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【続】「知ってた」/Novel by お水(元:茶々)

【続】「知ってた」

5,746 character(s)11 mins

お久し振りです。
教授の追加された幕間に感化されてちょっとだけ続きを書いちゃいました。
けどパソコンが死にかけているのでだいぶ短いです。
本当はもっと長くするつもりだったんですが、書いていく傍からパソコンが落ちてデータが消えるという……心折られまくられまして……。
パソコン、買います……はい……。

ぐだが鯖を忘れて鯖はぐだを覚えている話は未来の聖杯戦争で書いて、ぐだも鯖も覚えているのはアラフォーぐだで書いたので、今回はぐだが覚えてて鯖が覚えていない話のZeroクロス、の続き。
色々捏造あり、時間軸丸無視、基本やりたい放題。
終局以降の真名バレあり。
相変わらず細かいことは気にしない、なんでも許せる方向け。

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ただいまー、と人がいるかも分からない部屋に声をかけた。
ロンドンから冬木にきて、俺は手軽なビジネスホテルに泊まっている。
場所を選ばなければそこそこ安いところもあるし、あまり目立つこともない。
食事なんかは買ってくるか食べにいけばいい。
ガチャリ、と鍵を閉めて部屋に踏み入ると、おかえり、と返事が返ってきて驚いた。


「ビックリした……ただいま、帰ってきてたんだ」

「少し情報を整理しようと思ってネ」

「情報?」


首を傾げながら俺の召喚したサーヴァント、モリアーティがずっと眺めているホテルの壁に視線を移す。
そこには人物の写真や文字の書かれた紙、地図、それらを結ぶ糸が張り付けられていた。
ポカン、と俺は口を開けてそれを見る。


「うわっ、なにこれ」

「各マスターとそのサーヴァントの情報さ」

「ここ数日いなかったのって、これのためかぁ」

「私の単独行動スキルはこういうときに活かすべきだろう?」


モリアーティの言葉に俺はえっ、と驚いて彼を見た。
すると彼が眉を顰める。


「なんでそこで驚くのカナー?」

「てっきりまた悪巧みでもしてるもんだと……」

「またってなんだね!またって!」

「ははっ、ごめんごめん。まさか真っ当に聖杯戦争を戦うとは思わなくて」


失礼しちゃうネ、と言うモリアーティに笑いながら、俺はベッドに腰掛ける。
買ってきたハンバーガーを袋からだした。
覚えていない、と言われたけど、彼はあまりカルデアにいたときの彼と変わっているとは思えなかった。
それは俺の希望的観測だろうか……。
でも、たまに冷たいのにも気付いている。
目線とか、態度とか、言葉とか、行動とか。
ちょっとだけ、俺の記憶の中の彼とのズレを感じると、酷く胸を締め付けられる。


「真っ当?ははは、いやいや、その判断は早計じゃないかな?」

「え?」


ポテトを食べようとした手が止まる。


「悪巧みだろうが謎解きだろうが慈善活動だろうが、まずは情報収集が基本だからね。私はまずその第一歩を踏み出したにすぎない。これがいい方に向かうか、悪い方に向かうかは、まだまだこれからだヨ」


ニヤリ、と、モリアーティが笑う。
あー、これは絶対既に悪巧みしてる顔……。
でもこの男は基本的にそれを悟らせない。
こう言っている時点でバレたって構わない、バレることも想定済みの悪巧みだろう。
呆れて俺は息を吐く。


「人殺しは駄目だからね」

「ヴィランたる私にそれを言うのかい?」

「うん。人殺しは、駄目。犠牲をだしたくないんだ」

「悪属性のサーヴァントを召喚しておいて可笑しなことを言う子だネー。私の本質は悪だよ、不安に思うのなら令呪でも使って命令すればいいだろう」

「えっ」

「えっ」


俺らは目を見合わせて固まった。
そしてコトリ、と同時に首を傾げる。
モリアーティは俺がなにに驚いているのか分かっていないようだ。


「……令呪ってそうやって使うの?」

「えぇ……?なんのための令呪だと思っていたんだい、キミは」

「いや、ほら、魔力譲渡とか、回復とか」

「できなくはないが、そうやって使うマスターはまずいないだろう」

「え、そうだったんだ」

「そうだったんだ、って、キミねぇ……」


いやぁ、今までカルデアでもそうやって使ったことないからなぁ。
基本は魔力譲渡くらい。
ははは、と頭を掻きながら笑えば、モリアーティは呆れたように息を吐く。


「それで?」

「うん?」

「私に使うかい?それを」


それ、とモリアーティは俺の令呪を宿った右手を指さしてくる。
俺はズゾゾ、とコーラを一口。


「使わないよ」

「何故?」

「何故って……なんとなく、大丈夫かなって」

「はぁ?」


ぐっ、とモリアーティの顔が歪む。


「キミ、お人好しって言われるデショ」

「いや?」

「嘘吐け!」


はぁー、と彼は深い溜め息を吐いて、片手で顔を覆う。
本当に言われた記憶がないだけなんだけどな……。
忘れてるだけかな……?


