もしもの未来で
初投稿となります〜。
FGOから入ってるので他の作品は詳しくないのでおかしいところあるかもしれないです。
聖杯戦争とかきちんと理解出来てないので…。
ぐだおで書いてみましたが、ぐだこに当てはめてももいいかもしれないなと思いつつ。
4人のアルトリアはお好きなアルトリアを当てはめてください。
因みに我がカルデアにアルトリアはリリィしか居ません。配布ですとも。わかるでしょう?
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日課である種火集めも終わり、今日の予定は無くなった。
食堂と併設している談話室では、休憩中のカルデア職員やゲームに興じるサーヴァント達で賑わっている。
その一角に人類最後のマスターこと、藤丸立香も数名のサーヴァントと共に、手作りの菓子をつまみながら談笑していた。
「しっかし、改めて見てもおかしなもんだよなぁ。同じサーヴァントがこんなにも同じところに召喚されるなんてよ。普通の聖杯戦争じゃありえねーぜ。」
「ははっ、オタクがそれを言いますか
。」
身体をひねりソファの背もたれに肘をついて、もはや大食い選手権となりつつある食堂で、4つの同じ顔が次々と皿を開けていくのを眺めるランサーのクーフーリン。
それに思わず苦笑をもらしたのは、横のテーブルでポーカーに興じるロビンフッドである。
「うるせ。あの王程じゃあねえだろう。季節ごとに増えやがってんじゃねえか?」
「言い方!」
「槍ニキ、聞かれたら怒られるよ。」
吹き出したロビンを横目に、クーフーリンを諌めるものの、立香も内心否定は出来ないので余計なことは言わず、話をそらす方向に持っていくことにした。
「普通の聖杯戦争ってさ、1人のマスターにサーヴァントは1人なんでしょ?じゃあ仲間と協力、ってのはないんだよね…?」
「それはそうだとも。マスター同士が共闘を望まない限りは全員が敵だ。」
永遠調理係を交代して上がってきたエミヤは空になりつつある皿にクッキーを追加し、横に新しいティーポットを置いた。
「あ、アールグレイでしょ、これ。」
「ご名答。」
独特の香りにスン、と鼻を鳴らし自信ありげに茶葉名を当てて見せれば、エミヤもいたずらな笑みを浮かべた。
以前淹れてくれた時に好きな香りだと言ったのを覚えてくれていたらしい。
彼から漂う母親を思わせる雰囲気はこういうところから出るのだろう。
「1人で戦い続けるのかぁ…。大変じゃない?」
「そりゃな!だがそこはマスターのバックアップ次第だな。マスターとの相性、あとはそのマスターが魔術師としてどれだけやれるか…とかな。」
遠い記憶を思い出すように、ふと目を細める彼と、話を耳に挟んでいた近くのテーブルのサーヴァント達も懐かしそうに口元を緩めた。
「あぁ、懐かしいな。そうだ、そうだ。マスターよぉ、前にも話したろ?どこ行ってもコイツが居たんだよ。いやぁ、最初はコイツと一緒のチームで戦ってても、慣れなかったね。」
「ほう、珍しく意見が合うな。私は未だに慣れないよ。気をぬくと背後から脳をかち割りたくなる。」
「……へえ。あっそう。そうかよ!どうよ、今からシュミレーターでも行こうや。存分に割ってくれて構わんぜ。出来るもんならなァ!」
棘付きの速球を流せばいいものを、毎回上手くかわさず素手で受けとめてしまう彼は、毎回こうしてひくついた笑みを浮かべ鼻面に皺を寄せる。
今にも槍を掴みそうな彼と、そんな吠え声を気にもせず立香の隣に腰をおろしつつも、今にも新しい変化球を投げつけそうな彼との間をおさめるのも毎回のことだ。
「みんな、結構覚えてるものなんだね。印象的なマスターとかいるの??」
とにかく話題をすり替え、何とか赤と青が殴り合わない方向に持っていく。
多くを従えるのもというのも大変である。
だが、この話題はなかなかであったようで、一気に話に花が咲いた。いつのまにか他のテーブルのサーヴァントもこちらの話にのってきている。
あれは良かった、いい魔術師だった、俺のマスターだって、あの子は優しくて……
次々と出てくるサーヴァント達の思い出。
