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AI検索サービスに関する声明

2026年4月20日

一般社団法人日本新聞協会

 日本新聞協会はこれまで、生成AIサービスが報道コンテンツを学習・利用する場合、報道機関の許諾を得るよう求めてきた。昨今急速に浸透しつつあるAI検索サービスは、検索拡張生成(RAG)という技術を用い、他人のコンテンツを無断利用してAIが回答を生成するケースも散見される。ユーザーに最新の情報を提示することが可能となる一方、権利者があずかり知らないうちにコンテンツを取得したり権利者による利用拒否の意思表示を無視したりする行為が広がっている。AIに参照されるニュースの価値は高まっているにもかかわらず、権利者の意思尊重と対価還元の動きは遅々としている。

 大量のコンテンツを瞬時に生み出すことができる生成AIの登場によって、報道コンテンツへのフリーライド(ただ乗り)や著作権侵害のリスクは飛躍的に高まった。AI検索サービスの拡大により事態は一層深刻化しており、正確で信頼できる情報を届ける報道機関の経営基盤を脅かしている。AI検索サービスでのコンテンツ利用についても権利者の許諾を得ることが原則であり、国において事態の深刻さを踏まえた制度整備を早急に進めるよう求める。

GoogleはAI検索の早期改善を

 GoogleのAI検索サービス(「AIによる概要〔AI Overview〕」「AI Mode」)については、権利者が利用拒否という選択肢を実質的に取り得ない状態にある。通常検索とAI検索でクローラーの制御が同一になっており、AI検索での利用を拒否すればGoogleの通常検索にも権利者のコンテンツが表示されないことになる。検索市場における支配的な地位を背景に報道機関にAI検索上でのコンテンツ提供を強要するもので、独占禁止法上の「優越的な地位の濫用」が疑われる。

 当協会はサービスが試験提供された約3年前から問題視し、Googleと協議を続けてきた。しかし、改善は見られず、Googleは情報開示にも応じなかった。公正取引委員会が昨年12月に開始すると発表したニュースコンテンツ配信分野のフォローアップ調査は、AI検索サービスに関するこうした課題も射程に入れており、極めて重要な動きだ。

 この問題を巡って英国の競争当局は、報道機関を含むパブリッシャーが「十分な選択肢を行使できていない」と判断し、コンテンツ利用をオプトアウトできる制御措置の導入や必要な情報開示などによる是正策を提案している。日本でも権利者に負荷のかからない制御措置の早期導入、コンテンツ利用に関する透明性の向上などが必要だ。世界中の報道機関が問題視している課題でもあり、まずは権利者が自らの意思でAI検索からオプトアウトできる仕組みを日本でも早期に導入するようGoogleに求める。

AI検索でコンテンツ保護が一層困難に

 コンテンツ利用にあたり、権利者のオプトアウトの尊重や透明性の向上は、コンテンツ保護の観点から他のAI事業者にも当然求められる。AI検索サービスはインターネット上のコンテンツを「知識データ」として参照しており、無断収集が構造的に生じやすい。データ収集を専門とする業者が存在しており、アプリケーション同士がデータを共有する仕組みであるAPIを通じて他の事業者からデータを入手する手法などもあるため、事業者自らクローリングしなくてもデータ取得が可能となっている。「robots.txt」の無視や、クローラーの名称(ユーザーエージェント)の非開示、クローラー偽装といった課題も指摘されており、権利者の対応だけでは限界がある。

 コンテンツ保護が一層困難になっている状況を踏まえ、これまで当協会が求めてきた制度整備を早期に進める必要がある。短期的には、生成AIの開発・提供・データ収集を行う事業者等に対するオプトアウト尊重を新たに法的義務とする著作権制度の改正や、「生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード」をより強力かつ早期に策定することが必要だ。さらに国内のAIの競争力を高めるためにも、影響力の大きい海外事業者に対してルール順守を徹底させることは重要な課題となる。

長期的な視野に立った制度整備を求める

 現在のインターネット空間では、いわゆるアテンションエコノミーのもとで刺激的な情報が拡散されやすくなっており、不正確な情報によって個人の判断、さらには選挙結果にまで影響することが強く懸念されている。選挙に関連した報道とデマが混在した誤情報が生成AIにより作成され、流通する問題も起きており、現に民主主義や選挙の公正性が脅かされている。報道機関は取材を重ね、社内のチェック体制を設けるなど、正確で信頼できる情報を恒常的に発信できるよう組織的に取り組んでいる。事実関係に誤りのある生成AIの回答が新聞社のクレジットとともに表示される例も多く、報道機関の最も重要な資産である信頼性を棄損している。報道機関が担う一次情報の取材や正確さの追求は生成AIが代替できるものではない。

 検索結果画面に表示された回答で情報を得たユーザーが、発信源のウェブサイトを訪問しない「ゼロクリックサーチ」の危機はすでに顕在化している。AIによるフリーライドによってコンテンツ再生産のサイクルが損なわれれば、報道機関の取材体制は縮小せざるを得なくなる。民主主義の維持・発展や個人の自律は、正確な情報がなければ成り立たない。国民が信頼できる情報に接触できる仕組みの確保は民主主義社会の在り方に直結する課題であり、国には社会の基盤が揺らいでいるという視点に立って、さらなる制度整備を進めるよう求める。

以  上

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