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AIを使いこなしても、なぜヒット商品が生まれないのか——伝説的な事例から学ぶ「売れるカタチ」の作り方(セミナー内容まとめ)


今日、東京創業ステーション(Startup Hub Tokyo)でセミナーをやってきた。

120名を超える方が参加され多くの方にご好評いただくことになった。

テーマは「デザイン思考×AI」。起業を考えている人たちに、ひらめきを売れる製品に変えるロードマップをお伝えした。


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せっかくなので、今日話した内容をここにまとめておく。
かなり多くの情報を詰め込んだセミナーだったが、それでも話し足らず、合計で12000文字近くある。

生成AIがあるのに、なぜヒット製品は増えていないのか

まず最初に、参加者のみなさんに投げかけた問いがある。

「生成AIで無限に製品やサービスを大量生産できる今、なぜヒット製品が爆発的に増えていないのか?」

WIPOのデータを見ると、生成AIが登場した2022年前後で特許出願件数のトレンドに変化はほぼ見られない。AIがものづくりを革新しているなら、もっと新しい発明が爆増してもいいはずだ。

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ここに大きなヒントがある。

売れる商品と売れない商品には、本質的な違いがある。

そしてその差を生むのは、AIではなく「ひらめき」だ。

AIはひらめきを殺す?

トロント大学の研究(Kumar et al., 2024)によれば、生成AIへの曝露は、その後の創造的な思考を高めるどころか、独創性の低下と同質化を引き起こす可能性がある。

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電卓を使えば暗算力が落ちるように、AIに思考を丸投げすると、創造性は気づかないうちに弱まっていく。これを「認知的オフローディング」という。

さらに、AIの仕組み自体が問題だ。

生成AIは膨大なデータから「最も確率が高い答え」を選ぶ。つまり統計的な平均値を出す機械だ。80点の正解は得意だが、尖った個性を削ぎ落としてしまう。

一方、一部の人に強烈に刺さる製品やサービスは、統計上の「外れ値」の領域に存在する。

AIが得意な場所と、ヒットが生まれる場所は、真逆にある。



売れる商品は「一次情報」から生まれている

今日のセミナーでは、伝説的な製品・サービスの誕生秘話をいくつか紹介した。

スターバックスは、ハワード・シュルツがマシン買い付けのためにミラノに渡り、町のカフェ文化に衝撃を受けたことから生まれた。

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Wiiは、任天堂の社員が家庭を観察し「ゲーム機があるとリビングの滞在時間が短くなる」という発見から、「家族の絆を深めるゲーム機」というコンセプトに再定義された。

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W世界一優れたゲームに選ばれた任天堂のゼルダの伝説は宮本茂氏が子供の頃洞窟に迷い込んだときの原風景が原点にある。そのためゲーム開発に社員たちは京都の街を歩き回り迷いながら何かを発見する楽しさをフィールドワークした。

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バルミューダのトースターは、社員BBQの土砂降りの雨の中で偶然焼いたパンが絶品だったことから、水蒸気加熱という技術的な発見につながった。


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インビザライン
は、歯科医でもない経営学部の学生が、矯正装置を外しに歯医者に行った待ち時間の「苛立ち」から思いついた。

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マザーハウスのカバンは、創業者山口氏がアジア最貧国と検索して出てきたバングラデッシュに向かい、現地で感じた貧困と価値が見捨てられているレザーやジュートといった天然素材のポテンシャルから着想された。

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これらに共通するのは何か。

  • すべて一次情報(現場の体験)から生まれている

  • 予期していない偶然から生まれている

  • 個人的な強い思い入れがある

売れる商品のひらめきは、机の上からは生まれない。



原始脳とAIは真逆の働きをする


なぜ、現場に出ることがそこまで重要なのか。

人間の脳には、農耕社会以前から持つ「原始脳」の機能がある。衝動的に動き、違和感に反応し、論理で説明できない直感を持つ機能だ。


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クリエイターや天才的な経営者にADHDやASDの特性が多いのは、この原始的な脳の機能が活きているからかもしれない。



そしてこの原始脳は、AIとまったく逆の働きをする。

AIは中央値を取る。原始脳はずれ値に反応する。AIは一次情報を体験できない。原始脳は感情や情熱を持つ。

つまり、AIが苦手な場所を人間がカバーし、人間が苦手な場所をAIがカバーするという役割分担が、この時代の正解だ。

原始脳を目覚めさせる方法は3つある。

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  1. 身体を使って移動する——ロケーションを変えることで脳への刺激が生まれる

