高市首相が掲げる「国家情報局」は本当に実現可能か?日本政府が一流のスパイを育てられない「最大の原因」

高市早苗首相は2月20日の施政方針演説で、政府のインテリジェンス(情報の収集・分析)機能を強めていく路線を示しました。その一環として「国家情報局」や「対外情報機関」を設ける考えを衆院選の公約で掲げました。

今国会には国家情報局を設置する法案を成立させ、今夏に外国の「スパイ防止法」に関する有識者会議を設置する方針です。秋の臨時国会以降に関連法案を提出し、その後に海外での情報活動に当たる対外情報機関の発足を検討する方向です。

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ただ、与党内の論議では「スパイ」や「インテリジェンス」といった目を引く言葉が飛び交い、国外での情報収集での現実を踏まえた議論が追いついていないのは否めません。

本稿では、新刊『世界を解き明かす 地政学』(日経BP)から、情報活動を巡る現状を踏まえ、今後の課題を整理したいと思います。

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非合法の領域に踏み越えるのがスパイ活動

まず、スパイ活動とは何でしょうか。それは外国が秘密にしようとする重要な情報を非合法ともみられる手段も使って入手することを意味します。現在も日本の外交官は情報収集を続けていますが、その前提である合法の範囲内を大きく踏み越える活動であり、各国の対外情報機関はそれを担っています。

情報機関は世界に影響力を及ぼしたい大国だけでなく、地政学的に厳しい環境下にある国で特に発展する傾向があります。国を守るために、強力な情報機関が必要だと国民が納得しやすいためです。

人口約1000万のイスラエルが持つ特務機関モサドがその一例です。

1948年の建国当初から存亡の危機にあったイスラエルのリーダーは、生き抜くために周囲の敵に対して圧倒的な優位を保つ必要があると考えました。そのために情報工作は不可欠でした。

対外工作を担うモサドは多数の一流スパイを養成し、首相から多額の予算や特別な権限を与えられてきました。敵国の要人の暗殺や破壊行為といった特殊作戦も国民に支持されてきました。

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日本では戦後、強力な対外情報機関や敵国のスパイ活動を防ぐ体制ができませんでした。それは、超大国のアメリカに防衛面で頼れたために、国民が必要性を感じなかったことがあります。日本は防衛上、有利な島国の地形だったということもあります。

ただ、アメリカの国力は冷戦期からは落ちており、以前のように頼れなくなっています。安倍政権時に、日本が独自の情報収集機能を強化する方向で動いたのはこのためでした。2014年には政府内の情報を横断的にまとめる国家安全保障局を新設しました。今回の高市政権の情報機能強化の動きの背景にも、同様の危機意識があります。

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