今井達也、初勝利に見えた「MLBで勝つ形」
日本時間4月5日、アストロズの今井達也は敵地アスレチックス戦で5回2/3を3安打3四球無失点、9奪三振。チームの11-0勝利を呼び込み、メジャー初勝利を挙げた。数字だけでも鮮烈だが、この登板の価値は、デビュー戦で露呈した課題をわずか1登板でかなり実戦的に修正してきた点にある。前回のメジャーデビューは2回2/3で4失点、4四球で、本人も試合後に「久しぶりに緊張した」「力任せに投げてしまった」と振り返っていた。
今回の投球を一言でいえば、「球威の誇示」ではなく「武器の整理」だった。MLB公式の集計では94球中58球がストライクで、40スイングに対して18個の空振りを奪った。配球の中心はスライダー43球とフォーシーム42球。Savantでもこの試合は4球種が記録され、球速帯は74.9〜96.1マイルに広がっている。多彩さを見せようとしたというより、自分の最も強い2球種を前面に出し、少数のスプリットとカーブで視線とタイミングだけをずらす設計だった。
その中核にあったのは、やはりスライダーだ。今井自身は、同じ握りでも毎球まったく同じ変化にはならず、手首の角度や回転軸のわずかなズレで、外へ逃げる球にも、縦に落ちる球にも、食い込む球にもなると説明している。本人の認識ではその球はジャイロ回転系で、いわゆる横滑りのスイーパーとは別物だ。打者から見れば「同じ球種なのに終点が読みにくい」わけで、この不規則さがMLB打者相手にも通用した。日本で“魔球”扱いされてきた理由が、この登板ではそのまま結果に直結した。
試合の流れを決めたのも、その決め球の明確さだった。初回は先頭打者に安打を許しながら、三振、三振、さらに盗塁死が重なる形で無失点に切り抜けた。3回2死一、二塁では、開幕から本塁打を量産していたシェイ・ラングリアーズをスライダーで空振り三振。さらに6回のラングリアーズへの三振も86.5マイルのスライダーだった。追い込んでから何で仕留めるかがはっきりしていたからこそ、アスレチックス打線は最後まで待ち方を定めにくかった。
もう一つ見逃せないのは、力感のコントロールだ。デビュー戦の最速は97.6マイルだったが、今回は96.1マイル。それでも内容は今回の方が明らかに良かった。今井はデビュー戦後、緊張で力任せになったこと、マウンドへの適応、そしてスプリットやチェンジアップの精度を課題に挙げていた。ここから言えるのは、少なくとも4月5日の今井は「もっと強く投げる」より「再現性を上げて、自分の球を同じ見え方で出し続ける」方向で成功した、ということだろう。これはデータと本人コメントから導ける推測だが、MLB適応の初期段階としてはかなり賢い勝ち方だった。
もちろん、課題が消えたわけではない。6回2死から連続四球を出して降板しており、イニングの締め方や球数が増えた場面での制球には、まだ揺れがある。ただ、それを差し引いてもこの日の価値は大きい。今井の強みは、球種の多さそのものではなく、主力2球種だけで打者の予測を壊せることにある。その形がメジャー2戦目で早くも通用した。4月5日の好投は、単なる初勝利ではない。今井達也がMLBでどう勝つのか、そのプランが初めてはっきり見えた登板だった。