「……うん、まぁ、その問題は今はおいておこう」

「待って、問題視されるほど?」

「私が調べた限り、此度の聖杯戦争に召喚されたサーヴァントはどれも強力な英霊たちだ」

「スルー」

「黙って聞きたまえ」

「あ、はい」

「私はすっかり大事なことをキミに聞くのを忘れていたよ」


大事なこと?とストローをくわえながら俺は首を傾げる。


「リツカ・フジマル、キミは一体聖杯になにを願うつもりなのかな?」

「え……?」

「ヴィランたる私を召喚したのだ、どんな手段を使ってでも叶えたい願いがあるのではないのかね?」


まぁ、犠牲はだしたくないとは言っていたけれど、とモリアーティは肩を竦める。
彼の言葉に俺は一瞬質問の意図が分からず返答することができなかった。
けれどすぐに理由は分かった。
モリアーティは俺が彼を召喚するための触媒を使って、狙って自分が召喚されたと思っているんだ。
それが本来は普通なんだけど。
悪のカリスマで、犯罪界のナポレオンで、常に悪巧みをしているような、どこまでも悪属性。
そんな自分を召喚したマスターはきっとどんな手段を使ってでも聖杯を手に入れたいのだろうと、そう思うのが普通なんだ。
どんな野心家なのだろうと、きっと俺は見定めされている。
ふっ、と俺は笑った。


「なにも」

「んん?」

「俺に聖杯にかける願いはない。なんで聖杯に選ばれたのかも分からないし、こうやって戦おうとしているのもほとんど成り行き。というかぶっちゃけいまだに戦うか迷ってる。教授が召喚されたのは、多分……偶然」

「偶然だって?」

「触媒を使っての英霊召喚じゃないからね。あ、いや、違うか。俺自身の絆を触媒として使った召喚、が正しい」

「絆が触媒?……ふむ、確かに私の召喚にはいつくか疑問に思う点はあるが……」


だろうね、と俺は笑う。
真っ当な召喚方法で召喚された場合、モリアーティの適正はキャスターだ。
彼がアーチャーなのは特異点だった新宿での件が関係しているからで。
そんなモリアーティと絆を繋いだ俺が唯一、アーチャークラスの彼を召喚できる。
今ここにいるモリアーティは俺にしか召喚できない。


「なるほど、つまりキミは聖杯へ託す願いもなく、戦う理由もなく、それなのに偶然ヴィランの私を召喚したと、そういうわけだね?」

「うん」

「潔い返事だネ……」

「教授がどうしても聖杯が欲しいから戦う!って言うなら俺もちょっとは罪悪感湧くけどさ、そうじゃないでしょ?」

「ほぅ、何故そう思うのかな?」

「あなたにとって聖杯はあくまで計算の一つにすぎない。聖杯の力で叶う願いに興味はなくて、聖杯の力を使って自分の計算の正しさを証明したい」


それが星の破壊だったとしても。
少しだけ目を伏せてから、俺はモリアーティを見上げる。


「そういう人でしょ、教授は」


彼は顎に手を当てて、目を細めて俺を見ていた。
落ちる沈黙に、なんかいたたまれなくなってくる。
余計なことを言い過ぎただろうか……。


「……不思議だね。キミのことは知らないはずなのに、キミのような少年を知っている気がするよ。真っ直ぐな目をして、立ち止まることのできなかった少年をね」

「……………………」


俺はなにも言えなかった。
覚えてないことは悲しいし、寂しい。
けどカルデアから逃げ出した俺がそれを言う資格があるのか?
思い出してほしいなんて言えない、思い出してほしくない。
人理継続の重責から逃げた俺を、みんなは、彼は、彼女は、一体どう思うのだろう……。
どの感情からなのか分からないけど、少しだけ零れそうになる涙を歯を食いしばって堪える。
すっ、と俺は立ち上がってモリアーティの集めてきた情報が張り付けられた壁の傍までいった。


