ぐだ男が並行世界のカルデアに飛んでしまう話
FGO1部、2部冒頭までのネタバレがあります。
サーヴァントの方々はお話に登場しておりません。ご了承ください。
また夜寝れなかったので4時間くらいかけてガリガリ書きました。拙い文章ですがぜひ読んでいただければ幸いです。
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2019/03/16 ルーキーランキング93位、ブックマーク100突破!!!とても嬉しいです、本当に皆様ありがとうございます!
2019/04/04 ブックマーク200突破!本当にありがたいです、皆様ありがとうございます!!!!
2022/11/1 ブックマーク1000突破!本当にありがとうございます これからもFGO皆で叫びながらプレイしましょう
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「先輩、今日も素材回収お疲れ様でした!」
「マシュもお疲れ様!張り切っちゃったお陰でいつもより時間かかっちゃったね」
回収した素材をダンボールいっぱいに詰め、カルデアの廊下を後輩と2人で歩く。
数日前に、私達は力を貸してくれているサーヴァントと共にキャメロットを攻略し、次の人理修復のレイシフトまでつかの間の休息期間を与えられた。レイシフト期間外でも人類最後のマスター、及びカルデアスタッフ達は常に人手が足りない状態の為に休息と言ってもやらなければ行けない事は多い。
今日は朝から水曜日の周回メンバーと素材集めの為に魔獣を狩り、素材を倉庫に保管しに行く所である。「素材は何個あっても足りないからね」とマスターである少女、藤丸立香はいつも口にしている。
倉庫に辿り着き、後輩と2人で素材の数を確認し、順に棚に直していく。竜の逆鱗の備蓄がほぼ底を尽きていて思わず咽び泣きそうになったのを何とか耐える。後輩の前で情けない姿は見せられない、これは明日も周回しなきゃな…
なんて考えていたら、カルデア内に放送が入った。
「マスター、藤丸立香。そしてマシュ。緊急事態が発生した、直ちにメディカルルームへ来てくれ。」
ドクターの声だ。放送の後ろでダヴィンチちゃんや見知ったカルデアスタッフ達の声まで聞こえる。その切羽詰まった放送に私はマシュと顔を見合わせ、
「メディカルルーム?誰か怪我でもしたのかな?でも緊急事態って、私達に関係している事だよね?…とにかく急ごう、マシュ!」
「はいっ、先輩!」
メディカルルームへと駆け出した。
途中ですれ違うサーヴァント達も緊急放送が気になっているのか不安げな面持ちで私達を見送る。
一体、何があったのだろうか?
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一体、何が起こっているのだろうか。
今日は久しぶりに3時間の睡眠が取れ、いつもより幾らかはスッキリした心持ちで立香ちゃん達の座標認識作業、通信やカルデアスタッフ達のメディカルチェック、カルデア内の備品の整理やレイシフト条件の切り替え、その他色々の作業に取り掛かっていた。
睡眠が取れた分頭もよく回るし皆からの【ドクター寝てください圧】が少ない。
そしてカフェインを多めに摂取するために通常の7倍は濃くしてあるコーヒーがいつもより美味しく感じる。これを例えばレオナルドに言ったならば「キミの味覚もとうとうバグったか。その効能しか考えていないようなまるでありとあらゆる色の絵の具を混ぜ込んだようなドス黒い色のコーヒーは出来れば一生味わいたくない物のうちに入るんだけどね?」と嫌味を言われるに違いない。なんて考えていると冷めてきたコーヒーが苦く感じてきた。チラッと視界の端に見えたレオナルドがほら見ろ、と言ったように嘲笑の様な顔を向けてきた。心を読むな、そして世界に認められたその顔での嘲笑は結構心にくるのでやめてくれ!
