“武器輸出解禁”に舵を切った日本 防衛省関係者が語る『本音』と残る懸念
政府は21日、防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」と運用指針を改定した。国産の武器の完成品の輸出を非戦闘目的に限定する「5類型」を撤廃し、戦闘機など殺傷能力のある武器の輸出を原則容認することになる。
政府の狙いはどこにあるのか、何故このタイミングなのか、そして、国産の武器が戦争中の国に輸出される恐れはないのか。様々な懸念の声が聞かれる中、防衛省関係者はどのように見ているのか、ジャーナリスト構二葵が取材した。
◆防衛装備移転三原則とは何か。
まず、政府が今回改定した防衛装備品の輸出ルール「防衛装備移転三原則」について見ていきたい。日本企業が防衛装備品を他国に輸出するには外為法に基づき経済産業大臣の許可が必要となる。2014年の第二次安倍内閣で閣議決定された「防衛装備移転三原則」は、この輸出に係る政府の判断についてのルールである。
防衛装備品は「完成品」か「部品」かで分けられ、さらにそれを作るのが「国産」か「他国との共同開発」か「ライセンス国産」かで分類される。今回の制度改正の前の時点で、「他国と共同開発」した戦闘機や護衛艦などの「完成品」の他、エンジンや翼などの「部品」の輸出は認められていた。
防衛省関係者「イギリスとイタリアとの戦闘機(GCAP)やオーストリアへの新型FFMは『共同開発』として既に輸出が認められているケースでした」
一方で、「国産の完成品」を輸出する場合は、「救難」、「輸送」、「警戒」、「監視」、「掃海」という、戦闘目的ではない5類型に限定されていた。この5類型は、三原則の下にある運用指針に書かれている。今回の改定では、この5類型が撤廃され、殺傷・破壊能力を持つ武器の輸出が原則、容認されることになったのだ。
ただし、「原則」という制限がある。殺傷・破壊能力がある「武器」の輸出は、日本と協定を締結しているアメリカやイギリス、インド、フィリピンなど、17か国に限定されることに加え、戦闘中の国への輸出は許されていない。ただし、「日本の安全保障上の必要性を考慮して特段の事情がある場合」は例外とされている。つまり同盟国アメリカは、戦闘中であっても例外として武器の輸出ができると読むこともできそうだ。
◆今回なぜこのタイミングで改定したのか?
では、なぜこのタイミングで5類型を撤廃することになったのか。防衛省関係者は、日本政府の危機感の表れだと話す。
防衛省関係者「ウクライナとロシアの戦争を日本が見ていた時に、ウクライナの弾不足を目の当たりにしました。今回は、ヨーロッパ諸国がウクライナを支援したため何とか生き残っていますが、そもそも自国の安全保障を考えたときに、自国で弾を作れないと、国を守り切れない、という問題意識を持ちました。傍観者として見ていた日本が自分ごととして捉え、危機感を明確に持ったんです」
また、日本が島国であることを考えると、有事の際に他国からの援助を受けようと思っても、船や飛行機でしか来られず、日本に物資が届けられるまでの間に撃墜される恐れがある。「日本を支援するのはリスク」として誰も駆けつけない恐れも抱いていると指摘した。
防衛省関係者「 自衛隊が使用する弾は、現状自衛隊向けにしか製造していないため、工場は少ない生産ラインを持つに留まっています。国産の武器も海外に輸出できるような体制を組むことで、生産ラインを増やし、有事の際には平時以上に自衛隊に武器を供給できるような余剰生産能力を日本国内で持つことが狙いです」
◆5類型撤廃の狙いは何か?
