ぐだ男・リリィが狙われる話
やってしまった。なぜか削除されてたので再投稿しました。
申し訳ありません。
小説のバックアップ取っててよかった……。
深夜に投稿したやつと同じぐだ男くんが誘拐されそうになる話です。
終始モブ目線で話が進みます。
要はぐだ男リリィって鯖たちから愛されるあまり監禁されてそうだなって。
p.s.タイトル変えたのは深夜テンションでつけたのがちょっと恥ずかしかったからです。
追記
諸々のランキング入り、ありがとうございます!
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・微グロ注意
・胸糞注意
・キャラクターの罵倒シーンがありますが決してヘイト、アンチではありません
「坊や。少し手品を見ていかないかい」
「てじな?」
「そう、手品。ウサギを出してあげようか、鳩を出してあげようか。
何をしてほしい?」
「んっとね、とらんぷのやつがいい!」
子供を騙すのは簡単だ。
俺の使命は幾人もの子供を芸術作品に仕立て上げること。
憧れの絵画のように、幼い頃の記憶に残る彫刻のように、優しげに微笑む写真の中の母のように。
全てをぐちゃぐちゃにしてきた。
この才能があると知ったのはつい最近のこと。三ヶ月くらい前だろうか。
楯突いてきたクソガキ、もとい材料を初めてこの手で分解し、接合し、混成し、完成させた美は自慢ではないがミロのヴィーナスにも劣らない煌めき放っていた。
あのクソガキがあそこまでになれたのは一重に俺のおかげだ。あいつの親も泣いて喜んでいた。
以来続けてきた創作活動。
俺の美は有り余る制限の中で作られる。
材料は10歳前後の子供であること。
決してその工程を他人に見せないこと。
加工の段階で材料に五月蝿い声を出させないこと。
完成した作品を発表するまで自身の姿を他人に見せないこと。
人に姿を見せないのは俺の美的センスが失われるからと、あとは材料の劣化を防ぐため。
然し、世の中は俺の芸術を受け入れない。
連日放送される俺の評判は『猟奇殺人犯』『精神異常者の狂気』『芸術家気取りの人殺し』で、誰も『新進気鋭の芸術家』『予想外の角度から切り込む新しい天才』などとは言わない。
こうも世の中にセンスのない人間が溢れるとむしろ俺がイライラしてくる。
だから決めた。
これから俺の芸術は変わる。
今までは全て模倣だった。なぜならそちらの方が凡夫どもには分かりやすいと思っていたからだ。
でも今からは違う。
オリジナリティを貫く。
今回が1回目だからか図面を考えるのには苦戦した。やっと出来上がっものを捨てては書き直し、書き直しては捨てた。
結果、完成したのは過去最高の代物。
これを目の前の少年に試す。
年齢は10歳程度か。
無垢な表情の中に年齢特有の反抗心はなく、その清廉潔白な無垢さはサファイアのごとく煌めく瞳に現れている。対照的に、豊かな髪は日本人らしい癖のある控えめな黒色。
適度に取れたそのバランスが素晴らしい。肌も白く、目測したあたりでは目立つ痣もシミない。
「君、名前はなんていうのかな?」
「おれはりつかだよ。おにいさんはなんて名前なの?」
「ぼくはね、ピエロだよ。それより手品は面白いかな」
「うん。すごいね。おうちにもてじなできる人はいっぱいいるけどおにいさんのは特別おもしろい。
なんでかなあ?」
「嬉しいことを言ってくれるなあ。そうだ!
いつもはいかないけど君はいい子だから特別なところに連れて言ってあげよう」
「でも知らない人にはついて行っちゃいけませんって」
「大丈夫。晩御飯までに帰ればバレないよ。
ね、行きたいんでしょう?」
ぐい、と少年の腕を強く掴んで威圧するように笑いかける。ぎこちなく少年が笑い返したところで、これは落ちたと確信する。
「そ、そうかなあ」
「もちろん!さあ、いこうか」
自分よりはるかに身長の低い少年の手を引き、歩く。
材料はこれで揃った。
あとは持ち帰って切り刻むだけ……
「なーにしてるんですか、立香」
心臓が高く脈打った。鈴が鳴るような可愛らしい声の裏に慢心を孕んだ怒りが感じられる。
「ギル……くん」
「全くもう。あ、いましたよ。こっちです」
金髪の少年が視線を向けた方向からは子供がまた数人走ってきている。
赤髪の子、銀髪の子。
立香の友人なのであろう2人はギルくん、とやらの周りに集まり中でも異質な自分を見上げている。
これは、なかなか。
いい素材だ。皆が皆美しい。銀髪の子だけは顔に傷があるが、まあそこだけ切り取れば問題あるまい。
「みんなも一緒に来ないかい?」
数多の人を魅了してきた笑顔を子供達に向ける。どういうわけか、俺の笑みは人を惹きつけることができた。他とは違う俺が生まれついて使える魔法のようなものの1つ。
「悪いけど僕たちはマスターを連れて帰らなきゃならないんだ」
赤髮の少年は俺に負けない柔和な笑みを浮かべる。こういう子を紅顔の美少年というのだろう。感心している間に、そのうちに顔に傷がある子がりつかの両腕に絡みつき俺から離れていく。
ああ、イライラする。こいつらは一体なんなんだ。大人の言うことを聞いてついてくればいいものを。
もうそろそろ立場の差を知らしめてやろうか。
相手は誰がいいか。そうだ、銀髪の子ならば多少殴っても問題なさそうだ。なにせあの顔の傷。酷いったらありゃしない。
銀髪の子めがけ、大きく手を振り上げる。しかし、何を考えたのかりつかが少女の前に出て代わりに俺の拳を受けた。
「おかあさん!」
聞き間違いだろう。そう叫んだ銀髪の少女は殴られて飛んでいった少年に駆け寄る。
「てめえらが俺のいうこと聞かねえからそうなるんだろうが!
