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デジタル庁GCASガイド

8. 共有ストレージのマネージドサービス化

2026/04/22 公開

クラウド環境での共有ストレージの実現方法として、以下の2つのアプローチがある。クラウドの効果的な活用のためにはアプローチAが望ましいが、アプリケーションへの影響度・改修コストを踏まえてアプローチを選択した上で、クラウド移行の設計を進めることを推奨する。

  • アプローチA(オブジェクトストレージへの移行):APIベースのオブジェクトストレージサービスを利用する。容量上限なしの従量課金・バージョニング・ライフサイクル管理によりコスト最適化と運用自動化の効果が大きいが、アプリケーションのファイルアクセス部分の改修が必要となる
  • アプローチB(マネージドファイルサービスの活用):NFS/SMBプロトコルに対応したマネージドサービスを利用する。アプリケーションの改修を最小限に抑えられるため、R1での対応として実用的な選択肢となる場合が多い

8.1 オンプレミス共有ストレージ方式のクラウド移行

アプローチA、アプローチBそれぞれの方式の移行方針を以下に示す。

表8-1 アプローチA:オブジェクトストレージへの移行方針

共有ストレージ方式検討ポイントクラウド移行時の対応説明
ファイルサーバーのオブジェクトストレージ化設計変更が必要オブジェクトストレージへの移行により、ハードウェア・OS・ソフトウェアの管理が不要となり、容量上限を意識することなく従量課金で利用できる。ただし、アプリケーションのファイルアクセス部分をAPI(HTTPS)経由のアクセスに変更する必要がある。
アプリケーションからのファイルアクセス(NFS/SMB→API)設計変更が必要オブジェクトストレージへのアクセスはNFS/SMBではなくAPI(HTTPS)プロトコルを使用する。アプリケーションのファイル接続部分をAPI経由のアクセスに変更する必要がある。
ファイルロックを使用する処理設計変更が必要オブジェクトストレージはファイルロック機能を持たない。ファイルロックを前提とした処理はアプリケーション側での排他制御の実装に設計を見直す必要がある。
ファイルの部分更新(末尾への追記等)設計変更が必要オブジェクトストレージはファイルの部分更新ができない。部分更新を前提とした処理はファイル全体の上書きに変更する必要がある。
サイズの小さいファイルの大量処理設計変更が必要オブジェクトストレージは従来のファイルシステムと比較してレイテンシーが大きく、サイズの小さいファイルを大量に処理する場合に性能劣化のリスクがある。該当する処理については性能検証を早期に実施し、問題がある場合はファイルの集約やバッチ処理の見直しを検討する。
ファイルのバックアップ設定のみで対応可能オブジェクトストレージのバージョニング機能を有効化することで、ファイル単位の誤削除・不正更新に対するバックアップを実現できる。オブジェクトストレージはシステム障害によるデータ消失リスクが極めて低いため、システム障害対策としてのバックアップは不要となる。

ただし、遠隔地保管要件がある場合は、他のリージョンへのオブジェクトコピー運用の検討を行う必要がある。
遠隔地保管(リージョン間コピー)設定のみで対応可能各CSPのオブジェクトストレージが提供するリージョン間コピー機能を利用することで、設定のみで遠隔地保管を実現できる。
ファイルの長期保管・コスト最適化設定のみで対応可能オブジェクトストレージはアクセス頻度に応じた複数のストレージクラスが提供されており、アクセス頻度の低いファイルを低コストのストレージクラスに自動移行するライフサイクル設定が利用できる。ファイルの利用用途・アクセス頻度に応じたストレージクラスと保管期間を設計することでコストを最適化できる。

表8-2 アプローチB:マネージドファイルサービスの活用方針

共有ストレージ方式検討ポイントクラウド移行時の対応説明
ファイルサーバーのマネージドファイルサービス化(NFS/SMB継続)追加作業ありクラウドが提供するマネージドファイルサービス(NFS/SMB対応)を利用することで、ファイルサーバーを個別に構築することなく従来と同様のNFS/SMBアクセスを維持できる。ハードウェア・OS・ソフトウェアの管理はCSPの責任範囲となる。アプリケーションのファイルアクセス部分の改修は不要だが、接続先の変更設定が必要となる。
HA構成・自動フェイルオーバー設定のみで対応可能マネージドファイルサービスではHA構成オプションが提供されており、サービス設定のみで冗長構成を実現できる。個別に冗長構成を構築する必要はない。
ファイルサーバーのバックアップ設定のみで対応可能マネージドファイルサービスではバックアップ機能が提供されており、スケジュール設定のみで自動バックアップを実現できる。バックアップサーバーの構築は不要。
ファイルの長期保管・コスト最適化設定のみで対応可能マネージドファイルサービスはアクセス頻度に応じたストレージ種別の選択が可能であり、ライフサイクル設定を活用することでコストを最適化できる。

8.2 クラウド環境で新たに必要な共有ストレージ設計

クラウド環境への移行にあたっては、オンプレミス環境にはなかった以下の共有ストレージ設計を新たに検討する必要がある。

表8-3 クラウド環境で新たに必要な共有ストレージ設計

該当アプローチ項目説明
アプローチA・B共通ストレージ性能の設計マネージドファイルサービスおよびオブジェクトストレージはサービスの種類・設定によってスループットやIOPSが異なる。アプリケーションの性能要件を踏まえた上でサービスの種類と性能設定を選択する。特にオブジェクトストレージへの移行時は、レイテンシーの影響を事前に性能検証することを推奨する。
アプローチA・B共通保管コストの最適化クラウドの共有ストレージサービスは容量に対する従量課金となるため、ファイルの利用用途・アクセス頻度に応じたストレージクラスと保管期間を設計する。不要なファイルの自動削除ルールをライフサイクル設定で定義することでコストを最適化できる。
アプローチA・B共通データ暗号化共有ストレージに保管するデータの暗号化要否を確認し、必要に応じてサーバーサイド暗号化を設定する。クラウドの鍵管理サービスと組み合わせることで暗号化鍵の管理も一元化できる。
アプローチA固有アクセス権限設計オブジェクトストレージはデフォルトで非公開となっているが、設定変更により意図せず公開状態になるリスクがある。最小権限の原則に基づいたアクセス権限設計を行うとともに、各CSPが提供するパブリックアクセス防止機能を有効化することを推奨する。
アプローチA固有最終的整合性への対応オブジェクトストレージではサービスにより、ファイルの新規作成・削除後にファイルリストの取得結果へ反映されるまでに時間差が発生する場合がある(最終的整合性)。ファイルリストの即時反映を前提とした処理がある場合は、設計の見直しが必要となる点に留意すること。

8.3 参考資料

8.3.1 CSP別 技術ガイド

オンプレミス環境の共有ストレージからオブジェクトストレージへの移行の際の考慮事項をまとめている。検討の際の参考としていただきたい。