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ぐだ男のみ知る綺麗な死/Novel by あぱらちあ

ぐだ男のみ知る綺麗な死

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死は、誰しもに、平等に訪れる。

彼も例に漏れず、いつかは死んでしまう。

一方では死を克服しようとする人。もう片方では受容して来世に委ねたりする人。

死への向き合い方は十人十色である。

じゃあ、彼は…




彼、すなわち、カルデアのマスターの藤丸立香はたいそう明るい少年だった。
彼のサーヴァントのほとんどは、彼の性分を好いている。
誰にでも平等に接していて、それでいて思いやりが強い。
当時の人間からしたら、一目しただけでもすぐに平伏するような存在に対してもフランクなのだ。
それでいて、そのサーヴァントの闇には簡単に触れない。
これが、彼の優しさ。
だから、皆に愛されている。
また、死地だとしても、心が折れない。
むしろ、サーヴァントを鼓舞して、指揮をしている。
精神的なタフさは立香の方が強いな、と愚痴めいた意見もあるくらいだ。
ではなぜ、


彼は自殺してしまったのだろうか?


違和感は、死亡日までいくつかあった。
それは、サーヴァントが彼を庇って消滅した時。
それは、異聞帯側に召喚されたサーヴァントを倒した時。
彼はぼんやりとしていて、だけども何か強い感情を瞳の奥に灯しているような、違和感。
人類最後のマスターとして選ばれてしまった当初は、不安だらけなのが丸わかりで、常におどおどしていた。
このような状況に身を落とすなど、青天の霹靂だったに違いない。
戦闘とは全く無関係の生活だったからだ。
だからこそ、彼なりに精一杯の努力をしていた。
師匠、師匠!と母の後ろを付き歩く幼子のように、魔術について教わろうとしている姿。
バーサーカーやアサシンらと肉体訓練をしている姿。
立香の鍛錬に対する姿勢は見習うべきだな、と職員は言った。
眠ってる先輩のマスターに負けてらんないよ、彼ははにかみながら返答した。
ああ、やっぱり、彼は優しい。
今、昔、未来、全ての人類を想っている。
それはサーヴァントも例に漏れない。
サーヴァントが傷を負うと、敵を恨んだ。
サーヴァントが消滅すると、泣いた。
マスターとして合格かと問われれば、それは遥かに遠い。
しかし、彼は根気強く攻略を行ってくれた。
陸上のみならず、海中でさえもだ。
洞窟で何週間も過ごしたときもあった。
ストレスが蓄積するような生活を強いられる日々だっただろう。
だからこそ、なのだろうか。
疲れ果ててしまって、役目を終えたかったから?
もう、特異点での生活が嫌になってしまったから?
だが、彼はこの世から旅立ってしまった。
死んだ理由は、本人にしか分かりえないことだ。
無責任だとか、根性が無いとか、そんな言葉をかける者は誰一人として居なかった。
いや、声に出さないだけで、実際は心の奥底に有していただろう。
それ以上に、皆は彼を失ってしまったことが悲しく、衝撃を受けたのだ。

穏やかな顔をした彼を大人数が囲んでいる。
いままでありがとう、立香。と感謝の言葉をかける神様。
早すぎるぞ、立香。と叱責する王様。
何も言えず、哀哭する女の子。
こうして、彼は看取られた。

―享年 27歳―

私たちは、絶対に彼を、立香を忘れない。

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死は、誰しもに、平等に訪れる。

俺も例に漏れず、いつかは死んでしまう。

一方では死を克服しようとする人。もう片方では受容して来世に委ねたりする人。

死への向き合い方は十人十色だ。

じゃあ、俺は…



人類最後のマスターになってから一か月。
俺の護衛をしてくれていたアサシンが死んだ。
いや、実際には死んではいない。
消滅して、一度座に帰っただけだ。
頭ではこれを理解している。
でも、心ではそれを拒絶している。
やっぱり、知ってる人が死ぬのは嫌だ。
俺があの時、こうしていれば。
俺があの時、もっと強ければ。
イフのことを考えても仕方ないのかもしれないけど、後悔ばっかだ。
だから、誰も死なせないために、俺は強くならなければない。
もっと、もっと、もっと…


六個目の特異点の最終決戦手前。
また、死なせてしまった。
今度は、セイバーとライダーの二人。
申し訳なさそうに消えていく体。
それを見ている俺は、ごめん、だとか、悔しい、といった気持ちが無くなっていた。
他人が死ぬのを見てみたい?
今でもそれは怖いよ。
サーヴァントに罪の感情を被せたい?
皆は最善を尽くしているし、そんなこと考えたことない。
じゃあ、今宿している感情はなんだ?

亜種特異点の攻略中。
仲間になった現地人が死んだ。
サーヴァントではない、ただの一般人だ。
これはかなり心に応えた。
なにせ、もう二度と会えなくなるのだから。
とても、悲しかった。
前みたいに、ごめん、悔しいといった気持ちが無くなっていたわけではなかった。
だけども、なぜかこの光景に充実している自分がいた。

三個目の異聞帯を攻略している最中。
次は、アーチャーとキャスターとランサーが死んだ。
以前死んでしまった二人と同じように、俺を守れなかったことに対して悔いていた。
そして、消えた。
俺はそれをどこか虚ろな目で見ていた。
以前も感じた違和感だ。
なぜ、俺は悲しめない?怒れない?
自問自答の繰り返しだ。
死ぬことに慣れてしまったから?
サーヴァントに無関心になってしまったから?
いや、俺はサーヴァントが好きだ。
無関心になるなんて、有り得ない。
俺は一体、何に執着しているのだ!!!
そう、心の中で叫んだ時だ。
この瞬間、心臓らへんに黒いヘドロのようなモノが纏わりついているのを理解した。
現実世界に取り込んだとしても、見るに堪えない物体。
そんな感じの、気持ち悪いモノ。
完全に、腑に落ちた。
ああ、ようやくわかったよ。
この感情に、名前を付けられるよ。



最後の異聞帯の攻略を終えた。
ダ・ヴィンチちゃんから、異聞帯は完全に無くなったから君の好きに生きるといい、と言われた。
もちろん、そうするとも。
俺が予てからの願いだった、死を迎えられるのだから。

死は美しい。
いつからかそんな思想が心に根を生やしていた。
サーヴァントや敵地で人が死ぬたびに、その根はすくすくと成長していたらしい。
仲間のために命がけで戦った後の、死。
仕えていた人への義理を果たすための、死。
攻略を続けていくほど、死に愛着が湧いていたのだ。
だからこそ、俺は誰かが死ぬたびに嫉妬していた。
仲間を鑑みての死。
なんて美しいのだろう!!!
ただ、俺は一つだけ不満があった。
サーヴァントだけは死んでも座から帰って来れることだ。
なべて生物は一度しか死ぬことができない。
だからこそ、その死をどのように迎えるかが重要なのだ。
なのに、サーヴァントは何度でも生き返ることができ、実質永久の命を所有している。
死ぬこと自体は美しい。
だが、何回でも死ねるのは、生き物と呼べるだろうか。
美しい死だとは思えても、綺麗な死だとは思えない。
だから、俺は死ぬ。
俺だけが持っている美徳、芸術と共に死ぬ。
最初で最期の刹那がどんなに心地よく、愛おしく、綺麗なのか。

そうして、俺は、ナイフで、首を、切った。

Comments

  • でらゆう
    March 8, 2022
  • @

    せっかくこのレベルの文才ある訳だし何か日常SS描いて欲しい(笑)

    July 26, 2021
  • 刹那
    June 14, 2021
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