4 ガバメントクラウド利用検討の基本的な考え方
2025/03/10 公開
3.1に記載のとおり、デジタル行政推進法Opens in new tab 第二十三条第二項において、国の行政機関等は、公共情報システムの整備を行おうとするときに、ガバメントクラウド利用の検討義務、国の行政機関等以外の行政機関等は、利用検討の努力義務が課されることになる。
これは、国の行政機関等と国の行政機関等以外の行政機関等ともに、あくまで利用検討の義務(又は努力義務)が課されるものであって、ガバメントクラウド利用を義務付けるものではないことにご留意いただき、本項で示す基本的な検討の考え方や検討のポイントを参考にガバメントクラウドの利用を検討されたい。なお、政府情報システムについては、重点計画において、「原則として、政府情報システムは、クラウドに最適化されたシステムをガバメントクラウド上に構築し、クラウドサービス事業者が提供するサービスを活用して効率的に運用する。」とされていることから、ガバメントクラウドの利用を積極的に検討いただきたい。
本資料に記載する検討の考え方に沿った検討を行うことは法律上の義務として求められているものではないため、各行政機関等の事情に合わせて、異なる観点から検討を行っていただくことも差し支えない。
4.1 利用検討の基本的な考え方
4.1.1 利用環境の選択肢と留意点の①~④を参考に、4.1.2の検討フローに沿って利用を検討することを基本とするが、これとは異なる観点で検討することも妨げない。
基本的な考え方は、「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針Opens in new tab」にならい、外部SaaS利用を優先し、その利用が難しい場合には、ガバメントクラウドの利用を検討し情報システムの状況や性能等の観点から、機密性、機能面で利用不可とならない場合には、ガバメントクラウドを利用することが推奨される。
このほか、経済合理性(コスト削減や費用対効果)、ガバメントクラウドの優位性(ガバメントクラウド上の情報システムとのデータ連携のし易さ、事務の効率化、効果的効率的なセキュリティの実装や閉域接続が必要な場合に政府情報システムはGSSネットワークの利用など)など情報システムの現状等を踏まえ、最も適した利用環境を選択すること。
なお、政府情報システムについては、一元的プロジェクト監理によるプロジェクト計画書において、ガバメントクラウドの利用を検討した結果、移行しない又は現時点においては移行しないという結論に至ったものについては、 その検討過程・理由等をプロジェクト計画書において明らかにするとともに、ガバメントクラウド移行以外のコスト削減の取組を記載し、当該取組事項の効果(コスト削減見込みを含む。)を明らかにすること。
4.1.1 利用環境の選択肢と留意点
① 外部SaaSの利用
「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針Opens in new tab」の「3.1 クラウドサービスの選択 」のSaaSの優先的利用方針に基づき、扱う業務の効率化に資する外部SaaSがある場合は積極的に採用すること。
外部SaaS利用時の留意事項を以下に示す。
<外部SaaS利用時の留意事項>
- 外部SaaS利用にあたっては、各行政機関等のセキュリティポリシー(地方公共団体等においては、「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を参考に、各自治体において定めるセキュリティポリシー)等のルールを踏まえる。
- 既に外部SaaS利用をしている場合は、利用中の外部SaaSの継続利用以外に以下の検討を行い、より良い選択肢が存在する場合はその方式を採用する。
- ガバメントクラウド上に同種の公共SaaSが提供されている場合にはその利用を検討すること
- 長期間(2~3年)同じ外部SaaSを利用している場合にあっては、最新のSaaS市場の動向やコスト構造等を検証し、他の外部SaaSへの乗り換えやガバメントクラウドを利用した個別システムの開発も含め利用環境の再検討を行うこと
② ガバメントクラウドの利用
ガバメントクラウド環境利用時の留意事項を以下に示す。
<ガバメントクラウド環境利用時の留意事項>
- 政府情報システムや独立行政法人等情報システムについては、モダン化(※)が利用条件となる。
- 地方公共団体等の情報システムについても、モダン化(※)を強く推奨する。
- ガバメントクラウド利用のメリットを十分に享受できないことを理解した上でモダン化せずにガバメントクラウドを利用する判断は妨げない。
- なお、標準準拠システム(関連システムも含む)については、ガバメントクラウドへの移行後のシステムにおいてモダン化を推奨する。
(※) モダン化について、4.2 利用環境を検討する場合のポイント①(モダン化) を参照のこと。
③ ガバメントクラウド以外のパブリッククラウド利用
ガバメントクラウド以外のパブリッククラウド環境利用時の留意事項を以下に示す。
<ガバメントクラウド以外のパブリッククラウド環境利用時の留意事項>
