妻がキレ続ける本当の理由:「弱いオス認定ループ」という地獄
女性は生来、「弱いオスがムカつく」という、いわゆる負の性欲を持っている。うっかり弱いオスと交尾してしまわないために、魅力の劣ったオスのアプローチに対して、性的に排撃するために進化した感情システムだ。
本来は未婚期、つまり彼氏候補を選ぶフェーズでフル稼働する感情システムだが、結婚した瞬間にアンインストールされるわけではない。夫婦になった後も継続的に働き続ける。
↑ この妻はいま、おそらく夫が「弱いオス」に見えて仕方がない。もちろん彼が医師で高収入で社会的地位が高いことは、理性の領域では理解している。しかしメスが何百万年もかけて進化させてきた「オスの強さ判定装置」は履歴書を読まない。見るのは仕草・態度・振る舞いというノンバーバルなドミナンス信号だ。
その判定装置に照らすと、夫は「弱いオス」に見えてしまう。学歴も年収も全部剥ぎ取られて無人島サバイバルに放り込まれたら真っ先に脱落しそうなタイプの「弱いオス」に見えてしまう。脳の奥で警報が鳴る。
「弱いオス=イヤアアアアアアアアアアアア!」という彼女の情動はもはや止められないのだ。
そんな弱いオスと自分がつがいになっているという状況、一つ屋根の下で暮らしているという状況に対して、本能的に虫唾が走ってしまう。
夫は弱いオスだ。弱いオスはキモい。ムカつくので攻撃したい。殴りたい。
だがヒト社会では殴れない。チンパンジーならムカついた個体を殴るが、ヒトは社会選択圧によって露骨な暴力を抑制してきた/されてきた。そこで進化したのが「規範違反を口実にした攻撃」だ。小さなルール違反を見つけて叱る。怒りの出口としては非常に合理的で、しかも社会的非難を受けにくい。
そういうわけで、妻は「夫がムカつくので攻撃したい」というアグレッシブな感情を、めざとく見つけた
・夜、足音や冷蔵庫の開け閉めがうるさい
・ほかの部屋のエアコンを消さない
という規範違反を理由にして解放した。
そしてこれに対してこの夫は「はい、すみません」と謝罪し、従ってしまった。
<叱る-叱られる> という関係性だと見えにくいが、これはドミナンス(支配)地位の上・下を確定させる儀式である。
チンパンジーのアルファオスは、たまにベータオスをいきなり殴って「ヤキ」を入れることがある。
それに対しベータオスが仕返しをしなければ───大人しく殴られることを受け入れれば───、<支配-従属>の関係を認めたことになり、群れのドミナンス階層が安定する。生物学的に意味のある儀式なのだ。
前述の通り、ヒト社会では地位の低い者をいきなり殴るのは規範違反なので、それが <叱る-叱られる>という形に置き換えられているわけだが、それが生物学的に意味するところは同じなのだ。
妻は夫が弱いオスなのでムカついていた。もちろん生物はふつう、みずからの感情が生じた生物学的理由を知った上で何らかの感情を感じる、ということはなく、ただ感情を感じるだけだ。
この妻にしても「旦那が弱い男に見えるから」という生物学的な理由はうっすらと意識されているか、されていないかというところ。
なんにせよ、妻は夫が弱いオスなのでムカついており、そのムカつきが攻撃行動という形で出力された。
弱い個体に攻撃を加える。
弱い個体は攻撃を受け入れる。
それは生物学的に意味のある儀式。
2個体が支配-従属関係にあるということを両者が認めた。ドミナンス階層における上・下の地位身分が改めて確認されたということになる。
さて「なんとなくイラつく相手を攻撃したくて、規範違反を口実に叱る」という戦略が成立するなら、生活ルールは多いほど都合がいい。ルールが増えれば違反ポイントも増え、攻撃の機会も増える。──そう考えると、家庭内で細かなルールがどんどん増殖していく現象も、案外自然な流れなのかもしれない。
世の中にはこのような「妻が決めた生活ルール」に支配されて苦しんでいる夫は多いようだ;
まごうことなき、〝支配〟の形▲
───さて、本当の問題はここからだ。夫を叱ることによって、妻の怒りは発散されても、その原因が消えていないことにお気づきだろうか?
妻のイライラの理由は、「弱いオスがむかつく」なのである。だから謝罪は効力をなさない。ヒトの謝罪行動とは、「ごめんなさい/ Sorry・・・」という言葉とともに頭を下げたり身を縮こませたりすることで、〈地位の低さ〉をシグナリングするよう進化した行為だからだ。
【Tips: 謝罪の進化】 Q. ヒトはなぜ謝罪を求めるように進化したのか?A. 謝罪によって「コーヒーをこぼしたマヌケは俺ではなくコイツである」という事実がそれを見ている周囲の人々(先史社会では部族のみんなに見られていた)に理解される。暴力や加害行為の被害者はそのままだと=弱い奴、ぶざまな奴、地位の低い奴だが、謝罪にはその強弱地位を逆転させる《ステータス回復効果》があるのだ。
たとえば謝罪の究極形態の一つである「土下座」を見てみよう(↓)。この光景を見たヒトは誰でも、右の個体の方が地位が高く、左の個体はかなり地位が低いということを本能的に"理解" するだろう。謝罪(ごめんなさい) はただではなく、地位という生物学的通貨が支払われている。被害者の地位の回復効果、謝罪者の地位の下落効果をもって、謝罪は生物学的に意味のある行為となる。
夫「ごめんなさい…。。」
「ムカーーーーーー💢💢💢」という妻の怒りはそれでも収まらない。
なぜなら妻は〈夫が弱いオスでムカつく〉という生物学的な原因から夫を攻撃したのに、怒りが攻撃として発散された後も、その〈怒りの原因=夫が弱くてイライラする〉がまるで取り除かれることなく、むしろ増幅されているからだ。
夫(あいつ)が妻(わたし)に従えば従うほど「弱いオス」認定は強化され、さらにムカつく。完全な負のループだ。
ニッポンの家庭では───文化的な伝統だろうか──世界的にみても夫がきわめて弱い立場に置かれているのだが、しかし「弱いオスがムカつく」というメスの遺伝的な性向は文化にかかわらず世界共通であるので、上記の理由による夫婦間不和がきわめて起こりやすい環境にある。
────そこでオレは提案したいのだ。
世の中の夫の皆さんは、ぜひ「強いオス」になって、妻を〝苦しみ〟から解放してあげよう、と。
逆説的なのだが、夫が「ごめんなさい・・・」と下手にでることをやめた途端に夫婦関係が落ち着いた、という話は珍しくない。
実際、「キレる私をやめたい」と苦しんでいた妻のヒステリーや癇癪癖(間欠性爆発性障害(Intermittent Explosive Disorder, IED)が、夫がちゃんとキレ返してマウントをとって叱るようになってから和らいだ、夫が男としての主体性や強さを取り戻したことでむしろイライラが減り妻の苦しみがラクになった、というケースはよくある。
その背景にあるのは生物学的な論理だ。
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