割安株投資は「買って気絶」の心構えで(苦瓜達郎)
三井住友DSアセットマネジメントシニア・ファンドマネージャー
前回9月3日付けの当欄で「異常な割安水準まで売り込まれた銘柄が多い」と指摘しましたが、掲載とほぼ同時に市場の流れが一変しました。PBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)の低い割安株が突然上昇する一方、割高な水準にまで買い上げられていた人気株が下落するという二極化相場が突然出現したのです。私の原稿が市場に影響を与えた……なんてことはないと思いますが、おかげさまで苦戦が続いていた私の運用成績も一息つくことができました。
突然の注目の理由は?
なぜ市場が突然割安株に注目したか、という点については、多くの論者が様々な推論を行っています。いわく、米国経済が堅調であることが確認された。いわく、米中協議の再開が発表された。いわく、欧州のマイナス金利が拡大した……等々。多くの外部要因との関連が指摘されていますが、なぜこのタイミングで市場の流れが一変したかという点について、すっきり腹に落ちる解説はありませんでした。世界経済をつぶさに観察し続けていたとしても、ちょうど8月末に割安株重視の姿勢に転じることは困難だったでしょう。
今後この流れが継続するかどうかについても、意見はほぼ半々に割れています。
割安株相場「続く派」対「続かない派」
割安株相場が継続すると予想する論者は、PBRやPERで見た人気株との格差が依然として大きいことを指摘しています。一方、再び一握りの人気株に物色対象が集中すると主張する論者は、世界経済の鈍化や政治の混迷が深まっていることを重視する傾向にあります。
私自身は、短期的な市場動向の予想は行わないようにしています。割安株相場が続いてくれることを期待はしていますが、あまりに今月前半の動きが極端だったため、短期的に調整があっても文句は言えないとも感じています。その程度の予測にとどめており、短期動向を運用方針に反映させることはありません。
そもそも「割安株投資」とは、短期の相場動向を気にしながら行うべきものではないと思います。他の投資家に人気がないから割安に放置されている銘柄に投資する以上、投資期間としては中長期を見据えるべきでしょう。他人の気持ちの変化を予想するのはとても困難なことであるため、常に最善のタイミングで売買を行おうとするのは誤りです。
割安株への向き合い方
特に個人投資家の方は、我々のように期間を切って他者に評価される訳ではないのですから、思いついた時に買い、株価が上昇するまでじっと待つ、という戦略が適すると思います。特に購入後しばらくは一切株価を見ず、思い出した時点で再確認する(そして株価が上昇していなければ再度忘れる)くらいでちょうどいいと思います。
現状の株価水準は、8月の底値から数%上昇したにすぎず、前回指摘したような異常な割安状態にある銘柄が多く存在するという点に変化はありません。依然として割安株投資を開始するのに適した状況であり、もし買ったならば、短期的な割安株相場の継続性を気にするのではなく、しばらくは「気絶」していることをお勧めします。
三井住友DSアセットマネジメントシニア・ファンドマネージャー。1968年生まれ。東京大学経済学部卒業後、91年大和総研入社。アナリストとして窯業やサービス業の担当を経て中小型株を担当。2002年に当時の大和住銀投信投資顧問入社。中小型株ファンドの運用に携わる。