夜鷺借景
踏み出す時の緊張はいつも甘い
神神化身 二次創作 夜鷺
タイトルを借りています。
https://note.com/torinaxxicca/n/n8f770eb6df40
比鷺成人済。
3
部屋の中には、シャンプーの香りがふわりと漂っている。
心臓が、まるで小鳥みたいに胸の内で羽をばたつかせている。
一歩踏み出すたびに、頬が熱くなるのが分かった。緊張しているけれど、それはちっとも苦しいものではない。むしろ、温かいお湯に浸かった時のような、溶けてしまいそうな幸福感が全身を包んでいた。
比鷺は、ゆっくりと萬燈が待つその場所に足を運ぶ。
「お風呂、ありがとう」
声をかけると、萬燈はいつもの穏やかで優しい目元を、さらにくしゃりと細めた。その表情だけで、比鷺の足元がふらついてしまいそうになる。
駆け寄りたい気持ちをぐっと抑え、また一歩。
自分の方から歩み寄るという行為は、今の比鷺には前戯のような感覚だった。
あと三歩、あと二歩。
「こっちへおいで」
手を伸ばせば届く距離。最後の一歩を踏み出す時、比鷺は緊張で息を止めた。彼に抱きしめられる直前の、甘美な助走。
萬燈の腕が、比鷺をそっと引き寄せる。
包み込まれた場所は、外の世界とは別世界のようで、ただひたすらに温かく、安らぎに満ちていた。
「緊張しているのか?」
「うん。……だって、先生に触れられるのは、いつだって特別だから」
「そう言われると、俺も緊張してしまうな」
二人の距離がゼロになる瞬間。比鷺は確信した。この緊張こそが、二人の関係を甘くさせるための、唯一にして絶対のスパイスなのだと。
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タイトルを借りています。
https://note.com/torinaxxicca/n/n8f770eb6df40
書く人のためのビンゴ|2026年4月
⑩ いずれかのタイトルのお話を書く
・踏み出す時の緊張はいつも甘い
・ユートピアインマイベッド
・青さに目眩む
・スイートペタル
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