原油調達不安のアジア各国へ1・6兆円支援 日本政府、エネルギー安保主導で中国に対抗
高市早苗首相は、中東情勢の悪化で原油供給への不安を抱えるアジア各国に対し、総額100億ドル(約1兆6千億円)の支援を表明した。サプライチェーン(供給網)の強靱(きょうじん)化などエネルギー安全保障の強化を主導し、日本の存在感を示す狙いがある。経済協力をてこにアジアで影響力を高める中国に対抗する狙いも透ける。 ■日本の備蓄は融通せず、金融で調達後押し 日本の備蓄石油を融通するわけではなく、日本の国内需給には影響しない。金融支援で各国の原油調達を後押しし、サプライチェーンの維持を図るとともに、備蓄体制の構築や重要鉱物の確保などでも協力する。 首相は15日、東南アジアなどとの脱炭素の連携枠組み「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」の首脳らを集めたオンライン会合を主催し、この支援を発表した。会合後には記者団に「石油を単に提供するのではなく、強靱なサプライチェーンを構築することでアジア全体が強く豊かになれる道を歩んでいく」と強調した。 会合にはアジアなどの15カ国、3機関が参加し、支援を歓迎した。会合当日は、上座部仏教を信仰する東南アジアの国々にとっては旧正月の真っ最中。外務省幹部は「日本で言えば大みそかに会合を呼び掛けたわけだが多くの国が集まってくれた。日本への期待の高さを感じる」と話す。 ■「自由で開かれたインド太平洋」具現化 首相は今回のアジア各国への支援を「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の具現化」だと説明した。高市政権は、安倍晋三元首相が提唱したFOIPの進化を外交方針に掲げる。経済安全保障協力の強化のほか、政府開発援助(ODA)や政府安全保障能力強化支援(OSA)の規模拡大による安保連携の拡大などが柱だ。支援にはODAやOSAを通じた安全なシーレーン(海上交通路)の構築が含まれ、日本の国益にも資する。 FOIPは、海洋進出を強める中国に対抗するための構想だ。政府高官は、エネルギー危機を契機に新たな協力枠組みを首相が主導して立ち上げたことで「アジアでの日本のイニシアチブを示すことができた」と語る。 首相は今月下旬からの大型連休中、会合に参加したベトナム、オーストラリア訪問を予定する。支援の具体化を協議し、関係強化につなげる考えだ。(小沢慶太)