海鳴りの島から2

目取真俊のブログです

辺野古沖の事故に関するNHKの誤った報道について

 昨日4月16日は、辺野古沖で不屈と平和丸が事故を起こしてから1か月ということで、メディアが集中的に報道していた。

 その中で、NHKが次のような内容をくり返し報じていた。

 事故を起こした不屈の船長は、普段通っていない所を通っていて、不慣れな場所なので事故を起こしたのではないか。

 これは事実に反する誤った報道である。

 辺野古漁港を出て大浦湾に入るには、現在は二つの通行方法がある。

 一つは長島の間を抜ける方法である。ここは幅が狭く、水深も浅いので、小型の船舶のみが通行可能だ。干潮時には岩で船艇を傷つける危険性があり、船の喫水と水深を計算して通れるかどうかを判断しないといけない。辺野古海域を熟知した慣れた船長でないと通るのはためらうだろう。

 もう一つはリーフの外側を回り、長島の近くに設定された航路を通って入る方法である。ここは緑と赤の航路標識が設置されていて、水深が深い。ガット船や海砂採取運搬船などの大型船舶からタグボートや漁船などの小型船舶も通行している。

 大浦湾の東側(太平洋側)はリーフが発達していて、船が大浦湾を出入りできるのは、長島近くの航路標識の間だけだ。それ以外の場所を通ろうとすると座礁する危険性が高い。

 本当はもう一つ大浦湾に出入りできる場所があった。辺野古崎と長島の間の海峡である。幅が広く水深も小型船舶なら安全に通行できる場所だ。しかし、日本政府・沖縄防衛局は辺野古新基地建設のために臨時制限水域を設け、フロートやオイルフェンスを張り巡らしてそこを通れなくしている。

 一番安全に大浦湾に出入りできる場所を、日本政府・沖縄防衛局が通れなくしているのだ。やむを得ず、辺野古漁港から大浦湾に出入りするには長島の間を抜けるか、リーフの外側を回って航路から入るしかなくなった。これが実情である。

 満潮時には長島の間を通り、干潮時には緑と赤の航路標識の間を抜けてリーフの外側を回り辺野古漁港を行き来する。ここ数年、この航行は日常的に行われていた。不屈の金井船長もこのルートを数えきれないほど航行している。「普段通っていない所」という報道は誤りだ。

 そもそも、このルートを通らないと座礁の危険があるから緑と赤の航路標識が設置されている。辺野古で生まれ育ったお年寄りの話では、敗戦後に米軍がリーフを爆破して航路を広げた、という話も伝わっているという。

 カヌーに乗って航路付近で抗議行動を行い、海保に拘束された際には、ゴムボートに乗せられてリーフの外側を回り、辺野古の松田ぬ浜に運ばれる。事故が発生した海域を通って辺野古に向かうのは、そこが通常のルートだからだ。

 金井船長に限らず、リーフの近くを通るとき船長は、波に気をつけて安全な距離を保つように細心の注意を払う。私も金井船長が操船する不屈や平和丸に乗って、リーフの外側から辺野古漁港を行き来したことは何回もある。外洋を通る際には、海が荒れているときはそもそも出航しない。

 問題は、普段はこれまで安全に航行してきた海域で、なぜ転覆事故が起こったかだ。海保が発表している当日の現場海域の波の高さは0・5メートル、風速は4メートルであり、これはいつもより穏やかな海況である。

 にもかかわらず不屈や平和丸が転覆するほどのうねり、波がなぜ発生したのか。そのことを科学的に説明しようとしている報道は少ない。次の記事はその一つで参考になる。

沖縄県:辺野古沖で女子生徒ら死亡、勢いを保った低い波が押し寄せ転覆か…目視だけでは気付きにくかった可能性 : 読売新聞

 専門家というなら、斎藤氏のように客観的な数値に基づいた定量分析を行うべきだ。しかし、波浪注意報が出ていたことを強調するだけで、現場の実際の波の高さ、風速には触れないで、金井船長が天候を無視したかのような予断を生み出す報道が多すぎる。

 今回の「普段通らない所」という報道も、事実に反した内容で金井船長の判断ミスという予断を与えかねない。事実に基づかない報道は、事故原因の究明を混乱させるだけであり、視聴者に誤った認識を与える。

 報道している記者たちの多くは、辺野古の海、大浦湾についてろくに知らないまま、海保が発表していることを自分たちで検証することなく流しているだけではないか。NHKに限らず、十分な裏付けを取って報道すべきだ。

 事故を起こしたことを反省し、問題点を洗い出していくときにも、事実を踏まえて議論していくことが大事だ。そのことを心がけたい。