苦い顔をしているものもいるが、それを笑うものもいる。
当たりの話題だったと心の中でガッツポーズをする立香だった。だったのだが。
(あ………)
どくん、どくん、と心臓の音がやけに大きく聞こえる。突然溢れ出した感情は抑えが効かない。あぁ、悲しくて、寂しくて、嬉しくて、楽しくて、何なのだろうかこの気持ちは。
サーヴァント達が話す優秀な魔術師達と自分との圧倒的差。
サーヴァント達を最高に活かせたマスター達と未だに采配に自信がない自分との劣等感。
楽しそうに笑う仲間がここにいること。
それが自分が守れる笑顔であること。
自分が嫌になる話なのに、彼らが楽しそうで、嬉しくなる。
全てが混ざって、心と感情が分離している感じがした。
そう、だって、彼らの笑顔が大好きなのだ。
自分がどうこうよりも、彼らが嬉しそうにしているのが、好きなのだ。
「ねえ、あのさ……」
守られてばかりでも戦い続ければ。例え自分が消滅しようとも、倒せれば。
「もしも、俺が人類を救えて。もしも未来で聖杯戦争が起きて。」
きっと未来でいつか聖杯戦争が起きる。
「もしもこのカルデアで仲間だった顔がいたらさ、敵かもしれないけど、1日…いや、1時間でもいいんだ。」
そしたらそこで、みんなで得た未来で。例え自分が居なかったとしても。
「また一緒に酒でも飲んでよ。例え相手がここの記憶を持ってなくても、お前は一緒に人類の未来を救ったんだぞ、って肩組んでさ。」
声が、固く握った拳が、小刻みに震えている。悲しいわけではなく、苦しいわけでもなかった。
気づけば皆、話を止め静かに立香の話を聞いている。
はじめからそうだった。例え違う作業をしていようとも、近くに立香がいるのなら、声を、気配を、確実に捉え常に気にかける。
そういう奴らだった。
「それで、もし…。もしもだよ?」
もはや、目の前にいるサーヴァントの輪郭は分からない。何人のサーヴァントがこちらを見ているのかも分からない。目の奥が、耳が、熱くて、自分がちゃんと言葉を紡げているのかも曖昧だ。
「もしも、俺たちが守った未来で、俺のことを覚えていたのならさ、」
悲しくはなく、寂しくもない。なのに1度流れた涙は止まることなく流れ続ける。しかし心はぽかぽかと、まるでストーブのように暖かさを保ち、熱を増していく。
「少しで、いいんだ。俺のことを思い出して、笑ってよ。礼装着なきゃ、魔術1つ使えない、ダメなマスターが居たなって。何もできないくせに、人理を救うだなんてバカみたいなことに挑んだバカな人間が居たなって。
」
特異点を修復する度に、もし、人理を修復できたら、と未来に想いを馳せる。
特異点を修復する度に、それがだんだんと現実味を帯びていく。
人類の未来が守れたら。そして自分も運良く生きて帰れたら。
きっと外との通信が復活して、凍結されていたマスター達が少しずつ目を覚ます。
きっと魔術協会はパニックだ。俺は様々な質問を受けるだろう。それに答えて、それが済んだら……。
済んだら、おそらく、俺は、お役御免だ。
俺より優秀な魔術師達が目を覚ます。そしたら俺は、もう必要ない。
凡人をマスターにしなければならない危機的状況では無いのだから。
そしたら、俺はどうなる?
もしかしたら国へ帰れるかもしれない。
もしかしたらそのまま職員としてカルデアに置いてもらえるかもしれない。
でも、もしかしたら……
俺は、俺であることを忘れさせられてしまうかもしれない。
多くを知りすぎてしまった自覚はある。
多くを成し過ぎてしまった自覚がある。
きっと俺の存在は、魔術協会にとって邪魔なものだ。世界にとって信じ難いものだ。
俺が俺を忘れてしまったら、一体誰が俺を俺だと分かるだろうか。
だから、どうか、俺が俺であったことを、
俺という存在が居たことを、
どうか、どうか、証明してほしい。
他でもない俺の信頼なる仲間達によって。
俺の大好きな彼らの笑い声の中で。
俺を生き返らせてほしい。
「…………なんてね!」
そう願うのは罪だろうか。
Comments
- misyou.go4September 11, 2018