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投球データから明らかになった今井達也だけが操る独特の変化球

スポーツライター/近畿大学非常勤講師/国内旅程管理主任者
オープン戦初登板で各種投球データが明らかになった今井達也投手写真:Imagn/ロイター/アフロ

【遂にベールを脱いだ今井達也投手の投球データ】

 唐突な出だしで恐縮だが、今年のスプリングトレーニングで個人的に注目していたことが、今オフMLB移籍を果たした今井達也投手、岡本和真選手、村上宗隆選手の投球及び打撃データを確認することだった。

 というのも、今シーズンからABSチャレンジシステム(いわゆる「ロボット審判」)が正式導入されることに伴い、オープン戦でも同システムを運用できるよう、オープン戦が実施される全球場にトラッキングシステム「ホークアイ」が設置されたため、オープン戦から公式戦同様のデータがMLB公式サイトで公開されるようになった。

 残念ながらNPBではそうした選手たちの詳細データが公開されていないため、MLB挑戦を表明している選手たちのデータを確認することができなかった。彼らの今後を占う意味でも、このオープン戦で各種データを確認したいと思っていたからだ。

 ちなみに関係者から確認したところでは、日本でもほぼ全12球場でホークアイが設置されているようだ。ただデータ収集や管理は本拠地球場のチームに委ねられており、NPBが統轄して公開できる状態にはなっていないという。

 オープン戦開幕と当時に出場を続けていた岡本選手、村上選手に関しては、すでに各種打撃データをチェックさせてもらい、彼らがMLBのパワー系打者に負けない打撃速度を有していることが確認できている。

 そして遂に、現地時間2月26日のメッツ戦で実戦デビューした今井投手の投球データが公開されたのだ。

【投球データだけでは判別しにくい球種】

 まずは選手の各種データを公開しているMLB公式サイト「savant」上で公開されている、メッツ戦で投じた全10球の投球データを見てほしい(下欄掲載の画像参照)。

メッツ戦での今井投手の投球データ(引用元:「savant])
メッツ戦での今井投手の投球データ(引用元:「savant])

 試合後に実施された囲み会見によると、未だMLB公式球、試合運営に慣れておらず、まだまだ調整段階であることを説明している一方で、今回はやや制球面を意識しすぎた面があったと言いながらも10球中2球しかボールを投げておらず、確実にMLB公式球に対応できているようだ。

 それとは別に、投球データをチェックして驚かされたのが、球種の見分けがかなり難しいボールを投げているということだ。サイト上に公開されているデータによれば、この日の今井投手はシンカー、スライダー、スプリッターの3球種を投げたと判断している。ところが試合後の今井投手によれば、実際は真っ直ぐ、スライダー、チェンジアップ、フォークの4球種を投げていた。

 つまり投球データや軌道をチェックしたとしても、彼の球種を判別するのはかなり難しいということを意味している。それは打者からすれば、かなり厄介でしかない。

【打者がかなり翻弄されそうなスライダー】

 まず全10球の回転数を見てほしい。多分1000RPM台がフォークで、2000RPM台のボールは残り3球種だと考えられる。通常の投手なら、これら3球種も違った回転数を示すものだが、今井投手の場合すべて2100~2200RPM台に集中しているのだ。

 例えば、MLBでは今井投手の同様のタイプだと評されている山本由伸投手と比較してみたい。下欄掲載の画像(①及び②)は過去2シーズンの彼の球種別投球データだ。

山本由伸投手の投球データ①(引用元:同上)
山本由伸投手の投球データ①(引用元:同上)

山本由伸投手の投球データ②(引用元:同上)
山本由伸投手の投球データ②(引用元:同上)

 如何だろう。フォーシームの平均回転数が2200RPMに対し、スライダーは2782RPMと明確な違いがある。また他球種に関しても、一定の回転数にまとまっているのが理解できるだろう。

 さらにボールの変化値を見てみると、今井投手の球種は山本投手と比較してみても本当に見分けがつきにくのだ。

 とりあえず水平方向(画像では「HBreak」もしくは「Horizonal Break」と表記)の変化値をチェックしてほしい。通常の投手の場合、速球系の球種フォーシーム、ツーシーム、シンカーなどの速球系の球種はアームサイド(投球腕側)に変化し、カッター、スライダー、スイーパー、カーブなどの球種はグローブサイドに変化するものだ。山本投手の球種もまさにそうした変化をしている。

 ところが今井投手の4球種は、スライダーを含めすべてアームサイドに変化しているのだ。しかも垂直方向(画像では「IVB」もしくは「Vertical Break」と表記)の変化についても、山本投手のスライダーやスイーパーはゼロ付近及びマイナス値になっているのに対し、今井投手の球種はプラス値を示している。こちらのデータでも今井投手の変化球の動きは普通ではないのだ。

 「日本の時から何を投げているか分からないと言われていたので。僕は大きく変化する球種がないので、分かりづらいのは分かりづらいと思っています」

 試合後の今井投手説明する通り、データ上ですら球種が判別しにくいことが今回証明された。ライブBPで投げた際、アストロズ選手から「あんな変化見たことがない」との印象が出ていたのも、これで納得できるのではないだろうか。

 まだまだサンプル数は少ないし、今後さらに今井投手が納得できるボールを投げられるようになれば、これらの投球データが変化していく可能性はある。だが投球データからも判別しにくい球種に加え、今井投手ならではの独特の腕の振り方を考えると、MLBの打者たちでも攻略するのが難しいように思えてならない。

 今後も彼の投球データをチェックしながら、今シーズンの活躍に注目していきたい。

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ありがとうございます。
スポーツライター/近畿大学非常勤講師/国内旅程管理主任者

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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