冷めてきた不味いコーヒーを飲みきり、書類に目を向けようとした瞬間、その時は訪れた。
中央管制官室の真ん中、観測機シバの前に突然少年が落ちてきた。
そう、何も無い空中から突然現れ、そのまま地面へと身体が叩きつけられた所をその場にいたスタッフの半分以上は目にしていた。
「全員シバから即離れろ!!!」
ダヴィンチの声に少年を確認できていなかったスタッフも含めてスタッフ全員が離れた。一瞬の沈黙の後、ざわめき出す。
「敵か?」「でも見る限り意識を失っている?」「アジア系の少年の見た目だ」「突然空中から現れた、カルデアは今出来る限りの防衛魔術を施してある、その結界を破る…と言うよりは、潜り抜けてきた…?高等魔術の類か?」
カルデア内の人や生物の全てを観測している機械が「観測できていない生物が存在しています」とエラー音を響かせる。
レオナルドが臨戦態勢のままゆっくりと少年へと近づき、反応が無いことを確認するとボクに来るように手招きをした。慌てて必要な物を持ってシバの前へと向かう。
「レオナルド、彼の様子は」
「意識は無いが生きてはいるよ。脈は正常だ。ただ、どうやら魔術師らしい。実は貧弱だが魔術回路が流れている。そしてなにより、見てくれ」
「………令呪?」
レオナルドが示した先、横向きになって倒れている少年の右手の甲には令呪があった。つまりはこの少年は何らかのサーヴァントのマスター、という事になる。このカルデアに送られてきたのはその契約しているサーヴァントが?だがサーヴァント反応はカルデア内のサーヴァントしか無く、つまりこの少年は1人でここへ落ちてきたということ。
そして、なにより
「もしかしてこの少年が着てる服って…カルデアの魔術礼装じゃないか?」
ボクの言葉にレオナルドは驚愕の顔を向け、少年の体を仰向けへと動かし確認する。
人理継続保障機関カルデア。そのマスターに送られる魔術礼装。
少年の服は赤黒く染まっており、所々に破れた後や焦げた跡があり元の色は判別できないが、形、少し通った魔力、首元の印がついたチョーカー。立香ちゃんが1番よく好み着ている礼装にとてもよく似ていた。
赤黒い服の質感からこれが血であるということは近づいたら分かったが、少年から出血している様子は無い。だが気を失っていて、顔色も悪い。指先は気持ち黒ずんでいて、…もしや、魔力を酷使しすぎていて足りていない?
「直ちに彼をメディカルルームに!治療が必要だ!__は__と共に応急処置を。どうやら魔力が足りていない。__は観測機関の設備を。僕は立香ちゃん達を呼ぶからその間にーー」
彼をダヴィンチに抱えてもらい運ばせ、その間に指示を出す。
ソロモンが寄越した敵では?という考えも多少なりともあった。だが、
"誰か"の血に染り、戦闘の後が伺える服。
人類最後のマスターと似た形の令呪。
そして何より、少年に対する「彼を今すぐに助けなくては」という焦燥心。
彼が一体誰なのか、何故突然シバの前へ落ちてきたのか。様々な考えが頭をよぎる中、メディカルルームへと急いだ。
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応急処置を施した後、必要なスタッフ以外は定位置へ戻るように言い、清潔な服へと着替えさせてベットへ寝かせる。
ここまで一向に目を覚まさない少年に一抹の不安を覚える、とそこに立香ちゃんとマシュが駆けつけた。
「先輩と私、ただいまメディカルルームへ到着致しました!」
「ドクター!緊急事態って一体なんの、…え、?」
とそこまで言ってベットの少年へと気づき、言葉を無くす。そりゃそうだ、カルデア以外は滅んだ世界で、見知らぬ人がベットで寝ているのだから。
