多いけど、実は情に厚くて涙もろい」

 情の厚さといえば、22年オフに、慕っていた先輩の武隈祥太(現西武球団スタッフ)の引退セレモニーで号泣し、武隈の背番号48を継承したエピソードが象徴的だ。球団OBが続ける。

「エースナンバーの背番号11からの変更は極めて異例なので、球団フロントも『本当に変えるのか』と驚いていましたが、本人の意思は変わらなかった。周りからは物珍しく見える行動も、彼の中では筋が通っている。近年は精神的にも安定してカッとならず、大人の投球ができるようになった。まだ成長曲線を描いているし、全盛期はこれからですよ」

 平良海馬、隅田知一郎ら多くの後輩に慕われ、1軍で登板経験のない投手にも助言を送る。前出のスポーツ紙記者は「西武の選手に話を聞くと、いろんな投手から今井の名前が出てくる。今井ほど後輩に慕われる選手はなかなかいません。ある若手が『最初は近寄りがたい人かなと思ったけど、すごく優しい。実績がない選手にも分け隔てなく接してくれますし、人間的に尊敬しています』と話していたことが印象的でした」と証言する。

 昨年11月にベルーナドームで開催された西武のファン感謝イベントに参加した際は、ファンに手を振りながら大粒の涙を流していた。ファンにも愛された右腕は大志を抱き、新たなステージに挑む。

(ライター・今川秀悟)

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