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初めましてから始まる敵対関係【FGO×Fsn】/Novel by お水(元:茶々)

初めましてから始まる敵対関係【FGO×Fsn】

10,252 character(s)20 mins

相変わらずクロスオーバーしか書かないやつでごめんなさい……。
新しいFsnとのクロスオーバーネタです。今回はHFルート。
仲良しな展開は色々書いてきたけど、敵対関係って書いてないなぁと思って。
しかも勘違いからの敵対関係です。

色々捏造あり、時間軸がちょっと混ざってる、基本やりたい放題。
なんでも許せる方向け。


Fsnとのクロスオーバー書きすぎててみなさんあきてきてません?またクロスオーバーかよ、とか思ってません?私は楽しいですけど!

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「みんな、おっはよー!」


いつも通り元気よく担任の藤村先生、藤ねえが教室に入ってくる。
何人かのクラスのやつもおはようございます、と返した。
なんだか今日の藤ねえはいつもより機嫌がいいように感じるというか……。
朝も家をでるとき、今日学校にきたら驚くわよー!とニヤニヤしていた。
二割増しくらいのテンションの高さに、内心首を傾げながら出席をとられる。


「今日はみんなに大ニュースがあります!えー、このクラスに新しい仲間が増えることになりましたー!」


新しい仲間、という言葉にクラスのみんながザワつく。
つまり転入生か、この時期に珍しいな……。
夏休みもとっくの前に明け、秋になり衣替えもし、そろそろ肌寒くなってくるこの時期に、だ。
普通ならよっぽどの理由がない限りはありえないことなのではないだろうか。
藤ねえは教室の扉の方へいき、入って入って、と一人の生徒を手招きする。


「はい、じゃぁ転入生くんの、」

「藤丸立香です」


黒い髪、青い瞳を持った藤丸、と名乗った男は屈託なくニカリ、と笑う。
第一印象は悪くなかった。
人懐っこそうなやつだな、と。


「藤丸くんは海外にいたんだけど、ご両親の都合で急遽冬木に引っ越してきたそうです。みんな、仲良くしてあげてね」


えーと、藤ねえがキョロリ、と教室を見回す。
そして俺の隣の席を見つけた。


「それじゃ、藤丸くんはあそこの席ね」

「はい」


藤丸は俺の隣の席に座る。
俺の方を見て、よろしく、と微笑んだ。


「衛宮くん、藤丸くんに教科書見せてあげてね!」


なんでも急な転入だったから教科書の準備ができていないそうだ。
俺は藤丸方へ机を少しズラすと、藤丸も机を寄せてきた。


「ごめんね、ありがとう」

「気にすんなって。俺は衛宮士郎、困ったことがあったらなんでも頼ってくれ」


そう微笑めば、藤丸は少しだけ目を見開いた。
なにかおかしなことでも言っただろうか、と俺は少し首を傾げる。
と、藤丸はなんでもないようにまた笑った。


「士郎、って呼んでもいい?」


本当に人懐っこいやつだな、と印象が固まった。
その日から藤丸は、特に目立つわけではなかったがすぐにクラスに馴染んでいた。
なんだったら他の教室のやつとも、同じクラスのやつを通じて仲良くなったりしているようだ。
確かに藤丸はいいやつだ。
人懐っこい笑顔に、誰とでも話そうとするし、話せばボケからツッコミまでコミカルに接して、困っているやつがいたら手を差し伸べる。
勉強はそこそこ、全体的に平均点キープという感じ。
けれど数学には自信があるんだとか。
そこは海外に住んでいたんだから英語じゃないのかよ、と言えば外国語は広く浅く、らしい。
確かに藤丸は英語に関しては凡ミスが多い。
アメリカ英語よりもイギリス英語の方が馴染みがあるらしく、スペルをちょくちょく間違えていた。
けれどイギリス英語の他にもフランス語や中国語、ヒンディー語、アラビア語、他諸々多数……。
バイリンガルとかのレベルじゃない、マルチリンガルなやつなんて本当にいたのかと驚いたくらいあいつの言語知識は広い。
けれど本人は知り合いに教えてもらっている程度でほとんど喋れないしヒヤリングができるくらい、と言っていた。
それでも十分凄いだろう……。
どこの国にいたのかと俺もそうだが、色々なやつに聞かれては沢山の国にいってきた、と少し言葉を濁していた。
あと藤丸は持久力が意外にある。
体育の授業のマラソンでほとんど息を切らさずにゴールしていて、陸上部を勧められていたが結局帰宅部だ。
それと着替えのときにチラリと見えたんだが、あいつの身体に結構な傷跡がついていた。
あとでどうしたんだと聞けば、ちょっとした事故だ、と言われてそれ以上は流石に聞けなかった。
藤丸立香、は不思議なやつだ。
あいつと話せばほっとするし、あいつの一生懸命な姿には俺も頑張ろうとすら思える。
所々変な奴だし、謎も多いが、俺は純粋にあいつを友達として好いていた。