「それより、情報を整理しようよ。どんなマスターがいて、どんなサーヴァントが召喚されているのか、教えてほしいな」

「……おや、戦う気はなかったんじゃないのかい?」

「傷つく人がいるかもしれないのなら、それを黙って見てはいられないだろ」

「……………………」


ふっ、とモリアーティが笑う。
なんでここで笑うのかと、俺は不思議に思って横に立つモリアーティを見た。


「いや、なんでもないよ。では各陣営の情報を整理しよう」

「俺、サーヴァントには詳しいからそれで色々対策もとれると思う」

「素晴らしい!この際何故、という疑問は今は聞かないでおいてあげるヨ」

「ありがたい」


パチリ、とモリアーティにウィンクされたのでそれに笑顔を返す。
改めて壁に張られている写真を見て、俺はぎょっとした。


「騎士王に、征服王に、英雄王まで……えっ!?英雄王!?」


金色の髪に赤い瞳、金の鎧を着た暴君。
俺は目を見開きながら写真の英雄王を見て、モリアーティを見て、また写真を見た。


「なんで……!?」

「んー、そうなのだよ。英雄王ギルガメッシュ、彼はアーチャークラスで間違いない。けれど私もアーチャーだ」


そう……そうなのだ……。
英雄王ギルガメッシュはカルデアにもいたし、だから彼のことはよく分かっている。
この姿はまごうことなき、アーチャークラスの彼だ。


「クラス被り……?そんなことあり得るの?」

「普通はあり得ないネ。そんな聖杯戦争聞いたこともない上に、聖杯からそういうルールや知識も流れてこない」

「じゃぁ、なんで……」

「ちなみに言うと、キャスタークラスのサーヴァントを私はまだ確認していないんだが……もしかして私、実はキャスターだったりしない?」

「いやぁ、教授はちゃんとアーチャーだよ……」


銃火器背負ってたじゃん、と苦笑すると、だよねぇ、と肩を竦められた。
ふむ、とモリアーティは顎に手を当てる。
俺も壁に貼られている情報を改めて見た。
そこには名前や来歴、人となりまで載っているではないか。
よく調べたな……、と俺は感心しながら呟いた。


「……まぁ、この際クラス被りは一旦置いておこう。今の段階ではまだ我々の情報が足りないからね」

「いいのかな、置いておいて……」


この英雄王のマスターの情報を見る限り、どう見ても彼は正当な聖杯戦争の参加者に思える。
英雄王もちゃんとしたアーチャーのサーヴァントだ。
本来アーチャークラスでの現界はありえないサーヴァントと、魔術師でもないマスターである俺の方が、異質なのではないか……?
それとも本当にキャスタークラスを押し退けての参戦なのか?


「話を戻そう。昨夜、遠坂邸にアサシンが侵入し、排除された。これでアサシンは脱落した……と思うかね?」


モリアーティの言葉に、俺は彼を見てから壁の情報を見た。
アサシンの写真を見てから、俺は首を振る。


「思わない」

「その心は?」

「アサシンにしては、行動も戦闘力も普通すぎる。あえて脱落したように演出しているんじゃないかな」

「だが事実、排除した現場を私は見ている。あれは本当に殺されていたが?」

「複数人のアサシン……ハサンには心当たりがある。恐らくその影の一人だ。本体は無事だと思う」


なるほど、とモリアーティはニヤリ、と笑った。


「戦略からの推理ではなく、知識量と経験からの整合性か。キミは実に厄介なマスターだね」

「褒められてる?」

「勿論だとも」


ホントかなぁ、と俺は笑った。
壁にはまだ全ての情報が出揃っているわけではない。
キャスターと、バーサーカー、ランサーもまだ未確認なようだ。


「アサシンが動き出し、それを多くのマスターが確認した。キャスターも私がまだ確認していないだけで召喚はされたのだろう」

「聖杯戦争が動き出したんだね」

「その通り。さて、キミの目的と願いも聞いたことだ、作戦会議といこうか」


うん、と俺は頷いた。


「あ、でも」

「ん?」

「とりあえずご飯食べていい?」


ベッドの方に戻って、すっかり冷たくなったポテトをつまんだ。
モリアーティはふぅ、と息を吐いてどうぞと言いた気に手を向けてくれる。
俺は遠慮なくハンバーガーにかぶりついた。
その日の夜、モリアーティはまた一人出掛けていった。
悪巧み?と聞けば、彼はニヤリと笑うだけだった。


「あれ、絶対なにか企んでるよなぁ……」


ベッドに仰向けになりながら、あの笑顔を見て俺は溜め息を吐く。
右手を上げて、令呪を見た。
カルデアにいたとき以上に手綱を握れている気がしない。
当時も好き勝手されていたけど、今よりも俺に情はあっただろうしなぁ。
作戦会議をしたが、結局無難なものでしかなかった。
まぁ、目的がふわふわしているのでそれはしょうがないのだが……。
俺はまた溜め息を吐いて、身体を起こした。


「ちゃんと話そう」


なにから話せばいいのか、分からないけれど。


* * *


真夜中の港に、2騎のサーヴァントが武器を構えて対峙していた。
片方は2本の槍を持ち、もう片方は見えない武器を持っている。
青い蝶を模した外套を羽織る老紳士は、高見からその2騎の戦いを横目に目的地へと向かう。
セイバーとランサーの高潔な戦いには興味がなかった。
彼はこの場にいるサーヴァントとマスターの全てを把握している。
そんな彼が向かうのはクレーンの上でスナイパーライフルを構える男のところだ。
数メートル背後で実体化し、あえて靴の音を鳴らした。
カツン、という音にライフルを構える男、衛宮切嗣はバッ、と銃口をこちらに向けて振り返った。


「こんばんは、セイバーのマスター」

「………………………………」


衛宮切嗣は無言で老紳士を見る。
その様子に彼は肩を竦め、手を向けた。


「私に敵意はない。今夜は共闘を申し出にきたのだヨ」

「共闘、だと?」


ニヤリ、と老紳士が笑った。

Comments

  • カタツムリ

    続きを期待«٩(*´ ꒳ `*)۶»ワクワク

    Jan 22nd
  • あゆか
    December 24, 2025
  • 素良橋
    October 24, 2025
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