東大寺(奈良市)の勧進所経庫で保管されてきた愛染明王坐像が平安時代後期(11世紀)の作とみられることなどが分かり、同寺ミュージアムで初公開されている。同像は経典で説かれる指5本分の大きさに造られた「五指量愛染」で、現在寺院などに残る愛染明王像の中でも最古級の像として貴重という。
東大寺の勧進所経庫と指図堂において令和4年6月から5年11月まで、同寺の岩田茂樹上席研究員らが行った未指定彫刻の調査により確認された。
像高11・9センチの小ささで、6本の腕を持つ。真言密教の経典「瑜伽瑜祇経(ゆがゆぎきょう)」に説かれる指5本分の大きさの像で、一木造。大きく見開いた丸い目などから平安時代後期にさかのぼる作という。
愛染明王は人の愛欲などを浄化して悟りへと至らせる仏。その信仰は平安時代後期から盛んになり、同時代の像の現存例としては京都・仁和寺の愛染明王坐像(重要文化財)などがある。同ミュージアムの久永昂央学芸員は「愛染明王の信仰は文字資料ではよく分かるが古い像は少なく、調査された像は貴重な例」と話す。
また調査では、鎌倉時代の愛染明王坐像も確認された。像高37・2センチで、肉感的な腕の表現などが優れている。X線CT調査で体内に巻子状の納入品が見つかった。
いずれも、同ミュージアムの開館15周年記念リレー展示「八宗兼学の寺」の第3弾「東大寺の真言密教-愛染明王」(4月23日まで)で展示されている。