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現在の日本と中国の問題を、ヨーロッパはどう見ているか(インタビューお裾分け)

noteが全く更新できないぐらいに忙しく、精神的にも追い詰められた時期を送っておりましたが、ようやく先日ちょっと楽になり、久しぶりに更新いたします。

今日、読売テレビ「ジグザグ」で、「ヨーロッパは日中の諸問題をどうみているのか」についてコメントさせていただき、OAでは私のコメントが、お話しした内容の1割弱ぐらい(笑)使っていただけたようですので、ちょっともったいなくなって補足しておきます(笑)。

Q1. ヨーロッパは現在の日中関係をどのように見ていますか?今回の日中間のトラブルに関心は持っていますか?

→非常に関心を持っています。高市政権はhawkish (タカ派)だという評価はそこそこヨーロッパでは広まっているように感じますが、ヨーロッパ諸国の高市政権に対する評価は今のところ低くありません。今の日本とヨーロッパとのあいだでなにか特別問題があるわけではないことも大きいのではないでしょうか。
一方中国は、①コロナ時の感染源情報の秘匿、②ヨーロッパに対する戦狼外交、③ロシアによるウクライナ侵略で中国が明らかにロシアに肩入れをしていること、などもあり、概してヨーロッパの中国に対する見方は厳しいようです。
このため、今回は「中国が日本に因縁をつけている」との見方がやや強いとみられます。
ただしヨーロッパの一部には、「存立危機事態」という概念を十分に理解しておらず、日本が中国に対して直接の武力攻撃をする可能性があるかのように理解している向きも少なくありません。

Q2. なぜヨーロッパ諸国は、「存立危機事態」という概念を十分に理解できないのですか?

→(1)まず、日本の「国連憲章で定められた集団的自衛権は保有するが、行使はできない」という長年の政府見解の建て付け自体が、国際社会にとっては理解が難しいものです。
(2)そして上記(1)は、2014年の閣議決定(安全保障法制関連法)で、「存立危機事態」(日本の存立が脅かされる事態)などに限定し、「必要最小限度」の範囲で「限定的に行使可能」へと修正されました。

・・・つまり、わかりにくい(1)が、わかりにくい(2)に修正されているのですから、さらにわかりにくくなってしまっているという側面はありそうです。このため丁寧な説明が必要なのです。これは日本が極東であるかどうかはさして関係ないように思われます。

Q3. ヨーロッパは日本と中国のどちらを、どのようなかたちで支持しているのですか?

→2010年代、中国との関係構築に極めて熱心だったヨーロッパは、日本と中国のあいだの諸問題を「どっちもどっち」ととらえ、ヨーロッパ自らは「中立」であるとする立場をとりがちでしたが、上記Q1の①②③のような事情で、現在ヨーロッパ諸国の中国に対する見方は厳しくなっています。このため、あくまでも現時点では、今回のような日中間の問題が発生したときには、中国の問題を指摘する声の方が大きいというのが率直な感想です。


Q4. 日本が国際社会(とくに欧米やいわゆる国際世論)を味方につけるには、どのような対応・メッセージが必要と考えられますか?

→1)事実関係はきちんと発信すべきであり、誤情報や偽情報は何度でも修正すべきです。事実と異なる発信を中国がしてきたときには、「相手にしない」という「大人の対応」をとるのではなく、きっちり反論するのが重要です。
2) 中国は近年、国連やその他の国際組織など、多国間外交の場を活用した外交攻勢を巧みに仕掛けています。中国の国連大使がグテーレス事務総長に二度にわたって書簡を送ったのもその一例です。日本の山崎和之国連大使はその都度、反論書簡をグテーレス氏に送付していますが、このような努力をコツコツ続けることが大事です。
3)一番大事なことですが、日本国内において著しい反中的な言説や、一般の中国人に対するイジメなどがはびこることを許さないという姿勢を保つことです。仮に日本国内で、中国人がいじめられたり、危害を加えられたりしたら、中国はそれを見逃さずに国際社会に訴えるでしょう。そうなれば、日本にとって著しく不利な状況が生まれます。「日本は中国に嫌がらせをする国である」というイメージが、国際社会に植え付けられるおそれのあるような事件を日本国内で起こしてしまうことは、絶対に避けなければなりません。

*このお答えをした際に、私が念頭に置いていたのは以下のツイートです。大事なことを的確に指摘してくださっています。


Q5. 中国の外交戦略を考えるうえで、現在ポイントとなっている事象
(ウクライナ戦争、対ロ関係、グローバルサウスとの関係など)があれば、
どのような点でしょうか?


→1)「中国なりの」正論の展開。
ロシアによるウクライナ侵略をとってみても
「戦争は一刻も早く終結させるべき」、
「西側諸国は冷戦志向から脱するべき」
「一方的な制裁はやめるべき」、
「米欧以外の価値観も認められるべき」
など、一見それ自体では反論が難しい言説を最大限に利用しつつ、自らは一方的な行動をとる
2)「一つの中国」原則の濫用・悪用
(たしかに国際社会は、この「一つの中国」という原則を尊重している国が多い。しかしそれは、中国が台湾に対して、やりたいことを無制限に認めるという意味ではない)
3)「第二次世界大戦の戦勝国」としての立場の利用
(先般の「旧敵国条項」を用いた日本に対する脅しなどはその典型)
4)国連などの多国間外交の場を活用した中国の立場の推進
5)新興諸国に対する援助を用いた経済・外交関係の強化と、国際社会での支持の取り付け
6)メディア(とくに環球時報英語版など)やSNS等を用いた宣伝戦の激化

Q6. 日中の応酬はいつ終わるとみておられますでしょうか。

→一時的に収束しても、これからまた話題を変えて続くでしょう。中国は常に高市政権の「しくじり」、「失言」、「中国に対する内政干渉」と見なしうるものを探していると考えるべきです。この話題が一時的に落ち着いても、またすぐになにかしらの問題が出るでしょう。

Q7. 4日に訪仏した習主席の「中国とフランスは責任を持って歴史の正しい側に立つべきだ」という発言に対し、マクロン大統領は「フランスは中国との関係を重視し、『一つの中国の原則』を堅持する」と発言しました。また12月8日に訪独した王毅外相は「ドイツが中国の正当な立場を理解・支持し、『台湾独立』を主張する言動に断固として反対することを期待する」と発言したのに対し、ワーデフール外相は「ドイツは『一つの中国の原則』を堅持しており、この立場は変わることはない」と発言しました。これは、中国外交が成功しているということなのでしょうか?

→マクロン発言も、ワーデフール発言も、ほぼ同一であることにお気づきかと思います。最近のヨーロッパ諸国(の多く)は、中国から何を言われても、何を要求されても、判で押したように「我が国は『一つの中国原則』を堅持します」と回答します。これは、「だからといって中国が台湾で何をしてもいいと言うことではないですよ」というメッセージも言外に含まれている場合も多いのですが、その言外のメッセージと「ひとつの中国原則の堅持」それ自体は、ひとまずは両立します。このため、中国に何を言われてもとりあえず「ひとつの中国原則の堅持」を明言しておけば、中国との関係がそこまでこじれることがないのを経験上理解している、ということでしょう。

なお、ひとくちにヨーロッパ諸国と言っても、台湾との関係を深めているチェコやリトアニアに対してはこの限りではありません。中国の批判はむしろ、チェコやリトアニアがこの原則に違反しているという点にありますので、念のため付け加えます。

・・・と、こんな感じのお答えをしていたのでした。

(見出し画像は、先週リトアニア人のお友達と食べたとってもおいしい鯛飯です。なんの脈絡もありません)

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