- ガバメントクラウドは行政システム用途としてパブリッククラウドの十分な範囲を網羅しているため、技術的な理由でガバメントクラウドに優先されることは基本的には想定されない
- 一方で、情報システムの状態や性能等を踏まえて、機能・非機能面や経済合理性の観点(※)でガバメントクラウドの環境利用が困難な場合は、パブリッククラウド環境の利用が選択となる
(※) 機能・非機能面や経済合理性については、4.1.2 各利用環境選択の検討フロー の注釈を参照のこと
④ オンプレミスの利用 (自治体クラウドを含む)
各機関のセキュリティポリシー等に基づく機密性要件や超高性能機が必要であるなど、機能面・非機能面や経済合理性の観点(※)でガバメントクラウド環境の利用が困難な場合に選択肢となる。
(※) 機能・非機能面や経済合理性については、4.1.2 各利用環境選択の検討フロー の注釈を参照のこと
4.1.2 各利用環境選択の検討フロー
図 4-1 ガバメントクラウド利用検討フロー図
-
(注1)機能面・非機能面で利用不可である場合とは : ガバメントクラウドで許容されていないサービス(国外リージョン利用(ガバメントクラウドでは国内リージョンに限定)や料金前払いのサービス(国又は地方公共団体等の会計制度で禁止)を利用したい場合や永続的にハイブリッド構成となる場合等(※)が想定される。
- ※上記のほか、ガバメントクラウドの機能で代替できない場合であって、以下のような場合が考えられる。
- 管理する組織の対象アカウント・テナント等に独自でコントロールを効かせる必要がある。
- 独自でユーザー管理するIdP(アイデンティティプロバイダ(認証サービスを提供する事業者やシステム))でCSPとSSO(シングルサインオン。一度の利用者認証で複数のコンピュータやソフトウェア、サービスなどを利用できるようにすること)する必要がある。
- 民間再販事業者の請求代行・再販サービスを使う必要がある。
- ガバメントクラウドで禁止しているPaaS(詳細は各CSPの「ガバメントクラウド利用概要(予防的統制の設定内容)」を参照)を使う必要がある。
- ※上記のほか、ガバメントクラウドの機能で代替できない場合であって、以下のような場合が考えられる。
-
(注2)経済合理性について : 4.3を参考にしていただくほか、将来、ガバメントクラウド上に構築されることが予定されている情報連携基盤(公共サービスメッシュなど)の利用にあたっては、ガバメントクラウド上にデータがある(又は連携できる状態にあること)ことが前提となることも想定されることなども踏まえ、PJMOの責任において総合判断されたい。なお、政府情報システムにおいては、重点計画において、原則ガバメントクラウドを利用することとされていることも踏まえること。
表4-1 各利用環境の比較
| 比較項目 | 外部SaaS | ガバメントクラウド | オンプレミス | パブリッククラウド (ガバメントクラウド以外) |
|---|---|---|---|---|
| 初期費用 | 不要 | 多くの場合は不要 | 必要なハードウェア・ソフトウェア一式の準備費用 | 多くの場合は不要 |
| ランニングコスト | 月額料金、従量課金 | 月額料金+従量課金 | 機器等借料、電気代、保守点検費、場所代、管理する人件費等 | 月額料金+従量課金 |
| 導入までの期間 | 契約後すぐ利用可能 | 契約後すぐ利用可能 | 必要な設備が整うまで(たいてい数ヶ月〜) | 契約後すぐ利用可能 |
| カスタマイズ | 原則不可 | 各サービス形態に応じて許容される範囲まで | 自由 | 各サービス形態に応じて許容される範囲まで |
| ネットワーク | 独自調達 | 独自調達、GSS、LGCS(拠点-ガバクラ)、GMCN(ガバクラ間、共通サービス) | 独自調達 | 独自調達 |
| セキュリティ | SaaSの仕様による | 運営会社により様々(ベースラインセキュリティやゼロトラストセキュリティを強制適用、データ主権免除を契約に記載) | 必要なセキュリティを必要な分実装可能 | 運営会社により様々 |
| 廃止 | SaaS事業者への申請 | デジタル庁に廃止申請+オンラインから簡単に廃棄(たいてい数日〜) | 機器撤去、原状回復、データ消去等(たいてい数ヶ月〜) | オンラインから簡単に廃棄(たいてい数日〜) |
4.2 利用環境を検討する場合のポイント①(モダン化)
ガバメントクラウドは単なるインフラ環境やクラウド環境ではない。デジタル庁が精査し、利用者の安心・安全と便利を追求したクラウドであるとともに、システムのモダン化(高コストの要因となる旧来技術からの脱却)を目的とする利用システムに対し、最適なクラウド環境を手段として提供している。
「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針Opens in new tab」の 3.5 5)では、モダン化の説明として「自らはサーバーを構築せずマネージドサービスの組合せだけでシステムを構成する、IaCを使う、インターネット接続(閉域網依存からの脱却)、フロントエンド・バックエンド分離型のWebシステム(クライアントサーバー方式やWeb3層モデルからの脱却)、APIで連携する、自動化の徹底(テスト、変更、デプロイ、運用管理)、動的なリソース管理(その時点で必要な分のみ)など、クラウドならではの考え方とする。」としている。