そいつみたいになりたくなかったらさっさとついてこい!」
幸いここは裏路地。声を荒げてもそう人はいまい。それにここは物騒な奴らのねぐらが近くにあるらしいからたとえドスの効いた声をあげても、子供の叫び声が聞こえても誰も助けようとはしないだろう。
見せしめに怯えるりつかの手を掴み無理やり立たせる。
ぐちゃり。
足元に何かが落ちた。いや、あれは落ちた時の音では無い。何かが発射されたのだ。
アスファルトを易々と抉り、その下の土を見せつけながら地面に埋まっているのは大剣だった。あんなものが当たれば死にはしなくても腕の一本や二本軽く吹き飛ぶだろう。
「う、お、ああああああ……!?」
「外しちゃったかあ。今の弟子止めるつもりだったのに……っと。僕以上に恐ろしい人たちが来ちゃいましたね」
ギルと呼ばれた少年が御愁傷様です、とだけいうと足元の体験は消え去った。
訳がわからない。
あれは一体何処から出てきて、どこに行ったんだ。パニックに陥り、座り込んだ俺から離れたりつかは驚きの表情で俺を見る。
いや、見ていない。りつかが見ているのは俺ではなく、俺の後ろだ。
「こんなところにいたのかマスター。逃げ出すとは感心せんな」
「あら。そこの汚らしい男は誰なの、リツカ」
路地裏に百合のような凛とした声が2つ響いた。一体何処から見られていたのか。どう誤魔化すか頭をフル回転して考えるが思考はまとまらない。
「アルトリア。ジャンヌ。あの、今日は」
「そうね。あなたの誕生日ね」
「うん。だからおれ、外にでたくて」
「そういうことなら言えばいつでも外には出してやる。
して、その頬はどうしたのだマスター」
月色の目と髪、色白の肌に、黒ゴシックのワンピースがよく似合う絶世の美少女が纏う冷徹な雰囲気にそぐわない優しい笑顔でリツカの頬を撫でた。
「どう見たってそこの馬鹿がやったに決まってるでしょ、暴食馬鹿」
もう1人の少女の上品な声から考えつかないほどの辛辣な言葉にあっけにとられる。それもそうか、と言ったゴシックの美少女が地面に座ったままだった俺の喉元に剣を突きつける。それは一体何処から取り出したものなのか。まるで先ほどと同じように何も無い空間から浮き出たようだ。
「我がマスターを傷つけたこと……。貴様はどう償う」
「どいつもこいつもふざけやがって。そんな武器がどうした!」
所詮そんなアナログな武器俺には通用しない。大人の、男の怖さを思い知らさないとこういう調子に乗った女は生意気なままだ。
懐から取り出したのは銃。銃のことはよく知らないが最近知り合った裏の筋の人間から仕入れたものであり、売人はこれさえあれば裏の人間であっても大抵逃げ出すと言っていた。
剣を構える少女に対してそれを構えるが、ひるむ気配すら見せない。
むしろ、
「どうした銃口がずれているぞ。よもや虚仮威しではあるまい」
などと俺を馬鹿にしてくる始末。
(クソが、なんだこの女は。いいぜ。お前が言ったんだ全部悪いのはてめえだ!)
