そもそも藤田さんのその「かわいいって言って欲しい」という言動がかわいいんですよね。自分で自分のことがかわいいって分かっているのに、やっぱり誰かから褒めて欲しいっていう、自己肯定感を高めるための行為に好意が持てるというか。自分で自分のかわいさを知っている人がそのかわいさを振りかざして「自分ってかわいいでしょ」って言ってくるのって、強者が自分の強さを信じてその強さを謙遜することなく正々堂々真っ向からぶつかってくる感じがしてとても好きなんですよ。自分が強いと分かっているからこその圧倒的自信、強者ゆえの絶対的ライセンス。他の追随を許さない絶対的暴力。そんな力を振りかざしながら俺に「かわいい」と言って欲しいなんて迫られたらそんな力に屈するしかないわけなんですよ。でもそれは決して圧倒的な存在を前に屈した訳ではなくって、心の底から「あぁ、かわいいな」と思ってしまう程の説得力があるからなんですよね。これが生半可なかわいさでその力を振りかざしているのであれば、圧力に屈した「かわいい」しか出てこないんです。でも藤田さんの「かわいい」はそうじゃない。心の底から湧き出る愛の奔流。今すぐにでも抱きしめたくなるような胸の高鳴り。魂の抑えられないビート。恋。そうなんです、俺は藤田さんに恋をしているんです。例えば朝目が覚めて、木漏れ日の暖かな春の日。寝ぼけ眼を擦って今日も一日頑張るかと軽く伸びをすると、ぱたぱたとキッチンの向こうからかわいらしい足音が聞こえてくるんです。「プロデューサーっ、朝ごはんできてますよっ」そんな声と共に優しい味噌汁の香りがしてくるんです。のそりとベッドから這い出てその声の方向へ視線を向けると、お玉を持った藤田さんが口元を綻ばせながら嬉しそうに「一緒に食べましょっ」なんて言ってくれるんです。あぁ、幸せだな。そんなありふれた感情がとても嬉しくて、でもどこか儚さも感じて。この瞬間か永遠に続けばいいのになんて、月並みの言葉しか紡げないんです。この幸せが永遠であることを祈る俺の気持ちなんて知る由もない藤田さんは相も変わらず楽しそうに茶碗を机の上に並べてくれるんです。「手伝いますよ」なんて、まだ半分寝ぼけたままの俺が言うとより一層嬉しそうな表情を見せてくれて、それが本当に愛おしいんです。あぁ、この人を好きになって良かった。俺は藤田さんのこの笑顔を見るために生まれてきたんだ。無意識のうちに俺は藤田さんのことを抱きしめてしまうんです。ほんのりと香るみずみずしくも甘い香り。照れるように揺れる三つ編み。「急にどーしたんですか、プロデューサー」なんて少し恥ずかしそうに呟く藤田さんを愛でるように俺は両腕の力を少し強めます。細く華奢な身体、それでいてしっかりと芯を持っている強い身体。「苦しくないですか」そんなふうに問いかけると、藤田さんは何も言わずぎゅっと俺の身体を抱き返してくれるんです。決して顔が見られないように、少しだけ下を向いて。「ずるいですよ」ぼそっと呟く藤田さんの表情は伺えませんが、どこか嬉しそうで、俺はその姿にまたえも言われぬ多幸感を感じるんです。
藤田さん、結婚しましょう。