本塁打急増の「飛ぶ統一球」に新事実 NPBが秘密裏に反発係数の操作を依頼していた

鬼筆のスポ魂

ここまで両リーグ最多の8本塁打を放っている日本ハム・万波中正=2026年4月1日、エスコンフィールド北海道(三浦幸太郎撮影)

開幕から約1カ月が経過したプロ野球のペナントレースで、昨季までとは違った光景が広がっている。それは本塁打の急増だ。23日現在、セ・パ両リーグで132試合を消化して総本塁打数は184本。シーズン換算では2024年の975本、25年の1096本を大きく上回る1196本ペースでアーチが量産されている。監督や選手からは異口同音に「今年のボールは飛ぶ」との声が上がっているが、その違和感の正体が明らかになった。

「できるだけ高い数値に」

ある球団から入手した極秘情報によると、昨年8月4日に行われたプロ野球12球団の実行委員会で、「投高打低傾向が数年来続いているため反発係数の基準値の幅の中で最高値を目指すことを決定し、統一球を製造しているミズノ社に指示する」と決まったという。

さらに昨年11月10日の実行委員会では、日本野球機構(NPB)の中村勝彦事務局長が「ミズノ社で反発係数の範囲内でできるだけ高い数値にとテストしている」と発言。ミズノ社からは「反発係数を高めるために毛糸を強く巻くことでよりボールを硬くする」という報告もあった。同社は反発係数「0・4154」や「0・4194」で複数回テストした実験結果についても12球団の実行委員に伝えている。

中日戦で7号ソロを放つ阪神・森下翔太=2026年4月17日、甲子園球場(泰道光司撮影)

また、今年3月に行われた12球団の会議では「ミズノ社から目標値に近づくように規則の範囲内で毛糸の量を調整した」という報告もあった。「シーズン開幕頃は昨年9月に検査した比較的反発係数の高いボールを使用予定」などとする説明も行われている。

仕様変更で本塁打激減

統一球が導入されたのは11年シーズンで、その反発係数は0・4134~0・4374の範囲内とした。しかし、11年の総本塁打数は前年の1605本から939本に激減。13年6月にはNPBが統一球の仕様を秘密裏に変更していたことが発覚し、大問題になった。その後は反発係数の目標値を0・4134と定めている。

3月の会議で報告された「規則の範囲内での高い数値」は、統一球導入時に定めていた反発係数の範囲内という解釈だろうが、NPBは15年2月1日に「0・4134を目標値にする」と正式に発表している。ミズノ社が実験結果を報告した「0・4154」や「0・4194」は従来の目標値を上回っており、これでは反発係数の変更といわれても仕方ない。

事務局長は否定

プロ野球12球団は飛ばない統一球により、「投手戦ばかりの味気ない試合が増え、球場収入や放映権料にも悪影響を及ぼす」として改善を求めてきた経緯がある。今回の取り組みは12球団の合意に沿った流れで、野球ファンのニーズに応えていることは間違いない。

オリックス戦で本塁打を放った万波中正(左)を迎える日本ハム・新庄剛志監督(中央)=2026年4月5日、エスコンフィールド北海道(三浦幸太郎撮影)

しかし、開幕直後の4月6日に開かれた実行委員会終了後、中村事務局長は「今年のボールは飛ぶのでは?」との報道陣の質問に対し「何か変更しているということはない。飛ばないときは反発係数を変えた方がいいんじゃないかと思われる方もいらっしゃるけど、選手も記録の商売。厳格な検査を行い、定められた基準値の範囲内に収まっている。意図的な仕様変更などは一切ない」と言い切っていた。

つまりノータッチと断言したのだが、近年顕著だった「投高打低」の是正を試みる昨夏からの流れを見ると、反発係数が操作されているとみるのが自然だ。そうであるならば首脳陣や選手に実態を説明し、ファンにも経緯を公表すべきではないか。NPBは秘密裏にボールの反発係数を変え、大問題に発展したかつての教訓を生かさず、また同じ轍(てつ)を踏もうとしている。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て客員特別記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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