***


あいつが転入してきて少し経った頃、新都でのガス漏れ事故が相次ぐようになった。
いや、それだけじゃなく住宅街での殺人事件など、冬木が途端に物騒な街になったのだ。
その原因はサーヴァントだとすぐに分かるようになる。
何故なら、この冬木で行われている聖杯戦争なるものに俺も参戦することになったからだ。
左手の甲には令呪があり、俺の家には同居人が一人増えた。
そんなある日、俺は藤丸に左手を掴まれる。


「っ、ど、どうした?」


藤丸は俺の問いかけに答えず、じっと手の甲の令呪を見ていた。
おい?と再度問いかければ、藤丸ははっ、としたように俺に視線を寄越す。


「これ、怪我したの?痣できてる」

「あ、あぁ、ちょっとぶつけて……」

「そ、そっか、士郎も意外とドジだなぁ」


あははは、と俺らは笑いあうが、どこかぎこちない雰囲気になってしまった。
藤丸を、こんな殺し合いに巻き込むわけにはいかない。
そう思って、最近物騒だから気をつけろよ、と言えば藤丸はキョトンとする。


「俺は大丈夫。士郎もバイト夜遅くとかまであるんだろ?気をつけろよ」

「あぁ、サンキュ」


ニッ、と藤丸は笑って、クラスのやつに呼ばれていってしまう。
その日から、だんだんと冬木でサーヴァントと思われる犯行が拡大していった。
多くの一般人が被害にあっている。
紆余曲折あり、遠坂と手を組むことになった俺は、彼女にどうにかできないかと相談した。
そうすればまだ手掛かりが少なすぎてどうすることもできない、と言われる。
けれど俺はそんな言葉じゃ納得できなくて、この際だから俺のサーヴァントであるセイバーを連れて冬木を見回ることにした。
気休めかもしれない、でもなにかできることを少しでもしていないと落ち着かなかったんだ。
なにもないならそれでよかった、むしろなにもないでいてくれと願った。
……のに、


「――――――」

「――――――」


暗い路地に二人、男の後姿を見つけた。
一人は黒いパーカーを着てフードを被り、黒いズボンでポケットに手を入れている。
もう一人はそれとは対照的に白いローブにフードを被り、真っ白く長い髪は地面にもつきそうだ。
そして白い方は黒く、身の丈以上の歪な杖を持っていた。
会話の内容は聞こえない。


「……あの男は……!」

「セイバー?」


遠坂からもらった現代の服を着たセイバーは俺の横で、男二人を見て目を見開いている。


「いや、でも、そんな……ありえない……」


動揺しているが、それは恐怖からではない。
目の前の光景が信じられなくて、ただただ驚いているようだ。
俺は男二人の会話に耳を澄ませた。
白い方はサーヴァント、だろうか……いや、セイバーが知る男なのだからサーヴァントで間違いないだろう。
とすればあいつらも聖杯戦争の参加者、ということか。


「あまり……目立つ――気をつけ―――……」

「もちろん、分かって……――もしものときは――――消すよ」


僅かに聞こえた言葉に、俺はゾワリ、と背筋が震えた。
消す?なにを?人を?命を?
こいつらはもしかしてここ一連の事件に関わっているのか?
ギリッ、と俺は拳を握り込んだ。
もしそうなら、許せない、と怒りが湧いてくる。


