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婚活をして正論の無意味さを知る日:犯罪学者のへっぽこ婚活録その2

割引あり

 最近、Twitterを騒がしている話題がある。とある恋愛リアリティーショーでの男女のやり取りについてだ。(なお、私は当該の番組を一切見ていないので、あくまでSNSで聞きかじった情報だけで語る。恐ろしいまでの野次馬ムーブだが、ここの正確性は主題じゃないのでご容赦願いたい)

 ここで注目されているのは男性側の言い分である。彼は自分が、女性側に「正論」をぶつけてしまうために問題を起こしていると思っている。実際には、ここでの「正論」は石丸伸二的な「正論」に過ぎないので視聴者から散々っぱら叩かれているという様相だ。

 確かに、彼の主張が正しい意味での正論からほど遠いのは事実だ。そこに異論はない。が、ここではあえて、正しい意味での正論でも問題あるよねと言う話をしたい。自分の婚活での経験を踏まえてだ。

 なお、この記事は前回のへっぽこ婚活録の続きとなる。とはいえ、前回は「マッチングアプリにはむいてねぇや」くらいの内容なので、興味がある人は読んで欲しいが今回とは繋がりがない。

社会性Eランク男、正論の無意味さを痛感する

仮交際できました!

 婚活を始めて1か月もしないうちに仮交際に発展した。

 ……うん、いきなりでなんも飲み込めないよね? それに関しては申し訳ないが、仮交際まで進んだ経緯については後で話すので一旦飲み込んで欲しい。そもそも婚活を知らない人は仮交際ってなんだよと思うかもしれないが、その辺の説明も後でするので一旦飲み込んで欲しい。結婚を見据えた交際の前段階で、お見合いの延長みたいなもんだと思ってくれ。

 さて、仮交際をすると週1ペースでデートをするのが推奨される。とはいえ、相手方がこちらの居住地より遠くに住んでいたので (伏線)、2週間に1回くらいのペースで緩やかに交際を進めていた。で、その日は3回目のデートだった。

 結婚相談所におけるデートは通常、最初の2回くらいは食事で済ませるのを薦められる。いきなり長い時間を過ごしてもうまくいかないからだろう。ただ、我々は互いに距離の離れた場所に住んでいたので (伏線) 2回目の時点で既に結構時間をかけてデートしており、2回目のデートはそれなりに良い時間を過ごせたと思っている。向こうもそう思ってくれたから3回目のデートになったのだろう。

 さて、そんな3回目のデートだが、場所はベタに水族館をチョイスした。こんなのは奇をてらわなくていいんだよ戦法だ。向こうも動物が好きなのはわかっていたし。

 ただ、事件はその水族館で起こる。

雑談のネタが正論にぶっ壊される

 えー、水族館ですが、話すことがあんまないです。あと展示を進むペースの調整がむずいです。私は結構早く進んじゃうタイプなのですが、これってどうなんでしょうか? 水族館デートに知見のある人はアドバイスください。

 さておき、会話のネタがない。別に魚を観てるんだから無理に話す必要はないのだが、とはいえ程度というもんはある。そんなおり、我々はタコを展示する水槽にやってきた。真蛸だ。かなり大きく、水槽を目一杯に占めている。

 そのとき、私は何の気なしに思ったことを喋ってみた。

「タコって、話通じそうな目してますよね。ウツボは話通じなさそうですけど」

 それに対する相手の返答はこうだった。(記憶は漠然としているので正確ではないかもしれないが、趣旨は合っている)

「タコって原始的な生き物だから、こちらの言うことは理解しないかもしれない」

 そうだ。その通りだろう。けど、なんかこう……ちがうじゃん!?

 私も心理学者なので、動物の知性や心理については一応の理解がある。……のは前提として、単に雑談のネタとして振っただけなのでマジレスされても困る。ここではあくまで、タコを擬人化したうえでの話を想定していたのに。

 ただ、相手のことを責めてばかりもいられない。同じようなことは私にも前科があるからだ。MBTIとか、血液型とか。

 専門家として、MBTIや血液型性格診断の話を振られたら素直に乗っかれない気持ちはある。ただ、話に出した向こうがMBTIを完全に真に受けているとは限らない。私だって、タコが本当に人の話を理解すると思ってたわけではない。ただの雑談のネタに正論をぶつけて破壊してしまうのは、あんまりにもあんまりだ。

 そもそもコミュニケーションは正論をぶつけあう場面ではない。論文査読ではないのだから。いや、論文査読だって近年は相手を尊重する態度が求められる。だから、正論をぶつければそれでいい場面など、社会にはひとつたりともないのかもしれない。