    原始時代狩猟採集民は常にロケーションを変えて餌や道具の材料を探し続けた。ロケーションを変えることによる脳への刺激が柔軟な思考を活性化させ、創造性を開く鍵となる可能性が高い。

  2. 同じことを繰り返さない——ルーティーンを壊すことで新しい回路が動き出す
    20%を使う巨大なエネルギー消費機関である脳は休息を好む。ルーティーンを繰り返すことで使わない脳は退化してしまう。狩猟採集民のように常に新しい刺激を求め創意工夫していくことがひらめきを引き起こす。

  3. DMN(ぼーっとする時間)を確保する——散歩中や風呂場でひらめくのはこれが理由

    脳が「何もしていない」と思われる休息中に活発になる神経回路。直感やひらめきの多くはここから生まれる。農耕以前の人類はタスクを抱えておらず常に待機状態であった。
    発明秘話でよく聞く、散歩中や風呂に入るときに閃くという現象と符合する。


3つのサイクル:発見・創造・検証

ここからが本題のロードマップだ。スタンフォード大学のデザイン思考をベースに、AI時代向けにアップデートした「市角メソッド」として今日お伝えした内容をまとめる。


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【発見】人間がやること・AIの使い方

人間がやることは、フィールドワークと偶然のインプット。コントロールの外から情報を得ること。

AIの使い方は「調査員」として活用する。アイデアの仮説の有効性・実現可能性・新規性を検証させる。市場・競合調査、ペルソナの多面的な展開、先行事例のパターン抽出などが効果的だ。

【創造】人間がやること・AIの使い方

事例を見ると、ヒット製品は「一見関係ない別の業界からのアイデア」「異なる背景を持つ人が集まるチーム」から生まれている。


回転寿司はビール工場のベルトコンベアから。

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大阪の人気寿司屋、白石は忙しすぎて職人が次々と辞めていき悩んでいた。ある日仲間といったビール工場を流れるベルトコンベアにビール瓶が乗って運ばれていく光景を目にした瞬間、ひらめいた。カウンターをぐるりと回るコンベアに寿司皿を乗せれば、職人が客に手渡しする手間がなくなる。10年にわたる試行錯誤で回転寿司が生まれた。


FUJIFILMのスキンケアはフィルム技術から。

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FUJIFILMは売上激減した2000年に自社技術を棚卸し。人間の肌とフィルムがそっくりなことに気がつく。フィルムの色褪せ防止技術は、アンチエイジングの技術として生まれ変わった

ももクロはプロレスの「他流試合」概念から。

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プロデューサーの川上アキラ氏が筋金入りのプロレス好きで、プロレスの「他流試合」の概念をそのままアイドルに持ち込んだ。当時のアイドルとしては珍しくロックフェスに出演したり、氣志團などとの対バンを行ったり、経済評論家とトークするなど、いわゆる"他流試合"を重視していた。全日本プロレスに武藤敬司の弟子として登場したり、アイドルファンの少ないイベントにも積極的に参加したことで、従来のアイドルとは異なるファン層を獲得した。

AIの使い方は「ランダムな組み合わせの生産」に徹すること。人間がランダムにキーワードを出そうとしても偏りが出る。AIに異なる業界・商品のキーワードを大量生成させ、それをシャッフルして強制的に組み合わせる。

また、常識を疑うために必須と思われる要素をあえて排除してみる思考法も有効だ。

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ランダムシャッフルの例。女子ウケする味噌煮込みうどんは?
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制限法も有効。常識から外れた商品を作るときにこの発想法をする




【検証】人間がやること・AIの使い方


松下電器(現Panasonic)のテクニクスはオーディオマニアからDJ向けにピボットした。

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1970年、Panasonicのテクニクスはオーディオ愛好家に向けてSL-1200を開発。アメリカに調査に行ったら黒人DJたちがディスクを逆回転したりピッチ調整したり、めちゃめちゃに使っていた。なんやこれは!