「立香ちゃん、マシュ、倉庫まで行ってたんだろう?遠い中ここまでお疲れ様。緊急ってのはまぁ見てわかる通りそこの少年についてだねぇ。万能で天才のダヴィンチちゃんもこれにはちょっと困惑してるよ」なんて軽い口調でレオナルドが言う。漸く衝撃から復活してマシュが口を開く。
「ダヴィンチちゃん、え…っと、その方は?」
「中央管制官室でいつも通り作業をしていたらね、突然シバの前に現れたんだ。」
「シバの前に!?」
「そう、シバの前に。現れた時には既にこの少年は気を失っていて、魔力欠乏症を起こしていたからメディカルスタッフとロマンと私で応急処置を施したのさ。」
「ではその方は魔術師の方なのですね…その、容態は大丈夫なんでしょうか?」
「ああ、もう大丈夫だよ。今は眠っているだけだ」
「そうですか…」
マシュと立香ちゃんはホッとしたような顔を見せる。見ず知らずの、敵かもしれない相手へ見せる顔ではないが、そこが彼女達の悪い所でもありいい所でもある。彼女達が少年に悪い印象を向けていないようでボクも安心した。…安心した?ああ、何だか少年に親身になりすぎている気がする。少し前に初めて見た子の少年を、何故、
「少し彼について話したいんだが、3人ともいいかい?」
レオナルドが話を切り出した。
ボク、立香ちゃん、マシュはそれぞれ頷いた。それを見て、レオナルドは神妙な面持ちで口を開く。
「…君たちは、この少年を見てどういった感情を抱いた?はい、まずはマシュから!」
「わっ、私からですか!?はい、その、ええと…」
マシュは立香ちゃんの顔を見て、ボクとレオナルドの顔を見て、最後に少年を見つめながら、思った事について話しだす。
「…最初は、カルデアで見た事がない人だととても驚きました。しかしよく観察してみると、まだこの感覚がなんなのかよく掴めませんが…胸のあたりがザワつく感じがします。この人に対して何かをしなければ、してあげなければ、と。…すみません、とても抽象的になってしまいました…」
「いや、いいんだよ。ありがとうマシュ。次は…ロマン、君は?」
ボクに回ってきた。そうだなぁ、と口に出しながら少年へ抱いた感情について考えてみる。
マシュが言っていた「胸がザワつく」といった気持ちはとてもわかる。少年の事について考えようとすると、なにか胸から感情がこみ上げてくるのだ。
焦燥感、彼へ対しての無条件な信頼感、安心感。そして何よりも、
「…罪悪感と責任感、かな。」
「…なるほど。」
一瞬気まずげな空気が流れた。自分でも重めな感想を言ったことは自覚してる。何故自分が見ず知らずの少年にこんな感情を抱くのか全くもって分からない。まるで客観的に自分の感情を見ているかのような気分に陥る。
「立香ちゃんは?君はこの少年をどう思う?」
「私は、」
そう言って立香ちゃんが少年へ視線へやり、
「…親近感と、恐怖感。…恐怖感って言っても彼自体が怖い訳ではないんだけど、なにかが、とても怖い。」
「…うん、ありがとう。そうだね、何となくではあるけど掴めてきたよ」
「本当?」
「ああ。よく聞いてくれ、…最初は少年が魅了等の魔術を駆使していて、私たちが自然と好感を抱き、敵意を持たないようにされている事も考えた。だが、先程治療をしていたメディカルスタッフとロマンを見比べてみて、少年への感情の大きさが一人一人違うと感じた。その中でも特に大きいと感じたのはロマンと、…私だ。そして立香ちゃんとマシュ、私とロマンの4人で話をしてみると、感情の種類も違うときた。
程度は違うものの魅了系統の魔術ならどれも好印象を持つはずだが、立香ちゃんは好印象とまではいかず、ロマンは好印象+憐憫や後悔、といったマイナスの意が含まれているようだね。…ああ、言っていなかったが私は少年に対してロマンと同じような印象を抱いたよ。…魅了系統の魔術ではこうはいかない。強さも種類もバラバラだ。」