 コミュニケーションの目的はあくまで、相手との交流にある。自分の正しさを主張すべき場面であってもなお、相手との交流が必要であることは否定できない。ましてや、雑談においては猶更だ。程度問題はあるにせよ、雑談で常に正しいことを言わなければならないわけではない。相手がMBTIのことを振ってきたら、博士号をぐっと箪笥の奥にしまって「私のMBTIは建築家だったよ」と言うべきときもある。

 先に挙げた例でも同様だ。夫婦になるかもしれない男女間で不満があるなら、客観的な事実とか正論はさておいて、不満があること自体は受け止めなければならない。それがどれだけ不合理に感じられたとしても、少なくとも相手にとって不満であることは揺ぎ無いのだ。その問題がどういう解決に落ち着くにせよ、不満であることは認めなければ、相手には話を聞いてもらえなかったという新たな不満が残る。立場が逆なら想像に難くない。

人間って怖いね

 結局、その仮交際の相手とはそのデートが最後になった。別にタコの話でダメになったとかではなく、単純に条件が合わなかったからだ。

 これも結婚相談所の推奨事項だが、3回目のデートくらいから徐々に結婚に関する話を持ち出すことになっている。で、合わなかった条件とはズバリ生活スタイルについてだ。

 相手は仕事の関係で転勤が多く、1か所に留まることはまず不可能だった。これがお互いの距離が遠かった理由だ。伏線回収。定期的に私の居住地の近くに配属されたとしても、そこにずっと入れるわけではない。仕事をやめるつもりもなさそうだった。

 一方、私はどうせ結婚するなら一緒に暮らしたいと思っていた。というか、今回の経験を踏まえてそう思うようになったと言っていい。最初は長年のひとり暮らしをやめて他人と同居することにビビっており、別に別居婚でもいいのではという思いもあった。だが、関係性を構築するコストを払っているのに別居というのは意味がないのではという考えが出てきた。コストだけ払って実態はほとんどひとり暮らしと変わらないなら、別に独身でいいじゃんと思ってしまう。

 結婚相談所ではお見合いの時点である程度は結婚観がわかるが、細かいところまですり合わせるわけではない。今回でいえば、私はプロフィールの記述から、相手がすぐには無理だけどいずれは一緒に住めるようになると考えていると思ったのだが、そうではなかったようだ。

 条件が合わないとなれば、もはやデートがうまくいくかどうかは関係がない。仕事とそれに伴う居住エリアという物理的な障壁はお互いの考え方次第ではどうにもならず、これ以上仮交際を続ける意味は薄いと判断し交際を打ち切ることになった。

 ただ、怖いなと思うのは、3回目のデート中にそのことが発覚してから、私の中で相手に対する評価がみるみる変わっていったということだ。タコのエピソードからも察せられるように、相手はいささかそっけないところのある人だった。とはいえ、別にそれまでは「そういう人なんだな」程度にしか受け止めていなかったし、だから少なくとも3回目まではデートが続いたのだった。

 が、「条件が合わないかぁ」となった途端、そのそっけないところが妙に不満に感じるようになった。別に、この間に相手の対応が変わったわけではないし、タコのエピソードの事実関係にも変わりがない。なのに状況が変わっただけで、私は「もうちょっと親身に話してくれてもいいのに」と思うようになっていた。

 先に正論が無意味であることを論じたが、そういう意味では人間に対する評価も同様だ。ここでは、相手の評価の根幹になるはずの事実関係が何ら意味を持っていない。相手の言動は変わっていないのに、自分の状況が変わっただけで評価が変わっている。人間に対する評価という点でもまた、正論には何の意味もない。

 そして、婚活というのはこの不条理に立ち向かわなければならない営みであることにも気づいた。年収やら仕事やら学歴やら年齢やら、結婚相手にまとわりつく事実関係は無数にある。が、それらの事実関係がいかに優れていようとも選ばれないことはある。客観的には劣っている人間が選ばれることもある。お見合いの結果として仮交際を断られたとしても、その理由を相手は明示してくれないしそうする義理もない。

 そう考えると、婚活は就活をさらに理不尽にしたものを延々と繰り返すようなものだ。大丈夫かなぁ……。

婚活、本格始動!

入会しよう

 さて、順番が前後したが、ここから婚活始動編となる。前回までにマッチングアプリを経験し、やっぱ婚活の方が向いていると分かってからの動きだ。

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