「っ!シロウ……!」


俺は隠れるのを止め、やつらと対峙する。
セイバーも慌てたように俺の傍に立った。


「おい、お前ら」

「っ!?」

「……おやおや、これはこれは……」


黒い方はピクリ、と肩を震わせて振り返った。
白い方は俺たちの存在に気付いていたとでも言うように、のんびりとこちらに身体を向ける。
そして俺は黒い方を見て、息を飲んだ。
フードの下から覗くのは黒い髪、青い瞳……最近やってきた転校生、いいやつだと、思っていた。


「藤丸……?」


目を見開き、俺はやつの名前を呼ぶ。
バツが悪そうに、藤丸は表情を顰めていた。


「なんで、お前が……?それに、そいつは……」


藤丸はなにも答えない。
その代わりに、白い男が藤丸の前に立って杖を一回転回した。
その行動を見てセイバーも俺の前に立ち、鎧に身を包む。


「シロウ、下がってください。あの男は油断できません」

「なるほど、この聖杯戦争のセイバーにはキミが召喚されていたのか……これも星の巡りあわせ、かな」

「答えろ藤丸!なんでお前がこんなところにいて!なんでサーヴァントと一緒にいるのか!お前も聖杯戦争に参加しているマスターなのか!?」

「…………今は、まだ言えない」

「なんだよ、それ……。じゃぁ、ここ最近の事件は……」

「っ、言えないんだ……」


藤丸がそう言った途端、セイバーは駆けだす。


「!待つんだセイバー!」


俺の制止の声なんて聞かず、セイバーは白いサーヴァントに見えない剣を振り上げた。
だがそれはガキィッ、とやつに受け止められる。
白いサーヴァントの手には杖だけじゃなく、いつの間にか光り輝く剣も握られていた。
ランサーすらも苦戦した見えない剣を、あのサーヴァントはいとも容易く受け止めたんだ。
鍔迫り合いになり、それを押し返した白いサーヴァントはその勢いのままセイバーに斬りかかった。
杖を持っていたからキャスターかと思っていたが、あのセイバーが押されるほどの剣術を繰り出してくる。
剣で攻め、セイバーの攻撃は杖で防ぎ、また剣を振りかぶってくるのでセイバーが距離をとれば、今度は杖から光の玉が飛んできた。
とてもやり辛そうにセイバーが眉を顰める。
光の玉を避け、防いだセイバーは剣先を白いサーヴァントに向けた。


「何故!何故貴方がここにいるのですか!貴方は本来英霊として召喚されることはないはずなのに!」

「さぁ、何故だろうね」

「……藤丸、お前は敵、なのか……?」


信じていた……いや、今でも信じている。
こいつはいいやつなんだ。
人懐っこくて、軽快な冗談も言う、よく笑うし、困っているやつは助けようとする。
だからこそ、こいつがこんな……人殺しの戦争に参加しているってことが信じられない。
頼むから、否定してくれ……!


「……ごめん」

「っ!」


俺のなかのなにかが、崩れていった。
やつに詰め寄ろうと一歩踏み出そうとした瞬間、首元にヒヤリとしたものが触れる。


「シロウ!」

「動くな。一歩でも動けば、この首を刎ねる」


俺の背後に、誰かいる……。
姿は見えないけれど、俺の首元には苦無のような少し大きめの刃物が後ろから腕を回され首に当てられていた。
全く気配に気づかなかった……。
その事実と手際に身体が震え、冷や汗が流れる。
セイバーはなす術もなく構えを解いた。
藤丸は俺をじっと見つめてくる。


「士郎、この聖杯戦争から手を引いてくれ。まだ、今なら間に合うから」

「なにを……!」


その言葉がどういう意味なのかそれを聞こうにもグッ、と喉元に刃を押し当てられ、動こうにも動けなくなった。
白い男は口元に笑みを浮かべると、パッ、と光の剣を手元からなくす。
いこう、と藤丸が言えば、二人はその場に花びらを舞わせて姿を消した。
首元の刃も離れ、背後の気配も途端に消える。
はぁ、と俺は息を吐いて首元を片手で押さえ、地面に膝をつく。


「シロウ!」


セイバーが駆け寄ってくる。


「すみません、みすみすマスターの背後をとられるなど……」

「いや、俺も気付かなかった。気にしないでくれ」

「……その、彼は、シロウの友人ですか……?」


セイバーの言葉に、俺はあぁ、と頷いて俯く。
そして俺は藤丸のことを簡単に説明した。
最近冬木に引っ越してきたやつだと。
印象や学校生活を見ても、とても悪いやつには見えなかったと。


