<社説>誘導弾部隊の配備容認 町民に受け入れ理由示せ


<社説>誘導弾部隊の配備容認 町民に受け入れ理由示せ
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 陸上自衛隊与那国駐屯地への中距離地対空誘導弾(ミサイル、中SAM)部隊の配備計画について、与那国町の上地常夫町長は小泉進次郎防衛相との会談で「多くは異を唱えない」として受け入れを表明した。受け入れによって政府の配備計画は進展することになる。

 町長選で上地町長は自衛隊増強に慎重姿勢を表明し、当選した。配備強化に一定の歯止めを設けようとする姿勢が町民の支持を集めたと言えよう。町内には地対空ミサイルの配備に根強い反対もある。

 3月の住民説明会で「さまざまな意見を聞いて判断する」としていた上地町長は小泉防衛相との会談後、安保政策は「国の専権」とも述べている。今回の受け入れ表明を重大な政策転換だと受け取る町民もいるはずだ。上地町長は説明責任を果たすべきだ。

 地対艦ミサイルの町内への配備も取りざたされている。上地町長は地対艦ミサイルの配備について「今のところ厳しい」「これ以上の新たな部隊配備は慎重にならざるを得ない」と述べている。町民の懸念からすれば当然だ。

 国が配備を進める可能性のある地対艦ミサイルに対する町の姿勢を示すためにも、今回の地対空ミサイル容認がいかなる考えに基づくのかを町民に明らかにするべきだ。曖昧な説明は許されない。

 2016年に開設された陸自与那国駐屯地は、当初は沿岸警備を目的とした部隊配備であった。その後、電子戦部隊、ミサイル部隊が追加配備されている。地対空ミサイル部隊に関する3月の住民説明会でヘリパッドや火薬庫、屋内射撃場も整備されることが分かった。軍事拠点の設置とも言える計画だ。

 15年に当時の町政が進める自衛隊の誘致の是非を問う住民投票では賛成が上回った。自衛隊誘致による町の活性化に一定の理解が得られた結果と言える。ただ、その後の部隊増強によって与那国の自衛隊の役割は警備や監視から攻撃拠点へと変質した。一方で、町の人口減少は歯止めがかかっていない。町民の不安や憤りは当然である。

 ミサイル配備の増強は与那国だけの話ではない。3月末には熊本市と静岡県の陸自駐屯地に長射程ミサイルが初配備された。これによって、自衛目的で反撃を可能とする敵基地攻撃能力(反撃能力)の運用が始まった。

 専守防衛を掲げた日本の戦後の安全保障政策は大きく転換した。敵基地攻撃能力を保有する部隊配備で、住民側には攻撃目標として狙われるとの不安が高まっている。政府は外交努力で緊張緩和を図る努力を尽くしてもらいたい。

 与那国町の上地町長は、配備による隊員増で医療や保育の体制維持に懸念があるとも言及した。離島で安心して暮らしていくための医師確保などについて、国はミサイル配備とは切り分けて支援を検討するべきである。