もっと使いやすくしたろやないかい!とDJ向けに改良。この瞬間、レコードプレーヤーは世界中で使われる楽器になった。


YouTubeは出会い系サービスとして失敗した後、方向転換した。

Instagramはチェックインアプリからピボットした。

ワークマン女子は厨房用シューズをマタニティシューズとして使っていた女性たちの購買データから生まれた。

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共通点は「顧客の反応を否定せず、ニーズに合わせて潔く方向転換する」ことだ。

まず紙や段ボールで手を動かしてMVPを作る(人間フェーズ)。そのあとAIで試作品やプロモーションツールを大量生産し、高速でマーケットのニーズをテストする(AIフェーズ)。


これが何よりも重要である。



有料部分 実践的プロンプト集

以下は、各種具体的なAIのプロンプトについてまとめた記事である。
8000文字を超える内容になっているが、実際にAIをつかって独創的な商品を開発するときに、利用者の創造性を破壊しないように工夫してみた。

そのままコピペして使って頂ける内容になっているので
興味のある方は利用してみてほしい。


【有料パート】発見・創造・検証フェーズ 実践プロンプト集

⚠️ 使い方の注意:これらのプロンプトは「自分がフィールドワークで感じた仮説」を持った状態で使うこと。AIに最初から考えさせると、平均的な答えしか返ってこない。あくまで「自分のひらめきの検証・拡張ツール」として使う。


🔍 発見フェーズ プロンプト集

1. 市場・競合の構造把握

使いどき: アイデアの仮説が浮かんだ直後。「これって既にある?」「どんな競合がいる?」を整理したいとき。

あなたは市場調査の専門家です。
以下の事業アイデアについて、市場構造を整理してください。

【アイデア】
(例:地方の農家と都市の飲食店をつなぐ食材のマッチングサービス)

以下の観点で分析してください:
1. この市場の既存プレイヤーを「直接競合」「間接競合」「代替手段」の3つに分類
2. 各プレイヤーが解決できていない課題(アンメットニーズ)
3. この市場で差別化できる可能性がある切り口を3〜5個
4. 市場規模の概算(TAM/SAM/SOM)と成長トレンド

回答は表形式と箇条書きを混ぜて、視覚的に整理してください。

壮玄メモ: ここで出てきた「差別化の切り口」をそのまま信じてはいけない。AIが出すのは統計的な平均解。「自分がフィールドで感じた違和感」と照合して、ズレている部分にこそ本当の差別化のヒントがある。


2. ユーザーインタビューの設計

使いどき: 実際に話を聞きに行く前。何を聞けばいいかわからないとき。

あなたは定性調査の専門家です。
以下のターゲットユーザーに対するインタビューガイドを作成してください。

【アイデア】
(例:地方の農家と都市の飲食店をつなぐ食材のマッチングサービス)

【話を聞きたい相手】
(例:都内で小規模飲食店を経営している30〜40代のオーナー)

条件:
- インタビュー時間は約30分を想定
- 誘導尋問にならない「オープンクエスチョン」で設計
- 表面的な意見ではなく「深層にある感情・行動・価値観」を引き出す質問にする
- 序盤(関係構築)→中盤(課題の深掘り)→終盤(理想の状態)の流れで構成
- 各質問に「なぜこれを聞くのか」の意図も添える

壮玄メモ: インタビューで一番大事なのは「予想外の答え」が出た瞬間。AIが設計した質問リストは入口に過ぎない。相手が言いよどんだ瞬間、表情が変わった瞬間——そこに本物のインサイトが隠れている。その瞬間を見逃さないために、スクリプトより相手の顔を見ること。


3. ペルソナの多面的展開

使いどき: 「誰のためのサービスか」を固める前。自分の思い込みを壊したいとき。

あなたは行動心理学に詳しいマーケターです。
以下のサービスを使いそうなユーザーのペルソナを、
できるだけ異なるタイプで5人作成してください。

【サービス】
(例:地方の農家と都市の飲食店をつなぐ食材のマッチングサービス)

各ペルソナに含める情報:
- 名前・年齢・職業・居住地
- このサービスを使うきっかけ(トリガー)
- 解決したい課題と、その課題が生む感情(フラストレーション)
- 現在の代替手段と、それへの不満
- このサービスに期待すること・不安に思うこと
- 一言で表すとどんな人か(キャッチコピー)

条件:
- 性別・年代・職種・利用動機がなるべく異なる5人にすること
- ステレオタイプなペルソナは避け、リアルな人物像にすること

壮玄メモ: 自分でペルソナを作ると、無意識に「当たりに行く」ユーザーを作ってしまう。AIに作らせることで中立なランダム性が生まれる。5人のペルソナを見たとき、「この人のためなら絶対作りたい」と思える1人が見つかれば、それがターゲットの核になる。


4. 先行事例のパターン抽出

使いどき: 自分のアイデアが「どんな成功パターンに近いか」を知りたいとき。車輪の再発明を防ぐため。

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