ガキンッ。引き金に手をかけると裏路地に銃声が響いた。弾は確かに鼻腔をくすぐる硝煙とともに吐き出され、少女の心臓を貫いた。
はずなのに。
どうして、目の前の女は生きているんだ。まして、罵倒を浴びせていた少女なんて笑いが止まらないらしく腹を抱えている。子供達もなんの心配をすることもなくただただ静観しているのみ。
おかしい。こいつらは何かが、おかしい。
狂気を感じ、力が抜けたせいで銃がずり落ちコンクリートに当たると高くも低くも無い音を路地裏に悲鳴を響かせる。
「こ、殺さないでくれええええええ!!!!」
おぼつかない足取りで抜けた腰を引っ張っていく。ここにいれば俺は殺される。その前に逃げるんだ。
早く、早く。
走り続ければいつのまにか部屋に前にいた。
股は失禁して垂れ流したままの尿で熱く、それに負けじと涙と鼻水だらけの顔面もぐちゃぐちゃだった。
しかし、いつもなら死ぬほど気にする見てくれも今はどうでもよかった。
四肢が健在で、魂も肉体につなぎとめられているこの状態に安堵していたからだ。
あれから数日経った。
もうリツカの姿は見ていないし、見たくも無い。あの日の恐怖は綺麗さっぱり忘れてもう一度作品に取り掛かることにしたのだ。もう材料も調達済みでほぼ完成間近、というところで問題が発生した。
材料が小さすぎたせいで形になる前に資材が底を尽きたのだ。どうしようか、迷っているうちに人前に姿を晒さない制約を破る羽目になってしまった。
よって今は仕方なく外出のためマンションのエレベーターに乗っている。
これも全てあの忌々しい海色の瞳の少年のせいだが、気にしない。なぜなら彼は芸術作品になり一生伸びを得るチャンスを逃してしまったのだから、むしろ同情の念が湧いてくる。
彼はきっといつか、後悔するだろう。
ああ、あの時彼の傑作の一部になっていれば辛い人生も楽しかっだろうにと。
内臓が宙に浮く感覚がして、エレベーターは一回で停止する。
被っていたフードを脱ぎ、魔法の笑顔を作る。
入れ違いでエレベーターに入ったのは警官。深くかぶった帽子で顔はよく見えない。しかしたいしてドギマギすることもなく前に歩こうとした。
「少しお話しよろしいですか」
なんと、警官は、あろうことかエレベーターから飛び出ると俺の方を掴み、声をかけてきた。
材料は見つかっていないはずだし、芸術作品はまだ完成していない。
なのにどうしてバレたんだ!?
「先日、付近の裏路地にて発見された銃に永遠部さん、あなたの指紋が付着していました。
署に同行をしていただきたい」
あ。
なんてことだ。
うっかりしていた。まさかこんなことで警察に見つかるとは。警官相手に誤魔化しきれるだろうか。誤魔化しきれず、俺のものだと知れたら部屋を荒らされるだろう。
そうすれば、芸術が見つかる。そうすれば、俺の犯罪がばれて……!
また、りつかのせいか。あの子供はいったい何処まで俺を陥れれば気がすむ。
「ゆ…ね……。あいつ……ろすまで……」
「どうかしたのか……」
腕を持ってくる警官の手を振り払い走り出す。まだムショに入れられてたまるか。
あいつを、りつかを殺すまでは絶対に捕まらない。
見つけた。
りつか。顔も見たくない相手だったが存外早く見つかった。ことは喜ばしい。
この前と違い、少々顔色が悪く見えるがあれは確実に忌々しい仇だ。
俺は今からあいつを殺す。そして、その側で俺も自殺してやる。刑務所に入れられるくらいなら、もう自殺したほうがマシだ。
部屋を調べられたせいで今までの殺人がバレ、連日の報道で俺の顔は巷に知れ渡っている。きっと今日がラストチャンス。ここを逃せばもう一度りつかに巡り会う前に捕まってしまう。
りつかは無用心にも1人で歩きながら独り言をつぶやいている。なんとも不気味だが、殺すなら、今だ。
小型ナイフを構え、首筋を狙い走り出す。
死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!
ナイフが確かに肉に埋まっていく感触と音がした。達成感を感じナイフの柄を離すと、カランと確かに刺さったはずのナイフが地面に落ちる。
絶句した。
やっぱりこいつも化け物だ。
ゆっくり前を見ると、リツカの影の延長戦に、帽子をかぶった深緑色の男が銀髪を揺らしながら凶悪な笑みを浮かべている。
逃げなければいけないのに足は動かない。この前走れたことが嘘のようだ。
「我が主人を狙うとは愚かな人間もいたものだ。その心意気は認めよう。
だが貴様はこれで二度目だ。一度目、立香は貴様を許した。今回も立香はお前を許すだろうが、俺たち(サーヴァント)も殺気立っていてな。
運が悪かったと思え」
ずしゃん。
首を妖怪の指が横一直線に通り、そこから赤い亀裂が入る。
ああ、俺は首を切り落とされたようだ。首を落とされても意識は数十秒残るらしい。ドッと音を立てて地面に落ち汚らしい地を垂れたがす生首、俺が死ぬ間際見た光景。
りつかの影の中に男がいるだけでない。リツカの向こう側には大狼が、艶やかな入れ墨をした美しい男が、甲冑を纏った騎士が、鬼が、和服に刀を持った武人が、軍服を着た鬼のような少女が、金の甲冑を身につけた王が、神々しいほどに美しい3人の女神が、猛犬のような青い槍兵が、狐耳の魔女が、ドクロの仮面をつけた大柄な者が、青い槍兵に似ているが黒と赤にまま任せた狂人が、全身に青い紋様が動き回っている少年が。
今、気づいた。
他にも数え切れないほどの幽霊がりつかの後ろにはいたのだ。
幻は消え去りたった1人俺の眼に映るりつかは振り返り、言った。
「ばいばい、ぴえろさん」