5類型撤廃の狙いはどこにあるのか?防衛省関係者は、同盟国や同志国と同じ装備品を保有し、生産・維持・整備基盤を共有することにより、お互いに支援しあえる環境を構築することがポイントだと指摘する。
防衛省関係者「有事の際にはミサイル・弾薬を互いに撃ち合う消耗戦になります。ミサイルも撃てば撃つだけ当然無くなり、減る一方。そうした時に、同じタイプのミサイルを日本のみならず同盟国・同志国でも作っていたら、そこから輸入することが可能です。お互いに融通をきかせられる。戦争を継続する能力=継戦能力が上がることが政府としては大事であると認識しています。武器を輸出するとなれば国内の工場ラインが拡張するし、他国が自衛隊と同じ装備品を使うのであれば、いざという時に融通してもらえるかもしれない。これを『相互運用性(インターオペラビリティ)を高める』といいます」
つまり、目的は単なる輸出の拡大ではなく、国内の生産基盤を維持・強化し、いざという時に装備を確保できる体制をつくることにあると指摘した。
◆相次ぐ防衛産業からの日本企業の撤退
政府が今回、5類型の撤廃へと舵を切った背景には、日本の防衛産業が抱える現実がある。
防衛省関係者「そもそも装備品は国が作っているのではなく企業が作ったものを輸出するので、仮に政府が『あの国にミサイルを輸出しろ』と言っても、企業が『作りたくない』『売りたくない』と言えばそれまで。政府が企業活動を強制することはできないため、ある意味、日本の防衛の安全保障も企業に掛かっている状況です。また、防衛産業の撤退が続いているので、政府としては防衛装備品の生産基盤の強化に強い問題意識を持っています」
実際、昨年7月に経団連が出した提言では、以下の通り指摘されている。
現状、わが国の防衛装備移転案件の約8割は自衛隊の装備品の修理等にとどまり、完成品の海外移転といった大型案件は極めて限定的である。(中略)国内における防衛装備品の供給能力は限界に近づいている状況にあるが、こうした中にあっても、将来の需要見通しが不透明なため、予見性が乏しく、新規の設備投資計画が困難になっているという指摘もある。
防衛省関係者「既に「他国との共同開発」という形では販路拡大の目が出てきたので、「国産の完成品」でも規制緩和しようというのが今回の5類型撤廃の話。5類型に限定されていた「国産の完成品」の輸出も、2014年に「防衛装備移転三原則」に改訂してから1件しかありません。日本が攻められた時に自衛隊が戦える装備品を日本企業は本当に供給できるのか?という観点も重要かと思います」
◆戦争している国に日本の武器は輸出されないのか?
しかし、この見直しは、日本を「どこまで戦争に近づけるのか」という問いとも直結する。「戦争中の国に日本製の武器が輸出されるのではないか」という懸念があるからだ。実際、現行の「防衛装備移転三原則」では、「紛争当事国」への輸出は禁止されているが、その定義には曖昧さも残る。
紛争当事国とは、「武力攻撃が発生し、国際の平和及び安全を維持し又は回復するため、国際連合安全保障理事会がとっている措置の対象国」のことを指すと定義されている。他国への侵略を行う国が紛争当事国の対象となるが、自衛権を行使する側は例外とされる。
しかし、ウクライナに侵攻したロシアは自衛権の行使を主張し、パレスチナ自治区ガザやヨルダン川西岸への攻撃を続けるイスラエルも、自衛権の行使を主張している。要するに、「攻撃は、自衛のため」との主張が存在する以上、紛争当事国か否かの線引きと決定は誰がどのようにするのかで変わってくるのではないだろか。
同盟国であるアメリカとの関係も議論の焦点となる。 前述の通り、「武器」の輸出は、日本と協定を締結するアメリカは許されていることに加え、戦闘中の国であっても、日米同盟を結ぶアメリカは例外であるとの見方が強い。イランに攻撃を仕掛けるなど、国際法違反を繰り返すアメリカにも、国産の武器が輸出できることに、多くの懸念の声が聞かれる。
防衛省関係者「皆さんが懸念する、『イランに自分から仕掛けていったアメリカに武器を売るってことは、日本も戦争に加担するってことだよな」という点はその通りだと思います。 そうした懸念の声は厳然としてありますし、特にアメリカが常に『正義側』とは限らないという見方も広がっています。目的は生産基盤の強化ですが、『例外』の名の下で米軍支援につながる可能性があるという指摘には、しっかりと向き合うべきだと思います」
最後に、防衛省関係者はこう付け加えた。
「生産基盤の拡充や、継戦能力の確保というのが、本音の部分なんです。 やっぱり日本は日本の防衛のことが最大の関心ですから。他国の紛争に手を出していこうっていう感覚ではない、というのが政府としては率直にあります。 他国の戦争に行けるようにするという感覚でやってる話ではありません」
市民発信メディア8bitNewsで配信するビデオポッドキャスト番組「ブレボダ」から、解説全編をご覧いただけます。
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