国立博物館に稼ぐ「ノルマ」 未達なら再編も 現場は戦々恐々
国立の博物館と美術館について、文化庁は今年度から5年間の中期目標に、自己収入の数値目標を初めて設定した。
2030年度までに、展示にかかる運営費のうち、65%以上を入館料などの自己収入でまかなうよう求める内容で、29年度の時点で40%を下回る館は再編の対象となる。
少子高齢化による税収減が見込まれる中、国の文化芸術の振興を担う中核拠点に、稼ぐ「ノルマ」が突きつけられた形だ。「達成できる館は限られている」。現場から困惑の声が噴出する一方、専門家の間でも評価が分かれている。
「博物館、美術館潰し」か
文化庁は、国立の博物館、美術館を運営する三つの独立行政法人(国立文化財機構、国立美術館、国立科学博物館)について5年ごとに中期目標を策定している。今年2月、26~30年度に取り組む目標を公表した。
数値目標は、博物館などの主要4事業「収集と保管」「教育普及」「調査研究」「展示」のうち、「展示」に関して設定。法人ごとの展示事業費のうち、入館料やグッズ販売などの自己収入でまかなう割合を30年度に65%以上とするよう求め、35年度までに100%を目指すと記載した。現状では3法人とも50%台半ばにとどまる。
最も注目されたのは、未達成の場合の厳しい措置だ。
国立科学博物館以外の館については、29年度に40%を下回るなど「社会的に求められている役割を十分に果たせていない」と判断された場合、再編対象となる。
再編について、文化庁は「閉館を想定しておらず、各館の役割分担などを見直す」と説明するが、SNSでは「博物館、美術館潰しだ」と指摘する投稿が少なくない。
将来的な入館者数の大幅増も打ち上げた。国立文化財機構が運営する5館については1200万人(24年度は約411万人)、国立美術館が運営する6館は1000万人(同約323万人)で、いずれも現状の約3倍に上る。国立科学博物館は400万人(同約241万人)で、約1・6倍に増やす必要がある。
収入や入館者数を増やすための取り組みとして、訪日外国人の入館料を国内居住者より割高にする「二重価格」の導入▽国宝や重要文化財などの展示期間の延長▽夜間開館の拡充――などを求めた。
自己収入100%は「行き過ぎ」
初めての「ノルマ」に、現場からは困惑の声が上がる。
国立館を運営する法人の関係者は「今でも一部の特別展は人があふれかえり、十分に鑑賞できない状況にある。入館者数や入館料(収入)を増やすため…
この記事は有料記事です。
残り786文字(全文1807文字)