5. バックアップ機能のマネージドサービス化
2026/04/22 公開
クラウド環境ではバックアップサービスがマネージドサービスとして標準で提供されており、バックアップサーバーを構築することなくバックアップ基盤を整備できる。スケジュール実行・保管期間管理・リージョン間コピーといった機能もマネージドサービスとして利用できるため、バックアップ運用の自動化と低コスト化を同時に実現できる。
なお、クラウドのストレージサービスは高い耐久性を持つが、それはハードウェア障害等によるデータ消失リスクへの対策であり、誤操作・誤削除・ランサムウェア・想定外事象等によるデータ消失には対応していない。そのため、重要データについては複数世代の保持・遠隔地レプリケーション等を組み合わせたバックアップ設計が必要である。
5.1 オンプレミスバックアップ方式のクラウド移行
以下に、オンプレミス環境で一般的に実施されているバックアップ方式ごとの移行方針を示す。
表5-1 バックアップ方式別クラウド移行方針
| バックアップ方式検討ポイント | クラウド移行時の対応 | 説明 |
|---|---|---|
| 仮想マシンのバックアップ | 設定のみで対応可能 | クラウドのバックアップサービスにより、仮想マシン(ブロックストレージ)のスナップショットを取得できる。 バックアップサーバーの構築は不要である。 |
| データベースのバックアップ | 設定のみで対応可能 | データベースのマネージドサービスを利用している場合は、自動バックアップ機能が標準で提供されており、保管期間の設定のみで自動的にバックアップが取得される。 バックアップサーバーの構築は不要である。 |
| ファイルサーバー・共有ストレージのバックアップ | 設計変更が必要 | オブジェクトストレージへの移行後は、バージョニング機能を利用することで誤削除・不正更新に対するバックアップを実現できる。マネージドのファイルサービスを利用する場合は、サービスのバックアップ機能を活用する(詳細は8章を参照)。 |
| バックアップのスケジュール実行・順序制御 | 設計変更が必要 | オンプレミスのジョブ管理ソフトウェアによるバックアップ実行制御は、クラウドのバックアップサービスのスケジュール機能・ワークフローサービス・イベント連携サービスの組み合わせで実現できる。ジョブ管理ソフトウェアの導入は不要である。 |
| バックアップ媒体(テープ等)の管理 | 廃止検討 | クラウドのバックアップサービスはストレージへの従量課金であり、媒体の調達・管理・交換作業は不要となる。 |
| 遠隔地バックアップ(災害対策) | 設定のみで対応可能 | クラウドのバックアップサービスが提供するリージョン間コピー機能を利用することで、遠隔地へのバックアップを設定のみで実現できる。物理的な媒体搬送は不要となる。 |
5.2 クラウド環境で新たに必要なバックアップ設計
クラウド環境への移行にあたっては、オンプレミス環境にはなかった以下のバックアップ設計を新たに検討する必要がある。
表5-2 クラウド環境で新たに必要なバックアップ設計
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| CSPの責任範囲の確認 | クラウドサービスではCSPの責任範囲(サービス自体の設定・ソフトウェア・インフラ等)に対するバックアップは不要となる。利用システムとしてバックアップすべき対象(アプリケーションデータ・設定ファイル等)を明確にした上で設計する。 |
| バックアップ保管コストの最適化 | クラウドのバックアップ保管は容量に対する従量課金となるため、バックアップの利用用途(短期保管・長期保管)および災害対策要否に応じた保管先サービスと保管期間を設計する。 詳細は5.3を参照。 |
| リストア手順の整備と定期検証 | バックアップの目的はリストアにある。クラウド環境でのリストア手順の整備と、RPO(Recovery Point Objective:目標復旧時点)・RTO(Recovery Time Objective:目標復旧時間)要件を満たすことの検証を事前に実施する。 |
5.3 バックアップ保管先の設計
バックアップの利用用途および災害対策要否に応じた保管先サービスと保管期間の設計指針を以下に示す。
- 短期保管(直近のリストア用途):バックアップサービスの標準ストレージを利用する。検索・リストアが容易だが、長期保管にはコストがかかるため保管期間を適切に設定する。
- 長期保管(監査・コンプライアンス用途):オブジェクトストレージの低コストストレージクラスを利用する。アクセス頻度が低い場合はさらに低コストのアーカイブストレージへの移行も検討する。
- 災害対策(リージョン間コピー):バックアップサービスのリージョン間コピー機能またはデータベースサービスのリージョン間レプリケーション機能を利用する。
利用用途に合わせた保管先・保管期間を適切に設計することで、必要なバックアップを確実に保管しつつコストを最適化できる。
5.4 参考資料
5.4.1 リファレンスアーキテクチャ
具体的なサービス選定や構成検討の際は、各CSPのリファレンスアーキテクチャを参照されたい。
どのように構成するかの実現例を具体的に示しており、アーキテクチャ検討の参考として活用できる。
- AWSの非機能ブロック実現例 - 2.14 バックアップ(AWS)
- Google Cloudの非機能ブロック実現例 - 2.14 バックアップ(Google Cloud)
- Azureの非機能ブロック実現例 - 2.14 バックアップ(Azure)
- OCIの非機能ブロック実現例 - 2.14 バックアップ(OCI)