残念な知らせが飛び込んできた。
まずは、亡くなった戦車隊員たちの御めい福を祈る。
大分県にある陸上自衛隊の日出生台演習場で実弾射撃中の10式戦車の砲塔内で砲弾が破裂したというものだ。
車長、砲手、安全係の3人が死亡し、操縦手が負傷した。
2名は即死、1名は心肺停止後に死亡が確認されたそうなので、砲弾は砲尾で破裂し、左右にいた車長及び安全係が即死、やや離れた場所の砲手が心肺停止状態だったのだろう。操縦手の女性自衛官は爆破衝撃を受け前方の操縦ハンドルやパネルに激突した可能性がある。
元戦車乗員として、胸が苦しくなる出来事だ。
同様の砲塔内での戦車砲弾破裂事故としては昭和50年代に61式戦車の砲塔内で黄燐発煙弾が破裂した事故があったようだ。。
この事故では装填手が死亡、車長、砲手が負傷したという話だ。
聞いた話なので確かではないのかもしれないが、この事故は砲発射により後座した砲尾に装填手が抱えていた次弾の黄燐発煙弾(WP発煙弾もしくは白リン弾)の弾頭が当たったという話だった。
詳細は分からないが、弾頭亀裂により黄燐が自然発火、その熱で内部の少量の炸薬が爆発し砲弾が破裂したのではないかと推測する。
なぜ、対戦車榴弾は破裂したのか
10式戦車の使用する対戦車榴弾は90式戦車も使用するJM12A1対戦車榴弾である。
この弾は戦車を主に攻撃する徹甲弾の補助に用いられる多目的弾である。
ドイツラインメタル社が開発したDM12A1HEAT-MP(多目的対戦車榴弾)を国内ライセンスしたものだ。
重さは約23㎏
弾頭には炸薬(爆薬)として2㎏のA型混合爆薬が入っている。
TNT爆破薬(1ポンド)換算で5本相当
信管はPIPD(point ignition base detonation)と呼ばれるもので弾頭点火弾底起爆方式になる。
スパイクノーズと呼ばれる弾頭の先端には着発センサーとしてピエゾ圧電素子が組み込まれており、先端に圧力が加わると点火電気を発生する。
先端以外の弾殻が衝突しても発火するように2重起爆の信管になっている。
また、電気信号で起爆するためアーミング(安全装置解除)した場合には静電気でも起爆する。
対戦車榴弾は他の榴弾などと同様に安全装置として機械的(物理的)に火薬経路を遮断しており、その解除には発射衝撃(発射による加速度)が必要となる。
一般的には発射による加速度でロックが外れ砲口を出ると空気抵抗による減速もしくは時限装置の作動で火薬経路が構成される。
これは、砲口をでてすぐに爆発しないような安全距離を取るためだ。
さらに、120mm対戦車榴弾に使用されるJM781A2弾底信管は90mmや105mm用の対戦車榴弾と異なる安全設計がなされている。
90mmや105mm対戦車榴弾は火薬経路が構成されれば後は電気信号待ちであり、不発弾となった場合には静電気等の電気信号でも起爆の危険がある。
120mm対戦車榴弾の弾底信管は発射加速により電気をコンデンサーに貯めてセンサーからの電気信号はコンデンサーの電気を開放するスイッチという二重構造であり、コンデンサーに起爆用電気が溜まっていなければ火薬経路が構成されていても爆発しない仕組みなのだ。
不発弾となった場合、一定時間が過ぎてコンデンサーが自己放電してしまえば安全な状態となる(はず)。
点火用のセンサーは非常に敏感であり、電気発生圧力は秒速900m前後で数グラムのものにぶつかると作動し、弾頭先端以外でも数十グラムのものが衝突すれば作動するという敏感なものだ。
このため、雨や雪などが降っている場合には過早破裂のため射撃できない場合がある。
計算すれば砲弾が衝突した場合、どの速度があれば点火可能信号が出るか分かる。
つまり、砲塔内で爆発するためには
① 信管の組み立てミスその他の要因で火薬経路が構成されていた(アーミング状態)
② コンデンサーに起爆に必要な電気が溜まっていた
③ 弾頭に発火可能な衝撃を与えた、もしくは静電気が発生した
上記がすべて揃わなければならないはずだ。
①は起きてはならないが無いとは言えない。
③は、私自身がやったことある。
問題は②だ。
自動装填の装填加速で十分な電気が溜まるのだろうか?
もしそうであれば信管自体の欠陥となる。
もっともドイツは「自動装填速度は想定外」と回答するのかもしれないが。
いずれにせよ詳細は部内の人にしか分からないのだろう。
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2025-12-31
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