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一流のスパイは現在の組織文化では得られない

ただ、仮に巨額の予算を投じて対外情報機関を新設しても、現在の日本のお役所の文化の中で十分に機能するかは不安が残ります。

日本の省庁は、大多数の人員のスキルを一定水準まで引き上げることは重視しますが、組織内で異能を許容しない傾向があります。いわば誰でもそれなりの戦力にする育成に重きを置いているのです。このような秩序重視の組織は、平時の官庁や多数の人員が必要な警察、軍隊組織には、合理的な考え方です。

ただ、世界の情報機関の考え方はこれと大きく異なります。スパイ活動は芸術と同様、才能がものをいう世界であるためです。MI6の元幹部は「敵地でのヒューミントの能力は生まれながらの資質によるものだ。組織としては一流になれるごく少数の才能を見いだしてサポートするのが最も重要になる」と語っています。

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他国の情報機関と互角に戦うためには、特別な職務評価や待遇、裁量を与えるシステムや、要員や海外の協力者を守るための法整備が不可欠です。

これは日本政府が敵国のサイバー攻撃を防げる有能なハッカーをなかなか採用できていないことにも通じる問題です。海外の日本大使館には、その国の情報機関への窓口を担う外務省や警察庁出身の担当官が派遣されています。しかし「大半は情報活動の素質から選抜されておらず、ほとんど相手にされていない」(元外務省幹部)のが実情です。

情報機関の運営では、情報を受け取る政治家の側にも意識改革が求められます。日本の行政機関は首相官邸に一つの見方に絞った報告や政策を上げる習性があります。

国内官庁ではこれで大きく問題になることは多くありません。内政の失敗の多くは国内でなんとかなるからです。ただ、情報機関は不透明な国際情勢を相手にしているだけに、様々な分析や予測が上がらなければトップが誤った判断をするリスクが大きくなります。

これは官僚に「結論だけをもってこい」と圧力をかける政治家に責任があります。外務省の元幹部は「過去のある首相は朝鮮半島情勢についてブリーフィングを受けた際、『要するにどうなるんだ?おれは忙しいんだ』と激怒した」と証言します。

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