「だから今でも信じられないんだ、藤丸が聖杯戦争に参加しているなんて……」


人を殺すことはおろか、人と争うことすら苦手そうなやつなのに。


「彼の連れていたサーヴァントには見覚えがあります。彼が今回の聖杯戦争でのキャスターのマスターなのでしょう。そしてシロウの背後をとったサーヴァント、気配遮断スキルから見てアサシン」

「ってことはアサシンと手を組んでる、ってことか?」

「恐らくは」


俺や、遠坂と同じか……。
アサシンとキャスターのコンビ、か……首に刃を当てられるまでいることに気付かなかったほどの気配遮断スキルを持ったアサシン。
白いやつをキャスターとセイバーは言ったが、魔術師なのに三騎士に数えられるセイバーと互角以上に戦える剣術を使うほどのやつだ。
どう考えても厄介この上ない。


「……明日、学校でもう一度藤丸と話してみる」


学校にくれば、の話だが。


***


次の日、案の定藤丸は学校にこなかった。
風邪だ、という藤ねえの言葉を聞きながら、俺は眉を顰める。
こうなったらあいつはきっともう学校にはこないだろう。
あいつは本当に敵なんだと、そう思わざるを得なかった。
そして昨日の夜に、柳洞寺の人たちが全員病院に運ばれたそうだ。
貧血のような状態で、命に別状はなかったが、新都で起こっている事件と似たような状態であることから恐らくはサーヴァントの仕業だろう。
遠坂に話してみれば、そんなことをするのはキャスターくらいだとそう言った。
己の工房を創る陣地作成と、奪った魔力との効果を相乗させることが魔術師であるキャスターには可能なのだと。
キャスター、と聞いて、藤丸が思い浮かんだ。
あいつが、やっているのか……?
一般人の魔力を奪って、サーヴァントを強化させている?
だからセイバーとやりあえるほどのサーヴァントだったのか?
疑問だけが浮かんではぐるぐると頭の中を回る。
信じたい、という気持ちが、だんだんと信じられない、に変わっていった。
俺たちはまんまと騙されていたのだろうか……。
本当はニコニコと笑う笑顔は作り物だったのか?
今となっては、腹の中でなにを考えているのか分かったものじゃなかった。


「遠坂、その……話しておかなきゃいけないことがあるんだ」


そして俺は遠坂に藤丸のことを話した。
昨日藤丸と会って、怪しい会話をしていて、キャスターのサーヴァントを連れていたと。
だから柳洞寺の一件は藤丸の仕業かもしれない、と。
話終われば、ちょっと待って、と眉を顰めた遠坂に言われる。


「それはおかしいわ。だって私昨日柳洞寺にいったのよ。アーチャーが復調したから調査をと思って」

「え?」

「新都の一件は確かにキャスターの仕業よ。でも柳洞寺の一件は違う。柳洞寺を根城にしていたキャスターは既に消えていたんだもの。そして唯一殺された葛木先生が、恐らくそのキャスターのマスターだった」

「え、ちょっと待ってくれ。じゃぁキャスターのサーヴァントは二人いるってことか?」

「いいえ、そんなこと本来ならばありえないわ。だからその転校生くんはイレギュラーすぎる。ねぇ、本当に転校生くんが連れていたのはキャスターのサーヴァントだったの?」

「セイバーが言うんだ、間違いないと思う」

「そう、よね……確かにそうだわ」


遠坂は顎に手を当ててなにかを考えているようだった。
藤丸が連れていたサーヴァントは間違いなくキャスターだ。
でも遠坂が言うには柳洞寺にいたキャスターは既に消されていたと。
キャスターが二人いる?
……いや、そもそも藤丸は七人の内の一人のマスターなのか?