魅了などの魔術ではこうはいかない、なら一体…と考えて一つの可能性が思い浮かぶ。彼の服や令呪を見てから少しづつ考えが定まっていくような、パズルのピースが埋まるような、感覚。
「彼は魔術師としても3流以下の魔術回路だ。例え少年以外から少年に対して魔術が施されていたとしても、私が感知しているだろうから、きっと彼はカルデアを陥れる為の刺客では無いだろう。では誰なのか、という問題だけど…少年が目を覚ますまではこればっかりはお預けかなぁ。サーヴァント達もキャスターやアサシンなんかは気づいているだろうけど、立香ちゃんとマシュに状況説明をお願いしてもいいかい?」
「わかった!ダヴィンチちゃん達は?」
「私達はもう少し少年の様子を見てみるよ。」
「ごめんね立香ちゃん、マシュ。宜しくお願いします。」
「任せてくださいドクター。それでは、失礼します。先輩、行きましょう」
こちらをチラッと伺って、立香ちゃんとマシュがメディカルルームから出て行った。…レオナルドがボクだけを残して2人を退出させたのはなにか意味があるのだろう。2人が充分に離れたであろうタイミングでゆっくりと口を開いた。
「…ロマン。この少年は、別の並行世界のカルデアのマスター…と、私は考えているんだが、キミは?」
ああ、やはり。
「…ボクもそう思うよ。立香ちゃんと形の似た令呪、カルデアの魔術礼装。…僕達が彼に対して抱く感情は、立香ちゃんを見る時の感情ととても似ている。」
「ああ。親近感、安心感、信頼感。…罪悪感や後悔と言った感情はここまで強くは抱かないけどね。…並行世界の存在はセイバーのプロトアーサーや宮本武蔵などで確証は得ているけれど、こういった事態が起こるとはね…」
混乱しそうではあるが、やはりそうなのだろう。ではこの少年は何故あんなにも血にまみれて、サーヴァントを1人も連れずに1人でこのカルデアに現れたのか。次はそれを考えなければ…と少年へと顔を向ける、と、
ーーーー青い、まるでよく晴れた日の青空のような、光を宿した目が、こちらを見ていた。
少年が目を覚ましたらしい、レオナルドも気づいたようで言葉を止めた。静寂が流れる。
少年はこちらを目を限界まで見開き、驚愕の顔でこちらを瞬きもせず見つめていた。その様子はまるで息もできません。と言うくらいに驚いていて、目が覚めるとメディカルルームに居て、混乱しているのだろうか?
「おはよう。調子はどうかな?」
と尋ねてみた途端、少年の目から雫が流れ出した。
余りにも大量な涙に、少し戸惑ってしまう。「ええと、どこか痛む場所でもあるかい?」と言うと、首をふって否定した。そして、
「…ドクター、ダヴィンチちゃん。…ああ、なんて幸せな夢なんだろう。なんて、残酷な夢なんだろう。」
と言って、この世の幸を全て詰め込んだかのような、そんな顔でとても綺麗に少年は笑った。
その言葉でボクは察し、理解してしまう。この焦燥感は、罪悪感は、きっと。ボクが自分の役割を果たした世界の マスター で
「ーーーー立香くん?」
名前を間違っていたらどうしようなんて考えもしなかった。ただ、この少年の名前を、声が震えないように、呼んでみたら
「ーーーーなんですか?ドクター」
とまるで当たり前のように答えるものだから、ボクも釣られて1滴、1滴雫が落ちる。
少年の「…ドクター?大丈夫?ダヴィンチちゃんも、そんな顔しないで」という声が聞こえて、レオナルドの微笑みまで崩したか、と頭の端で思った。
ああ、この世界は何故人類最後のマスターにここまで苦行を与えるんだ、と。
死人に合わせるなんて、そんな残酷な事を彼に仕出かしたのか、と。
「夢ではないよ、立香くん。」
というレオナルドの言葉に、ただ一言呆然と「…嘘だよね、」と言って泣き崩れてしまった彼を、どうやって慰めればいいのかボクにはまるで分からなかった。