具体的には、モダン化した構成とは以下の構成を指す。ただし、Replatform(リプラットフォーム)で移行する情報システムであっても、最終的にはRebuild(リビルド)構成を目指す必要がある。(詳細は、「ガバメントクラウド概要解説 6章 必須検討項目」参照)
なお、地方公共団体等のシステムや独立行政法人等情報システムについても、モダン化した構成を推奨する。
-
① Repurchase(R3)
- SaaSなどを活用し個別にアプリケーション開発せずにシステムを実現する形態
- SaaS利用は、開発量の削減に繋がるため強く推奨される
- 詳細は、4.1 利用検討の基本的な考え方の方針を参照。
-
② Rebuild(R2)
- アプリケーションのコードを新規で書き起こして、旧データの必要な部分を取り込む形態。
- 「リファレンスアーキテクチャ」を参考に完全にモダン化された状態(GCASガイド参照)で移行する。
- 新規システムはこの状態を原則とする。
-
③ Replatform(R1)
-
一括でのモダン化が難しい場合に、一段階目は部分的(運用監視やデータベース等)にマネージドサービスに置き換えて、 二段階目でR2構成とすることも許容される。
-
二段階目の移行時期については、プロジェクト計画書等にその時期を必ず明示する。
-
図 4-2 ガバメントクラウドへの移行パターン
4.3 利用環境を検討する場合のポイント②(経済合理性)
利用環境を選択するにあたっては、経済合理性(コスト削減や費用対効果)は重要な指標となる。
コスト削減については、クラウドサービスのスマートな利用(モダン化)が重要な要素であり、マネージドサービスの活用、サーバレスアーキテクチャ、IaCとテンプレートによる環境構築の自動化等を取り入れることが推奨される。(「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針Opens in new tab」の 1.6 を参照)
費用対効果については、ガバメントクラウドへの移行を行うことで、情報システムに係る整備及び運用等に要する費用と、これにより生じる利用者側の効果、行政機関等側の効果、アプリケーションの刷新を前提としたBPRによる効果等を勘案する。なお、政府情報システムにおいては、「一元的なプロジェクト監理の実施について」に沿って費用対効果を検証されたい。
具体的には、既存のシステムがある場合は移行後のシステム運用の効果が現行のシステム運用の効果を上回るかどうか(※)、新規のシステムの場合には移行後のシステム運用の効果が他の環境へ移行した場合におけるシステム運用の効果を上回るか、システムを導入しなかった場合と比較して利用者の利便性向上や行政の効率化が実現するかどうか、を勘案する。なお、効果を考える上では、運用経費の削減効果だけでなく、アプリケーションの刷新を前提としたBPRに伴う効率化効果も勘案する必要がある。そのほか、利用者にとっての便益についても評価する必要がある。例えば、個人や法人が手続等に要する時間の削減などを定量的に評価するとともに、 これまでにない新たな利用者の体験の向上など利便性が向上することも便益として考慮する必要がある。
(※)ガバメントクラウド移行後の運用効果を算出するにあたり、移行前環境と同じ運用フロー、体制、作業項目により積算するのではなく、作業自動化、IaC活用などモダン化された運用方式を前提として算出すること。
なお、利用環境を検討する際には、上記コスト削減や費用対効果以外にも、ガバメントクラウド利用による様々な優位性(ガバメントクラウド上の情報システムとのデータ連携のし易さ、事務の効率化、効果的効率的なセキュリティの実装や閉域接続が必要な場合に政府情報システムにおいてGSSネットワークを利用できるなど)など情報システムの現状や性能等も踏まえて総合勘案し、最も適した利用環境を選択すること。
4.4 利用環境を検討する場合のポイント③(地方公共団体等の情報システム)
地方公共団体標準準拠システムについては、地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(令和三年法律第四十号)Opens in new tabに基づき、デジタル行政推進法Opens in new tabに優先してガバメントクラウドの利用を検討されたい。
なお、ガバメントクラウドに移行した標準準拠システムについては、次期更改や大規模改修時において、モダン化されたパッケージソフトが提供された場合には、適宜のタイミングでそのパッケージに切り替えることを推奨する。
その他の情報システムは、パッケージソフトの利用、個別システム開発を問わず、検討の結果、ガバメントクラウドを利用する場合には、本資料及びGCASガイド等を参照の上、情報システムのモダン化も検討することを推奨する。なお、モダン化をする場合に不明な点等があれば、ガバメントクラウド担当に個別に相談されたい。
上記は、検討の結果、ガバメントクラウドを利用する場合の留意点であり、ガバメントクラウド以外でのパッケージソフト利用、個別システム開発を妨げるものではない。
以上