「衛宮くんの言っている時間は、私が柳洞寺へいった時間とほぼ同じ……となると柳洞寺の一件もその転校生くん、って可能性は限りなく低いと思う。でも、彼は確かにキャスターのサーヴァントを連れていた」

「それも、セイバーと互角に戦えるほどの剣術を使えるほどのやつだ」

「セイバーと互角に……一般人から魔力を奪って強化しているとしか思えないわね。ほら、今朝も新都で昏睡事件があったでしょ?」

「それが藤丸の仕業だって言うのか?」

「分からない……でもキャスターは消えたのに、まだ魔力が奪われ続けている」


転校生くんがやったと思うのが、普通でしょ。
そう遠坂は言った。


「今夜、調べてみましょうか」


***


そして夜中、雨の降る中遠坂と待ち合わせた。
公園を歩く遠坂の少し後ろに合流してついて歩く。


「遠坂……」

「歩きながら話をして。私たち、見られているからそのつもりでね」


そして広場までいくと、その中央に人影がある。
黒と、白……。
一瞬、ほわり、と二人の足元が光ったが、すぐにそれは消えた。


「藤丸……!」


そう呼びかければ、藤丸は振り返る。
俺たちがくると分かっていたのか、藤丸は苦笑いをして片手を上げた。


「……そう、彼が……」

「藤丸、やっぱりお前……!」

「待って衛宮くん」

「遠坂?」


遠坂はコートのフードをとり、身体の向きを左側へと変えた。
藤丸は正面にいるはずなのに……。
それにその藤丸も、遠坂と同じ方向を向いている。
少し戸惑いながらも、俺もフードをとってそちらを向いた。


「……あれはあなたの仕業でいいのかしら?間桐のご老公」

「――流石は遠坂の娘」


どこからか虫の鳴き声、羽音が聞こえてきて一点に集まる。
するとそこから人影が現れた。


「優秀、優秀」

「臓硯……!?」


そこには着物に身を包んだ老人が立っている。
慎二や桜の祖父である、間桐臓硯。
俺は驚きに目を見開いた。


「間桐は敗退したんじゃなかったのか!?」

「はっはっはっ、儂自身が負けたとは、一言も言っておらん」


すると臓硯は視線を藤丸の方へと移した。


「お主はなにをしにこの冬木へきた?本来ならばこの聖杯戦争に関わるべき存在ではないだろう、カルデアのマスターよ」

「カルデアの、マスター……?」

「……俺はただ、仲間を探しにきただけだ」


そう言った藤丸は空を指さし、その指先を臓硯へと向ければキラリ、と頭上が光る。
次の瞬間、無数の矢が臓硯に向かって降り注いできた。
ダダダダッ!と地面を砕く音を響かせながら、雨の飛沫を上げて振ってくる。
少しの間降り注いだ矢が止むと、そこには大量の虫が死んでいた。
臓硯は!?と目を凝らせば、また一点に虫が集まり臓硯が姿を現す。
やつは楽しそうに笑っていた。


「いやはや、見た目によらず大胆なことをしてくれる」


そう言った臓硯の隣の空間が歪み、人影がでてきた。
紫のローブに身を包んだ女が、ゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。
隣の遠坂が小さく、キャスター、と呟いた。
彼女が、この聖杯戦争の本来のキャスター、なのだろう。
遠坂が呼びかけると、アーチャーが姿を現し、セイバーも黄色いレインコートを脱ぎ捨てる。


「っ!?」


セイバーが息を飲むのが聞こえた。


「貴様……!英霊の死体を弄ぶとは……何事だ!!」


憤ったセイバーはキャスターに向かって駆けだす。
それに対抗しようと操られているのだろうキャスターは魔術式の浮かぶローブを広げた。
するとその周りにも魔術が浮かび上がり、放たれる。
セイバーをそれを避けきってキャスターに向かうが、キャスターは自身に刺さっていた短剣を引き抜き振り上げた。
嫌な予感がした。


「っ、駄目だセイバー!その剣に触れ……!」


触れるな、と言い終わる前にキャスターの腕をアーチャーが斬り上げる。


「その剣に触れるな」


腕を落とされたキャスターは自分の血を振りまくと、それが大爆発を起こす。
その熱と爆風を俺と遠坂は顔の前に腕を持ってきて耐えた。
セイバーもアーチャーも無事だ。


「ははっ、随分と派手だねぇ。流石はコルキスの女王、操られていても魔術の腕は一流だ」


藤丸のサーヴァントだけがこの状況で呑気に笑っていた。


「その剣は魔術破りだ。マスターとの契約すら絶ってしまう代物だよ。そこの彼の判断は正しい」

「手早く済ませてやろうと思ったが……」


臓硯がそう言うとキャスターは腕を掲げる。
するとその頭上に巨大な火の玉が現れた。


「確かにセイバーにはこやつの魔術は効かぬだろう。しかし、マスター諸共ならどうかな?」

「それは心外だ」

「なっ……!」


俺たちの前に藤丸の白いサーヴァントが立つ。


「その程度の魔術で、我々のマスターに傷一つつけられるとでも?」


クルリ、とやつは杖を回した。


「マーリン!」

「お望みのままに」


藤丸の声に軽やかに答えた男はパチン、と指を鳴らす。
そして苦し気な声を上げたキャスターは腕を振り下ろし、その火の玉を俺たちの方へ向かって放つ。
物凄い熱量が迫ってくる……と思ったがそれは全くの逆方向へと飛んでいった。
俺も遠坂もポカン、と口を開ける。
なんだ、今の……。


「幻術か……死体すら欺くほどの魔術とは……」


臓硯が眉を顰めた。
白いサーヴァントは得意げにふん、と鼻を鳴らす。
と、突然ここら辺一帯の電気がバツン、と消えた。
停電……?


「まさか……!ありえん!」

「なんなの……?」

「遠坂、あれ……あれは、なんだ……!?」


なにか、黒いものが公園の林からでてきた。
得体の知れないもの……気味が悪く、本能的にあれはヤバいものだと感じる。


「マスター!下がれ!」


知らない声が聞こえ、振り返れば街灯の上に弓を持った男がいた。
街灯の上でやがむそいつの姿は暗くてよく見えないが、ギリギリと弦を引くその周りにも無数の矢が浮いているのは分かる。
目を見張るほどの大量の矢が、一斉に得体の知れないなにかに向かって放たれた。
けれどその矢はパンッ!と音を立ててなにかに吸い込まれる。


「ちっ、やっぱり無理か」

「虚数、空間……?」

「ありえん!」


そう言って一歩下がった臓硯の首を、隙をついてアーチャーが斬り落とす。
だがやつの身体は虫になって飛んでいった。
得体の知れないものから、地面を這うように黒い靄が広がる。
危機を察知したセイバーが俺のところまで下がってきて、白いサーヴァントは藤丸の傍まで後退した。
靄に触れたキャスターの死体が飲み込まれる。


「キャスターが、消えた……?」


呆然と見ていれば、靄が一本になりこちらに向かって伸びてくる。


「遠坂!」


とっさに俺は彼女を突き飛ばした。
そして頭の中になにかがぐちゃぐちゃに流れ込んでくる。
その重みに、俺は一瞬意識を落とした。


***


ふと温かいものに包まれているような感覚に目を開ける。


「本体に触れたわけでもなし、この程度ならば大丈夫だろう」

「アーチャー、あなたはあれがなんなのかを知っているのですか?」

「さてな」

「おや、目を覚ましたようだよ」


俺の額に、藤丸の白いサーヴァントが触れていた。
藤丸が心配そうな顔をして俺を覗き込んでくる。


「士郎、大丈夫か?」

「あ、あぁ……」


身体に力が入らず、大丈夫なんて強がりだったが俺は身体を起こした。


「……どうやら私怨を優先できる状況では、なくなったな」


俺はセイバーに肩を貸してもらって、立ち上がった。
傍に立つ藤丸の背後には三騎の、サーヴァントの姿がある。
ぼーっとする頭で、それでも聞かなければならないと思った。


「……藤丸、お前は一体……」

「……ごめん、言えない」


昨日と、同じ答えだった。
目を伏せた藤丸は、セイバーにあとはよろしくね、と言って踵を返す。
追うことはできなかった。
俺自身の状態もあったが、それ以上に藤丸を守るように立つ三騎の英霊がキロリ、と俺たちを睨みつけていたからだ。
その日は、それ以上のことは聞けずに帰路についた。

Comments

  • 赤城

    続きは、ないんでしょうか……?ペルシャの大英雄の出番は?

    July 22, 2024
  • mel
    May 24, 2022
  • SW

    え、続き無いの?

    April 3, 2021
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